企業秘密
ピンポーン。ピンポーン
テレビの横、窓際のベッドでゴロゴロしながら呼び鈴を聞いていた。
朝だ。恒例になったモーニングコール、朝七時に毎日起こされる。琴枝さんからの指示らしい、その他にもいくつか指示はあるらしいが聞くのが怖くて聞いていない。
俺の部屋につけられたカメラに関しては、俺が許可した時だけ使用する事で落ち着いた。カメラの撤去を琴枝さんに頼んでみたが防犯が何とかとテキトーにあしらわれたからだ。
鳴り止まない呼び鈴に、部屋の入り口まで行って階下に叫んだ。
「起きたから! 近所迷惑! ベルは二回までな!」
「おはようございます、幸二郎さん。叫ばずとも聞こえてますよ」
そう背後、部屋のなかから玄一郎のあの声が聞こえてきた。
「こら、まだ許可してないぞ」
言いながら振り返ればパソコン画面にあの顔文字がニコニコしていた。
「いえいえ、カメラは使用しておりませんよ。スマホ、パソコン等のマイク機能を少々お借りしています」
画面の顔文字はドヤ顔だ。
「お前の詳しいスペックを把握してみたいわ」
呆れながらパソコンの前に座る。
「いやー、そのあたりは企業秘密となっております!」
大事な企業秘密を未成年に預けるなよ! と心のなかで叫んだ。