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氷天の魔導師  作者: 蓮
1章 幼少期
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3 修行開始

テンポよく幼少期を書きたい......。

 さらにひと月が経ち、俺は歩けるようになった。


 歩けるって素晴らしい......!

 俺は嬉しくて今まで以上にあちこち歩き回った。はしゃぎすぎて裸足で庭に出た時はテレサにめちゃくちゃ怒られた。


 俺が見るに、この屋敷には最低限のメイドしか居ないようだ。まあまあ忙しいだろうし二人の仕事を増やすのも申し訳ない。となるとどこで修行をしようか......。

 最初は庭でやろうと考えていた。けれどあんだけ怒られたし、あまり行く気にはなれない。


 頭を悩ませているとある考えが思いつく。

 待てよ。修行ならここでも十分できるな。ふふふふ、毎日父さんの書斎に通っていたから移動するのが当たり前になっていたな。しかし魔法の修行ならどこでもいいじゃないか。派手な魔法をぶっ放す訳でもないし、今日から修行場所はここで決まりだ。



 そうと決まればやる事は決まっている。

 まずは魔力操作からだ。


 前にも言った通り、魔法を使うには大気中の魔素を体内に取り込み魔力に変換させ、その魔力を使う事で始めて魔法として発動するのだ。魔力を使うにはコントロールすることがとても大切だ。コントロールが出来なければ暴発する恐れがあるしとても危険である。

 つまり魔力操作が出来なければ、例え魔法が発動したとしても制御ができず周りに被害を及ぼすだけでなく最悪死ぬことだってある。魔法とは便利だが危険なものでもある。なので魔法を初めて習うものは皆、必ず魔力操作から練習するのだそうだ。


 俺が真っ先に魔法の練習をしなかった理由は二つある。

 まず一つ目は、俺は知識を得てから行動に移すタイプだからだ。闇雲に何かをするより効率がいいし何より安全性が増すからな。

 そして二つ目は、先月あたりから体内に流れる魔力を少しずつ感じるようになってきたから。魔法書にはそのことが書かれていた。けどその頃はまだ何も感じていなかったから”今”じゃないと判断した。



 そして数日前、遂に準備は整った。


 本は端から端まで読み尽くし俺の脳内には膨大な知識が詰め込まれている。そして魔力も僅かだが感じるようになった。バッチリだ。

 これでやっと行動に移せるという訳である。長いようであっという間だった気もする。

 っと、感慨に浸るのはまだ早いぞ。俺の未来がかかっている、これからが勝負なんだ。


 まずは体内に流れる魔力を一箇所に集中させてみよう。いわゆる身体強化ってやつだ。

 例えば剣を振る威力を上げたいなら腕に魔力を集める、早く走りたいなら両足に魔力を集めるといった具合だ。これは戦闘職関係なく、色んな場面で便利だから必須とも言えるだろう。


 しかし、何故か俺の読んだ本の中には身体強化と言う言葉が一度も出てこなかった。当たり前すぎて乗っていなかっただけなのか?

 まあいいや。よし右腕に魔力を集めてみよう。

 俺は目を閉じ魔力に意識を集中させる。スーッと魔力が移動した気がした。なんだか不思議な感じだ。けれど嫌ではないし、右手には確かに力を感じる。


 試しに左手や両足にも移動させてみた。うん、できそうだ。

 自分の思うままに魔力をあちこちに動かす。なかなか楽しい。思いつきで全身を魔力で覆ってみた。おっ、できたっぽい。魔力操作って結構簡単なんだな。

 これだけできれば十分だろう。


 次は魔法を使ってみるとしよう。ちょっと緊張するがワクワクする気持ちの方が大きい。

 魔法の発動条件は魔力以外にもう一つ大事なものがある。


 それが詠唱だ。

 詠唱とは簡単に言うと、言霊に自分のイメージを加え力に変える。イメージだけでは足りない部分を言葉によって補う役割があるのだ。

 難しい言葉を使っているように聞こえるが実はそうじゃない。分かりやすく言ってしまえば魔法の性質や形、どれくらいの威力で用途はこうで・・・というような内容なのだ。

 だが詠唱にはまだまだ解明されていない部分もたくさんあり、謎に包まれているのだとか。

 ......ファンタジーっぽくて良いな。


 長ったらしい詠唱を少しでも短くしようとすると難しい言葉になってしまうのは仕方のない事なのだ。それでも上位の魔法になればなるほど恐ろしく長いのだが。

 詠唱中はどうしても隙ができてしまうという大きな問題を解決したのが、簡略詠唱だ。

 数十年前にやっと開発されたらしい。


 俺は思った。それなりのイメージ力があれば無詠唱できちゃうのでは?と。


 なので試してみようと思う。

 俺はまだ1歳だから魔力量もたいしてないだろうから、王道の水属性初級魔法の水球ウォーターボールで実験だ。火属性を使って家が燃えたりしたら嫌だしな。


 手の平を上に向け念じる。

 (ウォーターボール!)


 瞬間、大人の拳程の水球が現れる。

 成功だ!

 と感激する間もなく、水球ウォーターボールはバシャッと音を立てて弾け俺の下半身を濡らした。




 「ごめんなしゃい。がまんできなくちぇ......」

 俺は目の前に立つテレサに謝る。顔は怖くて見れないから視線は床だが。

 とりあえずお漏らしをしてしまったという設定にしたが、見た目は1歳でも精神年齢は17歳だ。普通に恥ずかしい。やっぱ怒るかな、見事にビショビショだし。


 いつまでたっても反応がないのでびくびくしながらテレサの顔を見上げる。

 「あの......。ちぇれさ、おこってりゅ?」


 うっ、舌ったらずなのが歯がゆい。仕方ないだろ!まだはっきりと喋れないんだよ!

 それにしても、何も言ってくれないしなんか顔真っ赤だし怒りのあまり肩が震えている。これは相当ヤバイのでは?


 「い、いいえ!大丈夫ですよ。お気になさらないで下さい。」

 ハッとしたように、テレサは屈んで俺の頭を撫でた。


流石に1歳児に手を上げるような人じゃないと分かっていても、条件反射で身を縮こませた......のだが、まさか撫でられるとは予想外で、今の俺はポカーンとした間抜けな顔をしているだろう。


テレサは俺を手際よく着替えさせると、サッと立ち上がり汚れた服を持って部屋を出ていった。その時チラッと見えた顔は、何かを堪えるように険しいものだった。

俺は悟った。雰囲気で相手に罪悪感を与える、テレサは一番怒らせたらダメなタイプだ。俺はもう絶対にテレサを怒らせまいと誓ったのだった。まだ死にたくないからな。


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