11 トウニエダ
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「えっ。修行、ですか。」
俺は帰宅早々にステータスのことを聞かれ、隠してもどうせその内バレるので正直に伝えた。職業がなぜかハテナで分からないと言った時はあからさまに落胆された。そりゃそうだよな。他のステータスもMP以外平均値よりはるかに低いのでもうお通夜みたいな空気になった。
うちの子は天才だと確信し家庭教師までつけたのにこの有様。かける言葉もないですホント。
幸いなことに絶縁とかはされなかった。実を言うとあまりにも酷いステータスなのでもしかしたら、と帰り道はこのことで頭がいっぱいだったのだ。
父さん母さんそしてレイラは、落胆はしたものの怒ることはせず、俺のこれからの事を考えているようだ。俺を見放さずにいてくれてありがとう!優しい両親でよかった。
と、思っていたのだが俺の両親はちょっとズレていたのかもしれない。
難しい顔をして考え込んでいた父さんと視線があったかと思うと
「トウニエダで修行してこい。強くなるまで帰ってくることは許さない。」
と言ってのけたのだ。どこの武闘派だよ!父さんって実は脳筋なんじゃなかろうか。
トウニエダとはこの村の東にある謎の多い森のことで主にF〜Eランクの魔物が住む森だ。それは森の浅いところ、だが。何度も国の騎士団が調査のために森に入ったが、ある一定の場所より奥に行こうとすると謎の結界により行く手を阻まれるんだとか。研究者の間では未知の魔物がいるのではと言われているらしい。その為調査しようにも行き詰まって放置されているという訳だ。って、放置するなよ!いいのかそんなんで!せめて進入禁止とかにすべきじゃないのか!
更にその先にはグリズ山がある。この山に近づいた者は帰ってくることは不可能とまで言われている危険な山だ。まあ好き好んでそんな危険な場所に近づくやつなんて居ないんだけど。そもそも森すら抜けることが出来ないからな。
そんな超危険な場所に可愛い息子を行かせる親がいるのか?答えはNOだ。うちの親以外はな!母さんは反対してくれると思っていたのに大賛成だし、レイラは仕えている身だからなのか反論する素振りなんてなし。
父さん曰く、才能がなくとも自分の力で掴み取れ!それが男だ!らしい。さすが脳筋だ。俺の今までの尊敬を返して欲しい。今日1日で俺の中の父さんへの評価は地に落ちたよ。
あれよあれよという間に半ば家を追い出される形でトウニエダに放り出された哀れな俺。持ち物は数日分の食料と父さんとの稽古で使っていた剣のみ。
「はあ、何でこんなことになったのか。」
気が重いのなんの。これからどうしようかなぁ。強くなるまでってどれくらいなんだろうか。1ヶ月や2ヶ月くらいじゃ無理だよな......。果てしなく遠い道のりな気がする。
それにいくら父さんと剣の稽古をしてきて魔法もちょっと使えるからっていきなり一人で実践とか大丈夫かな。幸いな事にFランクの魔物なら倒した事がある。そう、クラリッサを助けた時のあのゴブリンだ。あれくらいなら俺でも余裕で倒せる。Eランクも......、まあその時はその時だ。
色々考えていても仕方ないので森を散策してみる事にする。
いた。
緑の皮膚のあいつが。けどあれはゴブリンじゃない。ゴブリンは大きくても1mくらいだ。しかし今俺の眼の前にいる魔物は明らかにもっとでかい。2mはあるだろう巨体にゴブリンと同じように緑色の皮膚を持っている。手には棍棒が握られており汚い腰布を巻いている。
俺は自分の身長の倍くらいのその巨体を見上げる。因みに俺は100cmちょっとだ。成長期はこれからだからな!
俺はスキル”鑑定”を発動した。
【名前】オーク
【種族】魔物
【Lv】20
HP:300
MP:10
STR:160
MAT:30
DEF:130
MDF:100
AGI:70
LUK:5
レベル20か......。まあ当たり前だが俺よりかなり強そうだ。それに以前戦ったゴブリンよりも強いだろう。
装備とかスキルは表示されていない。レベルが低いから鑑定で見れる範囲も制限されているのかも。それとも魔物相手だとステータスだけ表示されるのだろうか。んー、今の段階じゃまだ分からないな。
とりあえずこいつを倒さなければ俺の身の危険は回避できない。逃げたとしても何他の魔物に遭遇するだろうし、腹を決めなくては。
それにしても酷い容姿だな。豚の二足歩行を自分の目で見る日が来るとは思ってなかったぜ......。こいつには火魔法でいいかな。
「”火焔”!」
詠唱破棄のスキルのおかげで魔法名だけ言えば魔法は発動する。ってか元々詠唱しないでもできてたっけ。まあいいや。俺の火魔法”火焔”はオークの体をどんどん燃やしあっという間に消し炭になった。レベル的に差があったのでもう少し強いかと思ったけどそうでもなかったなあ。所詮は雑魚だな。
ところでこのオークの死体はどうしたらいいんだろうか。解体とかできないぞ?売れるんだろうけどこんなデカイの持って歩けないしなあ。
その時、俺の脳内に無機質な声が響いた。
『スキル【アイテムボックス】を習得しました。』
まじか。思わぬラッキーだな。
アイテムボックスを開くよう念じてみると、思った通りだった。これはかなり便利なスキルを手に入れることができた。この世界ではアイテムボックスの価値はどうなんだろうか?小説によってはめちゃくちゃレアっていう設定のものもあるし、まだ分からないのであまり人前で使うのは良くないだろう。
俺はオークの死体と棍棒をアイテムボックスに放り込む。ラッキーなことに腰にぶら下がっていた袋の中には僅かだがお金も入っていた。新しいスキルも手に入ったしついでに鑑定もしておこう。
オーク×1
棍棒×1
10銅貨
【アイテムボックス】空間魔法の一種。容量は使用者の魔力量に依存する。異空間につながっており劣化しない。
おお、劣化も防げるのは良いな。さすがアイテムボックス!俺の他のステータスはしょぼいけど魔力だけは多いからそこそこの容量ってことになる。
ついでだからこの世界の通貨の説明もしておこうかな。
銅貨=10
銀貨=1,000
金貨=10,000
大金貨=100,000
白金貨=1,000,000
銅貨、銀貨あたりは平民の間でよく使われている通貨だ。たまに金貨もあるらしい。大金貨は貴族や商人とかが大きな取引で使うくらい、白金貨にもめちゃくちゃ大金なので上級貴族とか国家間の取引でしかお目にかかれないそうだ。
さて探索の続きだ。もう少し奥に行ってみようかな?
俺は自分で思っていたよりも好奇心旺盛なのかもしれない。こんな怪しい森なのに不思議と恐怖心はなくむしろ楽しささえ感じている。魔物を殺すことにもあまり抵抗はなかったし、この世界に順応しているってことなんだろう。
少し歩くと、いたいた。
ってなんかめっちゃ多いぞ......。軽く10体くらいはいる。これは流石に無理だ。時には逃げることも必要だ。命大事に!ってね。
俺はそっと振り返り逃げようとした。なぜだろう俺の視界には緑色の何かが広がっている。はて?森はどこへ......。
「グガアアアアアアアア!」
ファッ!?なんだこれ。叫び声!?
緑色の何かはオークの皮膚だったのだ。俺がオークの集団に気を取られている間に背後にオークが迫っていたのか。今の叫び声でオークの集団は俺に気付いた。やばいぞレオルス。どうするレオルス。
もはやこの数の差では逃げ切ることは難しい。となればやっぱ倒すしかないよな。
半ばやけくそだが仕方ない。俺は腰に下げている鞘から剣を抜き背後にいるオークを切りつける。クソッ、でかすぎて頭に届かないじゃないか。しゃがめ豚野郎!
足を切りつけるとオークは膝をついた。すぐに首を狙う。よし当たりだ。オークの首は吹っ飛ばされ近くの木にぶつかった。
「「「「「グガアアアアアアアアアア!!!!!」」」」」
前を向くと勢いよくこちらに向かってくるオークの集団。
こいつらにはこれをお見舞いしてやろう。
”火球!”
およそ100個の火の球がオークに向かって飛んでいく。火球は初級魔法だけど魔力操作を完璧にマスターしている俺にかかれば一つ一つの威力はもちろん最低限の魔力で大量の火の球を作り出せるのだ。今みたいに多数の敵にはかなり有効だし魔力もそれほど使わない。低燃費だ。
見事に燃え尽きたオークの死体を先ほど同じように回収する。
そろそろ火が落ちてきたしご飯にしよう。俺は持ってきた携帯食料を取り出す。黒パンに干し肉を挟んだだけの質素なものだけど保存のきくものといえばこれくらいしかないのだ。でもこれも三日分しかないのでいずれは自分で料理しなきゃだよなあ。
もちろん前世では料理本にはまっていた時期もあったのでレシピはかなり覚えている。まあ作ったことは一度もないんだけどね。オークの肉って食べれるのかな......。見た目的にあまり美味しくなさそうなんだけど。できれば果物とかあればいいな。明日探してみるか。
横になるとどっと疲れが襲ってきた。慣れない戦闘続きで思っていたよりも疲れていたのかな。かなり予想外の展開になってしまったけどこれはこれでいいかもしれない。
まずは魔物を狩りまくって強くならなければ。あと食料の確保、やることはたくさんだ。不思議と嫌ではなくワクワクしてくる。明日も頑張ろう。最強の冒険者になるために。