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氷天の魔導師  作者: 蓮
1章 幼少期
10/15

8 家庭教師

不定期更新ですみません...。

最低1週間に1話投稿になるかと思います。

 俺の影の努力(?)がバレてちょっとした騒ぎになってから暫く経った頃。ずっと家を空けていた父さんが帰ってきた。

 しかし、隣には知らない女の人を連れてだが。



 えーっと、これはもしかしてヤバイのでは?

 愛人とか家庭崩壊への道じゃないか!母さんはどうなるんだよ!母子家庭になっちゃうのか!?幾ら何でもそれは酷い。俺はこれから両親の愛情を目一杯受けてすくすく育つ予定だっていうのに。その弊害になるような事は許さないぞ。離婚だけは俺が絶対阻止してやる。


 玄関には父さんを出迎えた母さん、そして隣に女の人を連れ何故かアホ面の父さん。

 異様な空気が漂っている気がする。母さんなんかこめかみに青筋を立たせていて今にも切れそうだ。頼むから殺し合いの修羅場とかはやめて頂きたい。精神的に耐えられるか分からないのだ。まあ父さんが女性に手をあげる非道な人間じゃないと信じているけどさ。


 よく分からないが普通じゃない空気を切って口を開いたのは父さんだった。


 「ただいまフィル。」


 「おかえりなさいテレンス。で、貴方は家庭教師を探しに行ったんじゃなかったの?随分長い間帰ってこないと思ったら......どういう事か説明してくれるかしら?」


 母さん目が笑ってないよ。笑顔だけど背後に黒いオーラが見えるよ。今にも父さんの隣にいる女の人に掴みかかりそうな雰囲気だ。


 「ん?この人だよ。家庭教師を引き受けてくれるレイラだ。王都で探していたところ知り合いに会ってな。紹介してもらったんだ。」


 「レイラと申します。昔はSランク冒険者をしていましたが、現在は魔法研究士として王都のポルトリーに勤めています。」


 そう言ってペコリとお辞儀をし胸にある銀色のバッヂを見せた。

 この人が俺の家庭教師になるのか?よくよく見るとかなり若そうだけど大丈夫なのか......。


 「まあそうだったのね。私ったら勘違いしてたわ。ごめんなさい。危うくテレンスを.....。いえ、こちらこそ宜しくねレイラ。私のことは呼び捨てで構わないし敬語も要らないわ。」


 「分かりましたフィル。しかし敬語は誰に対してもこうなので気にしないで下さい。」


 「そう。わかったわ。」


 名前はレイラと言うらしいその女の人は、深い青の瞳にネイビーブルーの胸あたりまであるストレートヘア、頭には尖った帽子を被っている。青を基調としたローブを羽織っており胸には何かの紋章だろうか、綺麗なバッヂが付いている。身長が低く顔も大人というより少女という感じだ。

 歳は14とかか?マジで不安だぞ。できればもっとこう凄い魔導師!みたいな人に教えて欲しかったんだけど。


 「あの、私が家庭教師をする息子さんは?」


 「この子よ。名前はレオルス。1歳になったわ。」


 母さんの紹介と共に少女の視線が下へ下り俺と目があった。驚愕したようにみるみる目が見開かれる。なんだ?面白い顔だな。


 「えっと、フィル。確か貴方は元Sランク冒険者ですよね?しかも魔導師だった。」


 「ええ、そうよ?」


 「それなら分かっているはずです。魔導師になるには最低でも12歳で教会に通い基本の知識を身につけなければなりません。更に成人の儀を終え、初めて適正が分かり将来を決めます。しかしこの子は......まだ1歳ですって?馬鹿げています。」


 「言いたい事は分かるわ。けれど魔法の修行は何歳からでもしていいはずよ。それに親の目なしでもこの子は天才だわ。」


 フィルの言葉にレイラは呆れたように小さな溜め息をついた。そりゃそうだろう。自分の息子を天才といい1歳から家庭教師をつけ魔法を学ばせようとしているのだから。親馬鹿だと思うのが普通の反応だ。


 「ですが、1歳は幾ら何でも早すぎます。才能があったとしても早すぎる修行は己の身を滅ぼすだけです。」


 「うーん、......そうね。まずはレオルスの魔法を見てもらえないかしら?それが一番思うの。」


 少し考えてから母さんが提案したのは俺の魔法を自分の目で見ることだった。確かに手っ取り早い方法だと思う。口で言っても親のひいき目と思われて終わるのが目に見えてるしな......。

 でもちょっと大げさに言い過ぎじゃないだろうか。俺の魔法なんて独学だし適当だしそんな大したもんじゃないのに。


 「それじゃあ庭に移動しましょうか。」


 「......分かりました。」


 レイラは早々に自分が何と言おうとこの人は我が息子の才能を信じ、その魔法を見せようとしてくる事を悟り小さなため息を吐いた。半ば諦めたような何とも言えない(いや内心は面倒な事になったとでも思っているだろう)表情で母さんの後についていく。

 その横にはあの恐ろしい出迎えをした母さんが忘れられないのか、借りてきた猫のようにおとなしい父さんがいた。一言も喋ってないし存在感が薄いぞ父さん。


 皆が庭に移動しいよいよ俺が魔法をぶっ放す時が来た。

 え?ぶっ放すなって?大丈夫大丈夫、所詮俺の魔法だ。危害はないだろう。なんたって一流の魔導師が二人もいるしな。


 「さあレオルス、あなたのとっておきを見せて頂戴。」


 何故かキラキラした期待のこもった目で俺を見る母さん。後ろにいる父さんからも痛いほど視線を感じる。これが無言のプレッシャーか、やめてほしいなあ。

 うーん、とっておきか......。最近使えるようになった氷魔法にするか?でも失敗したら嫌だしここはいつもの水魔法にしておこう。流石にこれだけ持ち上げられて失敗するとかダサすぎるし、母さんと父さんのメンツもあるからな。

 と言う訳で俺は水魔法を使うことにした。実は最近水魔法の上級も制御できるようになったので問題ないだろう。


 声に出さず唱える、”水拘アクア・コンファイン”!

 すると巨大な水の塊が現れる。この魔法ま相手を水の中に閉じ困る拘束魔法だが、対象がいなくても発動は可能だ。なので今は巨大なただの水の塊である。

 上級魔法になると魔法の力が強くなるしきちんと制御できないとかなり危険だ。その為今まではこれの半分くらいの大きさで試してたんだけど......うん、上手くいったようだ。

 と、俺が自分の魔法を満足げな顔で眺めていると


 「......信じられません。」


 「ね?言ったでしょう。うちの子は天才だって。親のひいき目でも何でもないのよ。それにしても水属性の上級魔法なんていつ練習したのかしら......。」


 「何たって俺の愛するフィルの血を受け継いでるからな。当たり前だ!」


 父さんそんなキャラだっけ?母さんも嬉しそうにしちゃってるしとりあえず仲直りしたのか?俺としては良かったけど。

 二人がイチャイチャしてる隣でレイラさんは青ざめた顔で、まさか、そんな、有り得ないとかブツブツ独り言を言っている。大丈夫かな。


 少ししてレイラさんが復活したようだ。今度はすっごい笑顔だ。本当に大丈夫か。


 「レオスルくん!貴方は素晴らしいです。はっきり言って私が今まで見てきた魔導師の中でもトップクラスです。天才なんて言葉じゃ片付かないほどに。」


 めちゃくちゃ褒められてる?よ、よかった。上級魔法なのにしょぼすぎるとか怒られなくて。


 「しかし私がレオルス君に教えることはありませんね。彼は既にこれだけの魔法を扱えるのですから。見たところ制御もできているようですし......。」


 待ってくれ。俺にはまだまだ知らないことがあるし教えてほしいこともたくさんある。俺の知らない魔法とか王都のこととか魔物とか冒険者のなり方とか!とにかく知りたいことはたくさんあるんだ。


 「ぼくにはせんせえがひつようなんです!」


 なんとしてでも家庭教師になって欲しくて気づいたら叫んでた。頼むレイラさん。俺に知識を!今の俺は必死すぎて目が血走り手を握りしめている......あれおかしいな、凄い危ない人みたいだ。

 衝撃を受けたように動かないレイラさん。顔真っ赤だし、やっぱ病気なんじゃないかこの人。


 「れれれれレオルス君!?分かりました。分かりましたので少し離れてください。」


 どうやら近すぎたようだ。ごめんなさい。


 「コホン。......この仕事引き受けましょう。」


 わーい!家庭教師ゲットだぜ!これで俺の最強への道が少しだけ明るくなっただろう。


 「うちの子って天然タラシなのかしら。一体誰に似たのかしらね?」


 「それは俺のせいじゃないだろ!」


 てんねんたらしって何だ。みたらし団子っぽいな。考えたら食べたくなってきた......。実は俺の好物でよく病院の看護師さんに内緒で買ってきてもらってた。この世界にもあるだろうか、みたらし団子。

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