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盤上戦騎あんぷろ!  作者: ひるま
5/19

5.俺をピンにしやがったのが一番許せねぇ!

似て、まるで非なるもの

新天地しんてんち

:その人が新しく切り開いてゆく地。

 ラーメン屋やパチンコ店の名前に使われることがある。


後書きへ続く


 時は数分ほど(さかのぼ)って。


 チーム戦国(センゴク)のヒデヨシこと山田・疾駆(やまだ・らいだ)は生命の危機に(ひん)していた。

 彼の駆る黒側の盤上戦騎(ディザスター)骸骨亡者(スケルトン)のキャサリンが敵騎ベルタの隠し腕に(つか)まり、今まさに握りつぶされようとしている。


 騎体の損傷度合いを示すダメージゲージが、両腕と胴体の計3箇所だけで20パーセントを超えてさらに上昇中。危険を知らせるアラートがコクピット内に赤色照明の点滅と共に鳴り響く。


「あの肩の部分が怪しいと警戒していたんだが」

 ベルタの隠し腕を振りほどこうともがくも、隙間無くガッチリと捕えられているので身動きが取れない。

 さらに盤上戦騎の構造は、手首の部分は人間と同じく360度回転できず、せいぜい270度くらいにしか左右に回せない。ロボットプラモデルのように“エ”の字のパーツが溝に収まった構造ではないのだ。

 敵騎ベルタの手首から肘部分にかけて“ハ”の字状に板状のシリンダーが伸びている。

どちらかが伸びてどちらかが縮むことによって手首を左右に回転させる仕組みだと分かり易い。それにしてもベルタは何故か内部機構が丸見えの箇所が多々見られる。


 手首を回転させて馬上槍(ランス)をぶつけようにも回転幅が狭いために、遠心力も得られず、ただ隠し腕を小突くだけ。


 キャサリンの両肩上部に付いている“手”の形をした補助装甲では、紐を解くような器用な作業はできない。せいぜい回転させて飛んでくるミサイルなどを叩き落とすことくらいだ。


「きゃあぁぁぁー!」

 キャサリンが堪えきれずに悲鳴を上げた。


「な、何とかする。キャサリン!すまねぇ。もう少し堪えてくれ」

 言ったものの何の手立ても思い浮かばない。ダメージゲージはなおも上昇中。30パーセントを超えた。アンデスィデ強制退場となる60パーセント超にはまだまだ遠いが、コクピット部分に当たる胴体がダメージを被っている。もはや危険域に達そうとしていた。


 そんな中、レーダーに反応あり。


 識別信号は味方を示している。僚騎である飢屍(ゾンビ)のソネがようやく戦場に到着したのだ。


 だが、味方の到着による安堵の感情など一切湧くことなく、むしろソネを駆る主人(マスター)のミツナリに対して疑念が湧き上がる。


 それは、黒側のプレイヤーであり彼らの(キング)として君臨する亜世界の少年ライク・スティール・ドラコーンから『おおまかな騎体特性』を聞かされていたからだ。


 “スケルトンのキャサリン”は、すべてに於いて平均的で無個性に設定された騎体であり、ステータスの割り振りには一切手を加えていない。強いて言うならば、“分解”なる特殊能力を有することくらいだと。


 一方の“ゾンビのソネ”は全騎体中最も小型で6.7メートルの頭頂高しかなく、また生贄(サクリファイス)の権利を行使して弾数は一発だけではあるものの強大な破壊力を有する火器を所有している。その他、初期値を少しずつ下げる代わりに初期速力と最大速力に大きく数値を割り振っているとの事。“噛み砕く”特殊能力など、この際どうでも良く、何故キャサリンよりも脚の速い騎体でありながら今になってようやく戦場に駆け付けたのか?それが不可解でならなかった。



 騎体全身に衝撃が走った。


 キャサリンを捕えていたベルタの隠し腕をソネが突撃を食らわせて粉砕したのだ。


「生きてますか?先輩(センパイ)

 ベルタに対峙したままミツナリが訊ねてきた。「どういうつもりだ?」


「何です?」一旦ソネをキャサリンの元まで後退させた。

 長い睫毛(まつげ)に覆われたソネの目は、ミツナリ同様に思惑が掴めない。


「テメェ、今頃ノコノコやって来やがって、どういうつもりだって訊いているんだよッ!?」

 骸骨フェイスのキャサリンがソネを睨み付ける。


 しばしの沈黙を置いてミツナリが口を開いた。

「その台詞、そっくりそのまま先輩にお返ししますよ」


「あぁ!?」怪訝な声。


「何故、能力も解らない相手の前に姿を晒しているんです?空防機という“噛ませ”をぶつけて相手の能力を探れば良いものを、自ら空防機を追い払った挙句ベルタにとっ捕まるなんてヘマをやらかしておいて。折角助けてあげたんだから、礼の1つくらい言ってくれても良いじゃありませんか」


 事実助けられてはいるが、それでも感情はなおも沸き立つ。

 キャサリンの馬上槍(ランス)を握る手に力が込められた。(ポール)を握り潰さんとするほどの力が。


「テメェ・・。空防の連中を“噛ませ”と言いやがったな。俺も、その“噛ませ犬”の頭数に入れていたんだろ!俺をダシに使いやがって」


「そんなぁ。先輩をダシに使うなんて。言い掛かりですよぉ。まっ、結果的に“そうなっちゃった”事実は認めちゃいますがね。おかげでベルタのデータも取れましたし、ヤツの唯一の火器も潰す事が出来て結果オーライではありませんかね。この状況」

 悪びれもすることなくミツナリは堂々と言い切って見せた。それは手柄を取った者が正義だと言わんばかりに。


 負けられない!ミツナリにも、ベルタのマスターにも。

 ベルタに目線を向ける。


「!?」

 何と、ベルタが両腕に付けていたサバイバルナイフを手にこちらに構えて見せているではないか!


「アイツ、もうヤケクソになってますね。あれで向かってくる気なんでしょうか?」

 ミツナリは余裕を見せている。そんな彼を目の当たりにしてヒデヨシの闘志に火が付いた。

(コイツにだけは絶対(ゼッテェ)負けられねぇ!)



 ベルタの同調を確認した高砂・飛遊午(たかさご・ひゅうご)は、ツメと呼ばれるサバイバルナイフを構えて静かに「参る」と告げ―。


「なあ、ベルタはん」

 これからという時にルーティがベルタに声を掛けてきた。


「ウチ、一日に一回だけやけど、口から火の玉吐けるんです。このチカラ、今使えませんやろか?」

 突然の申し出にヒューゴは言葉を失った。

(コイツ・・何ちゅう恐ろしい能力を持っているんだ?)


「ルーティ、残念ながらそれは君の固有の身体的能力であって今の私の体では再現できない。魔力を用いた能力ならば再現できたのだが」


「そうですか・・」落胆して大人しく引き下がった。


 彼女のそんな姿を見ていると気分が沈む・・・。

 いや、ここは是非とも上げていきたい。


「ベルタさん、俺からも質問が」


「聞こう」


「この戦い、勝利条件は相手を完全破壊する事だけなのですか?相手を殺さずに倒す方法はありませんか?」

 思いもしなかったヒューゴの問いに、ルーティは「ハッ」と顔を上げて。

「相手を殺さんで勝つ方法やて?」



「では、私から勝利条件を説明致します」

 ココミがコホンッと咳払いひとつして説明を始めた。


「テイクスを仕掛けた騎体が、仕掛けた相手の騎体から500km以上距離を開くと“撤退”と見なされてアンデスィデは終了。チェスの駒は動かなかった事になります。棋譜では動いたと表記されますが、赤色で元の場所が記入されます」


「あのね、ココミちゃん。私たち駒を取られた側なんだけど」

 クレハの言葉に頷くとココミは続けた。


「ええ、解っています。つまりは、攻撃を受けた私たち白側には撤退は許されていません。これがルールなのです。で―。」



「だけど、ベルタのマスターの質問は“相手を殺さずに決着をつけられるか?”だよね?」

 “ですが”と次に繋げる前にライクが話に割って入ってきた。


「あなた!私たちの通信に聞き耳を立てていたのね!?」

 クレハが問い詰めるも、ライクはしれっとしたまま。


「距離が近いし、君たちの声が大き過ぎてね。ついつい耳に入っちゃたのさ」

 向き直ると、ライクがココミに代わってルール説明を始めた。


「盤上戦騎同士の戦いは必ずしも相手を完膚無きほどに叩き潰す必要は無い!つまりは相手に総ダメージ60%以上を与えてやればいいのさ。戦闘不能状態に陥らせること。ただし!それは容易な事ではないよ~」

 高揚を隠せないルール説明に、ソネのマスター、ミツナリも乗ってきた。


「まっ、そういう事だ。やれるものならやってみ―!?」

 “やってみな”と言い切って見せる前に彼の眼は大きく見開かれた!



 ベルタが両手のサバイバルナイフを前に突き出して突っ込んで来ているではないか!

 両手のサバイバルナイフを水平に構えて切っ先は15度ほど下方に向けて、しかも騎体の姿勢はうつ伏せに寝た状態。つまり水泳で泳ぐ姿勢だ。


 キャサリン、ソネ両騎が横に並んで馬上槍(ランス)に内蔵されたマシンガンを放つ。

 2騎とも両手で構えての射撃なのに、ベルタには掠りもしない。



「ヒューゴ、うっ。この姿勢、ちょっとキツいんやけど」

 うつ伏せの状態・・・今、重力に引っ張られているルーティの体を支えているのは、お腹に回されたヒューゴの左腕のみ。


 通常、戦闘機の形状は速力向上と燃料消費の節約を兼ねて空気抵抗を減らすよう求められている。また、レーダー波に感知されにくいように反射率を抑えるため、正面から見た面積は可能な限り小さく抑えられている。


 つまり“投影面積”は必然的に小さくなっているのだ。


 投影面積とは“前面投影面積”とも呼ばれ、これは3次元の物体に対して正面から光を当てた場合に、後方に設置された壁にできる2次元の『影』を意味する。が、おおまかに“物体が視認される大きさ”と解釈して差し支えない。


 戦車戦では、いかに投影面積を小さく抑えて敵車両を撃破するかに重きが置かれている。

 “稜線射撃”なる戦法は、山の稜線から戦車砲の砲先だけを出して稜下の敵戦車を狙い撃ちする。敵は反撃しようにも砲しか見えていない相手に着弾させる事は難しい。


 また、戦車の装甲は材質性能だけではなく、傾斜や曲面を取り入れることによって被弾率を下げ耐弾性も上げている。


「さっきから不自然だったんだよな。何でみんなして、突っ立った姿勢のままで空飛んでんだろ?って。あんな事をしていたら良い的になるだけじゃねぇか」

 告げるも、当のルーティはそれどころではない。内臓がよじれそう。


 今のベルタは投影面積を著しく下げて、さらにサバイバルナイフに傾斜を持たせることによって、万が一被弾しても最低1発くらいは弾き返せるように心掛けている


 さらに、機体を左右にローリングさせて回避運動。

 射線軸が定まらずに、黒側2騎の射撃は無駄に弾をばら撒くだけ。


 その間、ベルタのコクピット内はミキサーに入れられた果物のよう。ただしブレードによって切り刻まれる心配は全く無い。が、ココミの魔道書からは絶え間なくルーティの悲鳴が聞こえてくる。


 ヒューゴはベルタを文字通り、キャサリンとソネの間に割って入らせた。


 とても幸運だった。

 勝利条件を問うた時に、敵の大将であるライクが話に加わった事で敵騎体のマスターたちが戦いの手を止めてくれたのは助かった。

 わずか数分の1秒の時間であったが、距離の短縮と投影面積を小さく抑える姿勢への変更を行えた。おかげで1発も被弾せずに密接距離まで接近できたのだ。


 とても短く、長い距離だった。さあ、反撃だ!


 と、ソネの頭部の、まるで自転車レース用のヘルメットが前にズレて両眼を覆った。


「アカン!ベルタはん、こっちもバイザー下して!」

 上に向かってルーティは叫ぶと、ヒューゴへと向いて。「ヒューゴ!死ぬ思うくらいまで息を止めときや!でないと本当マジで死ぬから!」


 ベルタのバイザーも下された。視界はスリット越しになったので良く解る。

 すると、ヒューゴの口元に×印の付いたマスクが現れた。立体映像(ホログラフィック)のようだ。

(何だ?これは)


 するとキャサリンもバイザーを下してランスによる突きを仕掛けてきた。ソネはランスを振り下ろしている。


 ソネの攻撃は左手のツメ(サバイバルナイフ)で受け止めて右手のツメでソネの腕、胴から脇腹にかけて撫でるように刃を滑らせて行く。火花を散らせて浅いながらも傷跡を残していることから確実にダメージを与えている。


 キャサリンの突きをかわすと体を反転。今度はキャサリンを両のツメで、またもや刃を滑らせてダメージを与えてゆく。


 突きを終えたキャサリンは柄を両手で握ってそのまま横へとランスを振り抜いた。が、突き進みながらランスを下から振り上げてきたソネと互いにランスをぶつけ合いそうなハプニングに見舞われた。

 その間にもベルタはツメで双方の騎体に傷を付けてゆく。大きなダメージは与えていないが一方的に攻撃をHITさせた。


 武器の“取り回し”の違いがこの戦闘を大きく左右している。キャサリン、ソネが使っている馬上槍は、本来は馬に跨って突撃(チャージ)を仕掛けるもの。その重量や大きさから振り回したり打ち付けたりするのは難しく、ある程度敵との距離を必要とする。

 一方ベルタのサバイバルナイフは密接距離で真価を発揮する。距離を置かれると不利になるが、絶えずダメージを与えることによって敵との距離を繋いでいた。


 黒側の両騎が未だ密接距離にあるにも関わらずに、同時に突きを仕掛けてきた。

 ベルタはツメをランスの切っ先に当てることで突きの軌道を逸らせて、ソネのランスはキャサリンのヘルムの側頭部を、火花を散らせて掠めてゆく。キャサリンのバイザーの可動部が壊された。

 

 一方のキャサリンのランスも、ソネの右腕の袖部分のシースルー生地を大きく引き裂いた。ソネのバイザーが開いた。


「むはぁー」

 ヒューゴは限界を迎えて大きく息を吐いた。と、ホログラフィックの気泡が口から上方へと昇ってゆく。まるで水の中にいたかのように。

 同時にベルタのバイザーも開いた。


 キャサリンがソネの左肩を掴んで顔面を近づけていた。


「え?えぇーッ!?」

 クレハは驚きの声を上げた。と、顔は本とココミを行ったり来たり。


「ど、どうなってるの?今の。ベルタが敵に近づいたと思ったら、キャサリンがソネに詰め寄ってるみたいよ。それに、いつの間にか敵の騎体にいっぱい傷が付いてるじゃん」

 とても理解できない状況だった。確か全騎がバイザーを下したのはハッキリと見た。が、その先1分間ほどは、残像に残像が重なって何が起こっているのかサッパリ解らなかった。


「クロックアップを発動させたようですね」


「クロックアップ?・・とな?」


「はい。盤上戦騎の能力のひとつで、バイザーを下すことによって発動させます。盤上戦騎の体感時間を10倍にする、早い話が10倍速で動けるということです。ただし反応速度であって移動や射撃武器の弾速は10倍にはなりませんけどね」とニッコリ。


「ほぇー、スゴいね。だけどさっきから聞いていると、10分の1とか10倍速とか、とにかく10の数字で事象に干渉するのが好きだよね?あなた達」

 言われている本人は何を言われているのかサッパリ解らないようで、ただただニッコリと微笑んでいるだけ。


「ですが、途中で息継ぎをすると魔法は解けてしまいますし、魔力も大変消費しますので多用できないのが頭の痛いところです」

 魔力の大量消費は良いとして、ロボットに乗っていて息を止めなきゃならないなんて随分と不便なものだと感じた。



「ミツナリ!テメェー、危うくキャサリンの頭を飛ばすところだったぞ!」

 怒りの矛先はソネのマスターに向けられていた。


「先輩こそ。大事なお袖が台無しじゃないですかぁ」

 言いつつソネがランスを放り投げた。

 ソネの右肘辺りから緑色に光る魔法陣が現れてグルグル回転しながら手の方向へと進んでゆく。


 すると大きな算盤の玉の形をしたモノが銃口の前についた大型銃が手に握られていた。

 武器召喚をしたのだ。


「へっ」小さく笑うとミツナリは大型銃を天に向けて発射。算盤の玉のような物体が上空へと飛んでゆく。と、ベルタに背を向けてダッシュ。どこまで行こうとするのか?振り返りもせずに、さらに加速した。


「さっき500km離れたら何とか言ってたな・・。アイツがテイクスした方なのかな?」

 撤退したのだろうか?と、ベルタの顔を上へと向ける。


 そんなベルタを見向きもせずに、キャサリンが上方へと発射された玉を追って飛翔していった。

 そして何やら玉に向けて発砲している模様。


 異様な光景に胸騒ぎを覚えたヒューゴはベルタをキャサリンへと向かわせた。


 ふと、ルーティはヘッドアップディスプレイに目をやった。

(おかしいなぁ?魔力残量が一向に回復せえへん。もう半分切っとるで・・)

 とりあえずメールでココミに現状を報告した。



「メールです」着信音が鳴り、ココミはスマホを取り出して確認。

 差出人はルーティ。件名は『魔力が減る一方』


 メールを開くと。

『ココミ、さっきから魔力の回復が遅過ぎる(><)』


 ココミはハッと口元に手をやり。

(やっぱり本が示したのはクレハさんの方だったんだ・・)

 不意に「どうしよう・・」声を漏らしてしまった。


「どうしたの?ココミちゃん。誰からのメール?」

 クレハが顔を覗き込んで。


「あっ、ああ。お米屋さんからの御用聞きメールです」


「後にしろよ!そんなモン!」

 案の定、大目玉を食らってしまった。まさかの事態に備えての自身の引き出しの少なさを痛感する。これではクレハは呆れてしまっただろうな・・。

 それは兎も角、ルーティにはどう説明したものか。ウソを並べ立てるか、事実を告げるべきか。


 散々考えた末に。


 クレハに横目で睨まれる中、手慣れた手つきでメールを打ってゆく。そして送信。



「メールだよ」着信音が鳴った瞬間、素早くルーティは返信メールを開いた。

『Re:どうやらヒューゴさんはハズレでアタリはクレハさんだったようです。「残り(こう)霊力」を纏っていたために勘違いしちゃいました。ごめんなさいデス。

 追伸:クレハさんが激オコなのでメールはこれにて。かしこ』

 “ごめんなさいデス”の後ろにはウィンクをしているウサギのキャラシールが貼られているわ、クレハの顔色をうかがって以降のメールは禁止だわ、とにかく込み上げる怒りは抑えて。


「残り香!?何を言うとんねん!?」声は裏返っていた。


「残り香がどうしたって?」ヒューゴが訊ねた。


(しもた!ここでコイツに「アンタ、ハズレやったわ。ゴメンしてね」なんて言えるかい!)

「ココミからのメールや。お昼に食べたラーメンの残り香が服に染みついて困ったなー言うてきよったんねん」


「ラーメンの強い匂いは普通『残り香』とは言わんだろ。こんな時に何を言ってきてるんだ?あのお姫様は。気楽なものだな」

 呆れられるは承知。何としてもヒューゴに悟られてはならない。真実は伏せておかねば。


 ベルタがキャサリンの後ろに付いた。

 しかし、キャサリンはベルタを気に留めることなく、ひたすら上昇を続ける玉に向けて銃撃を繰り返している。もはや眼中に無い様子。

 不意にキャサリンの目がベルタに向けられた。


「ベルタのマスター。今は攻撃してくるんじゃねぇぞ!あの玉はここで撃ち落とさねぇと琵琶湖の対岸もタダじゃ済まねぇぜ」


「!?そんな恐ろしい破壊力なのか?」


「ああ。だからミツナリの野郎はトンズラこきやがったのさ。お前も今からじゃもう助からねぇから、俺の邪魔だけはするな。いいな?」

 話しながらも銃撃の手は休めない。でも掠りもしない。


「わかった。だが、撃って大爆発とかしないのか?」


「盤上戦騎の火器は、破壊しても汚染や誘爆の心配はありません」

 先ほど聞いた悲鳴の主だ。喋れば落ち着いた澄んだ声をしている。

 心底ヒデヨシが羨ましい。叫びたいくらいだ。こちらは人間嫌いの気難しい中年オヤジだというのに。話し掛けるにも気を使ってしょうがない。


 キャサリンが続ける。

「ソネの放ったグレネード弾は恐らく時限式で、花火が球状に爆発することから、ある程度落下してから爆発するのではないでしょうか?」

 その見解はほぼ正解だと思えた。

 ソネはグレネード弾を射出してから移動を始めている。それは爆発に巻き込まれないためだろう。真上に撃ったのだから上昇中に爆発させたのではベルタを巻き込むことはできない。逆に地上付近だと爆発の影響範囲をみすみす地上部分に食われる結果となってしまう。これはムダだ。


 先ほどベルタが滞空していた高度は2000メートル付近。爆発範囲がどのくらいに及ぶのか見当もつかないが、確実に巻き込むつもりならば、きっと元の高度に±500メートル付近だと思われる。

 しかしソネの騎影はまだレーダーレンジに納まっている。これはどういう事なのか?


 グレネード弾が上昇を終えて落下を始めた。現在の高度8000メートル。

 もう、いつ爆発してもおかしくはない。が、ソネは何故今の距離からさらに離れようとしない?


 追撃を加えていたキャサリンが弾切れを起こしてしまった。ならばと。


 馬上槍で突きを試みるも、焦りからか、ただ落下しているだけのグレネード弾を突き刺すことができない。だけど諦めずにリトライ。でも、まるで掠りもしない。


 そんな中、横一閃が走る。


 ベルタが右手のツメを横一文字に走らせて、グレネード弾を切り裂いた。キャサリンの言った通り誘爆は無く、小さく爆発しただけ。

「しっかりしてくれよ。ヒデヨシ殿」「お、おぅ。手間取らせちまったな」


 そんなやり取りの中。


 キンッ!ベルタは背後から振り下ろされた曲刀(タルワール)の一撃を、顔を向けることなく左手のツメで受け止めた。


「!?コイツ・・後ろに目でも付いているのか??」

 ミツナリは見事なまでのノールックガードを披露したヒューゴに驚愕した。



「レーダーでは把握していたんだがな・・。助かったぜ。ルーティ」


「まっ、ウチはアレや。やる事が無かったからレーダーと周囲に気を配ることができただけや」

 さっきのお返しにと言わんばかりに告げるとニィと笑い・・二人して「イェーイ」ハイタッチ。


「時限爆弾がブラフなのはお見通しだぜ。爆弾に注意を逸らせたつもりだろうが、時限式の爆弾を使うなら、相手の脚を潰してからでないと確実性が損なわれる。なぁ、もうちょっと頭ひねって戦えよ」

 ベルタがソネを睨み付ける。


 怯んだソネの顔面に、横からキャサリンの右ストレートが叩き込まれた!


 落下を始めるソネの騎体に、さらに追い討ちをかけてキャサリンが立て続けに顔面に向けてパンチを叩き込む。

 落下するよりも早く、何度も何度も。


 遂にソネの騎体はホテイアオイが群生する琵琶湖湖面に叩きつけられた。


「テメェは琵琶湖の底で鱈腹(たらふく)水でも飲んでおけ!」

 どこの誰かが捨てたホテイアオイの群生は、ソネを優しく包み込むベッドにはならなかった。ソネの体は水泡を浮き上がらせるものの、深く湖底へと沈んでいった。



「いくら何でも、チトやり過ぎなんじゃ・・」

 まさかの仲間割れに、思わずヒューゴは声を挟んでしまった。


「アレが爆発していたら、俺たちの日常は木端微塵に吹き飛んでいたんだぜ。俺たちだけじゃない。みんなの日常が消えて無くなるところだったんだ」


 何かカッコイイ事言っている・・・。

 全員が同じ感想を抱いた。


「あの野郎・・俺をピンにしやがったのが一番許せねぇ!」


「ピン?」

 ここから耳にしたら、漫才師が相方に逃げられて否応なしにピン芸人にさせられたように聞こえてしまう。

 怒りに打ち震えるヒデヨシにヒューゴが訊ねた。


「ある駒を攻撃して、その背後にある重要な駒が攻撃に遭っちまうから、その駒が動けなくなる状態のことだよ。つまり、さっきお前がグレネード弾を追っていた俺を攻撃していたら、お前は爆発でお陀仏だったって事だ。俺が気づかずにお前と戦い続けていたら、その逆もあったかもな」


「足止め?捨て駒?人質かな?うーん・・どれもピンと来ないな」

 うまく言ったつもりは毛頭ないし、誰も彼らのやり取りを気に留めなかった。


「解り辛かったかな。ついついチェス用語を使って表現しようとしたモンでな」


「ほほぅ。チェスをおやりですか?」

 回りくどい言い回しはさて置いて。


「ま、まぁな。これでも結構腕を上げているんだぜ。ノブナガの野郎からは1つも駒を取れねえ―」 照れ臭そうに話している途中に通信がブチン!と切られた。

 ライクがアークマスターの権限を行使して通信を遮断したのだ。


 と、白側の全員が、(ノブナガもいるんだぁ)思っても見ない敵の情報GETに思わずニンマリ。

 知名度からして敵のボス!最強の女王(クィーン)かはたまた大駒(ルーク)辺りのマスターと思われる。



「彼には後で指でもツメてもらいましょうか?」

 口の軽い部下の処遇についてお(うかが)いを立てているようだが、穏やかでない言葉が丸聞えになっているのは勘弁して欲しい。想像しただけでも背筋が凍りつく。


 クレハは腕時計に目をやり時間を確認した。


 PM3:35。内容の濃い15分が過ぎていた。

「うーん」部活への遅れもあり、この状況、ただ唸るしかない。



 キャサリンが両大腿部側面にあるポケットから握力計のようなものを取り出した。

 先は三角柱を横に寝かせたような形状をしている。

 メリケンサックの大型版のようで、三角形の打撃点はさぞ絶大な破壊力を誇るだろう。


「槍を捨てたか。助かったぜ。ああいう長モノは苦手なんだ」

 苦手相手にあれほど善戦するヒューゴに、ルーティは感嘆するばかり。


 キャサリンが大きく後退して距離を開いた。


 メリケンサックを両手に身振り手振りで何かを伝えようとしているが、通信がシャットアウトされた今、何を言っているのやら。逃げ口上を立てていない事だけは確か。


「あんなに距離を開けて・・。助走でも付けて殴りかかってくるつもりか?」

 見たての通り、キャサリンがこちらに向かってダッシュ!まだまだ遠い距離から大きく右腕を振り被って―。


「うわぁ・・テレフォンパンチやないけ。アレ」

 耳より後ろから拳を打ち出す、まるで電話をかけているような容姿から呼ばれるバレバレの攻撃・・・だと思ったのに。


 打ち出した拳が、肘から炎と煙を勢いよく噴射して腕を撃ち出したではないか!

 肘から先が火を吹いて飛んでくる。

 多少フラついた後、3枚の逆V字翼が展開して飛行は安定。真っ直ぐこちらに向かってくる。あれはもはや格闘武器ではない。明らかに射撃武器だ!

 攻撃魔法(アタック・マジック)ロケットナックルを発動させた。


 咄嗟に両のツメを前で交差させて防御態勢。重ね合わせた鍔部分でキャサリンの放ったロケットナックルを受けた。が、一瞬にして両ツメとも粉砕!

 体を仰け反らせて避けようとしたものの、『ガンッ!!』強烈な衝撃と共に胸を掠めて後ろへと飛び去っていった。


 上体を起こす。『!!』今度は左拳が飛んできた!

 首を傾けて直撃は回避。(ヘルム)から下りている髪を巻き上げて飛び去ってゆく。


「危ねぇー!ルーティ、大丈夫か?」

 衝撃により一瞬宙を舞ったルーティに声を掛けた。

 重力加速を10分の1に抑えている盤上戦騎でなければ失神しているところだ。


「ウチはどうもないで」

 体勢を戻しながら答えてくれた事に取り敢えずは安堵。が、しかし!

 何て事だろう・・ルーティのアホ毛が揺らめいている!?

(どこからか空気が漏れているな・・)

 これは黙っておくのが得策。表示されているダメージは微々たるものだし、例え気付かれたところでコイツを言い(くる)めるのは容易い。


 放たれた腕がキャサリンへと戻って再びドッキング。手首と肩をを回して確認をしている模様。


 こちらも両腰からキバ(脇差し)を抜刀。切っ先をキャサリンへ―??何コレ!?

「中華包丁?いや、違う!刀が折り畳まれている」


「長いままだとサブアームに触れて邪魔になるだけですからね。思いっきりブンッと振って下さい」

 ココミに言われた通りに両のキバを振り下ろすと、折り畳まれていた刀が展開された。(これは二度と鞘に収まらないな。しかしコイツにはマトモな刀は無いのか?)

 継ぎ目も回転軸も、すっかり消え失せている。どこからどう見ても普通の脇差し。


「ヒューゴ。先ほどから君は“踏み込んだ”攻撃をしていないが、相手を傷つける事を恐れているのか?」ベルタが問い掛けてきた。


「いや、物理的に無理があります。足場もなく宙に浮いている状態で力一杯に斬り付けたら、当たった瞬間に弾き返されてしまいますよ。当たる瞬間に推進力を上げればいけるかもしれませんが。地上に降りたらとも考えたのですが、騎体の形状がどう見ても“接地圧”が集中し過ぎているから脚が地面に突き刺さるか自重でペシャンコになるか、いずれにしても止めたほうが賢明かと」


「なるほど。君が恐れをなしていないので安心した。ならば、君の不安はすでに解消されている」

 ここまでビックリの連続だったから、今更もう何も驚かない。けど、「解消?」


推進器(プロパルジョン)から吹き出ている光の粒の上にキバを置いてみろ」

 言われるままキバを緑色に光る粒の上に置いてみる・・・ッ!?浮いている!


「これは浮遊素ふゆうそと呼ばれる魔導粒子で、盤上戦騎は高熱を噴射して飛行しているのではなく、この粒子を噴出させて騎体を移動させているだけなのだ。粒子の勢いが増せば速度も上がるし、粒子を大量に散布させれば“足場”を作ることも可能だ」


「そっか。では、この粒子で足場を作ってから打ち込めば地上で剣を振るうように剣撃を行うことができるんですね」


「その通り。接地圧の方も心配ない。理屈は知らないが、すでに実証済みだ」

 これまでの戦いで証明されている訳だ。ならば安心。


 だが、まずはあの厄介なロケットパンチもどきを何とかしないと。

 両のキバを前へと突き出して切っ先だけを交差させる。先ほどとは異なる構えだ。


 その姿にヒデヨシはさらなる闘志を燃やした。

「何かする気だな。燃える展開だぜ。だったら、こっちも取って置きを披露しないとな!」

 両腕を前へと突き出して両手に握るパワーナックル(メリケンサック)同士を合体!

「これで破壊力は2倍!」

 急上昇を行って高度を上げる&距離を取った。

「今度は俺様が上をもらった!威力も倍になるぜ!」

 すると寝た姿勢を取ってドリルのように回転し始めた。


 対するベルタはキバを交差させたまま左腰辺りまで下ろして下段の構えに入った。


 キャサリンがスクリュードライバーを行いながらベルタへと向かってきた。


「はぁ?アレで攻撃力を増したつもりなの?」

 ヒデヨシからの通信を絶たれた状態にあるクレハたちには彼の意図がまるで掴めない。

 まあ言動からして馬鹿っぽい彼のする事だから、何かしらのトンデモ理論に(のっと)っての行動と思われる。


「そしていつもの3倍の回転を加えれば、2倍×2倍×3倍の12倍パワーのロケットナックルだーッ!」

 ロケットナックル(ダブル)を発射した。だが彼の雄叫びは誰の耳にも届かない。


 迎え撃つベルタは。

 足元から照り返しがくるほどに大量の浮遊素を散布。


「さあ、括目(かつもく)せよ!」

 高揚を隠すことなくクレハが皆に伝えた。


 右脚を一歩踏み込む!衝撃で砕け舞い上がった浮遊素で作られた足場が、まるで粉々に割れたガラスのよう。それぞれが光を放つ。

 交差させたままのキバで猛烈な回転で襲い掛かってくるロケットナックルWに剣撃を叩き込む―。

 当たった瞬間!新たな噴射口を備え付けられたかのように、反転して元来た方向へと向かって間もなく跡形も残さずロケットナックルWは粉砕された。


「い、今のは斬撃ではない・・・」

 表情の薄かったウォーフィールドが大きく目を見開いた。


「見たか!これが俺の―」

「二天一流剣技、二天撃(にてんげき)!!」

 技を披露したヒューゴを差し置いて、クレハが先に皆に技名を言い放ってしまった。

 が、コクピットから聞えてくるのはルーティのヒューゴを罵る声。そして平手打ち。


「お前ーッ、何勝手に攻撃魔法(アタックマジック)使っとんねん!状況考えや!ベルタはんの魔力残量、もうカツカツやないけ!」

 ベルタの魔法残量は残り10%ほど。


「落ち着いて、ルーティ。彼は魔法カードを使っていません。今の攻撃は彼個人が持っている攻撃魔法なのです」


「な、何やて?」

 カードホルダーを確認してみる。カードは全枚数揃ったまま。使われた痕跡はない。そもそも魔法カードの使い方を彼に教えていなかったことに気付いた。


「そやった。ハハハ・・ゴメンな」

 必殺技を使ってコクピット内で平手打ちとは、どんな仕打ち?何も言葉が出ない。


 二天撃・・・それはヒューゴが独自に編み出した必殺剣技。理屈はわからないが、2振りの剣を同時に当てても発動せずに、数百分の1秒の誤差を生じさせてHITさせた時のみに発動する爆発的な破壊力を誇る技であった。

 なお、公式試合でも何ら(とが)められることなく使用している。打たれた選手が吹き飛ばされる尋常ではない剣に、他校がインチキだと抗議しても、それを証明できない限りは正当な剣の技なのである。



 キャサリンの頭の上と両の腕に、蒼く光る魔法陣が現れてグルグルと回転し始めた。頭部と無くなってしまった指先方向へとそれぞれ移動してゆく。移動が終わった。

 可動部が壊されたバイザーが、失われた両の腕が元に戻っているではないか。

 効果魔法(エフェクト・マジック)損傷回復(リペア)発動させて騎体のダメージを回復させたのだ。


「マジか!?」

 驚愕するしかないヒューゴに「何も心配はいらない」初めて聞く女性の声。


 驚きのあまりヒューゴは声の聞こえた先・・上方へと向いた。

「驚かないで欲しい。私だ。ベルタだ」


「ベルタ?何で女性の声をしているんだ?」


「魔力の残量が残り少ないので充填モードに移行したのだ。消費量は本来の10分の1に抑えているが、それに比例して出力も低くなっているので心して欲しい」


 いわゆる省エネモードという訳か。女性の声は嬉しいものの、正体がオッサンだと思うと今一つテンションは上がらない。落胆以上に肩が凝ってくる。


「心配無いとはどういう事ですか?」

 投げやりな口調にもなってくる。もう残念過ぎてならない。


「敵は騎体のダメージを全回復する効果魔法(エフェクト・マジック)カードを使ったのだ。効果魔法とは、魔力を使わずに使える魔法で駒の強さによって枚数が異なる。ポーンは1枚、ナイトなら3枚という具合に」

 マテリアルアドバンテージ算出時の駒の強さがそのまま効果魔法カードの枚数という訳だ。だとしたら女王は9枚保有していることになる。


 そして、その回復とやらは、あくまでも騎体そのものだけに及んだようだ。失ったパワーナックルやランスは補充されていない。


 敵は丸腰・・とはいかないみたい。今度はロングソードを召喚していた。

 柄を両手で握り構えて見せる。と。


「こらこら。お前は素人か?それでは俺は斬れんぞ」

 ヒューゴは剣の握り違いを指摘した。。

 キャサリンは剣を握ってはいるが、鍔が横向きになっている。つまり剣そのものが横を向いてしまって斬る方向に向いていなかったのだ。


「こうだ。こう!」キバをゆっくりと振り下ろして“斬れる”剣の軌道を実践して見せた。



「何をしとんねん、ヒューゴ。敵に剣を教えてどないする?」


「あのな。こんなグダグダな戦い知らんわ。勝っても敵がアレでは自慢にもならん」

 もはやヤケクソ気味。ルーティに説明しながらも、形になっていないヒデヨシに再度キバを振って見せて指導を入れる。


 キャサリンの剣の持ち方は未だサマにはなっていないが、取り敢えずは見られる様にはなった。


「やっとかい。じゃあ、さっさとキメるわ」告げるなり突進。


 キャサリンの振りを弾くと怒涛の剣撃を繰り出した。もうキャサリンは防戦一方。

 2騎の盤上戦騎が激しく剣を交える中、足元の浮遊素が明るさを増してくる。

 野球のバット振りで斬りかかるロングソードなど受け流して、さらに頭をカチ割ろうと長剣を上段へと構えた瞬間!ベルタは脇の下(肩関節)にキバを突き立てた。

 突き立てた刃先を作用点に、装甲部分を支点にして、当然のこと手を力点として力を加える。“てこの原理”を応用してキャサリンの両肩関節を破壊した。


 両腕が足元へと落下し終える前に、今度は股関節にも同じくキバを突き立てて、再びてこの原理を応用して股関節も破壊。


 最後は―。


 崩れるキャサリンの首に一閃が走った。


 刎ね飛ばした骸骨頭部から目を離すことなく見つめたまま。

 総ダメージ数60%以上を与えた。


 ―骸骨亡者スケルトンのキャサリン撃破―












似て、まるで非なるもの

 前書きからの続き。

ちん 建一けんいち

:言わずと知れた中華の鉄人。

 個人名なので他者の営むラーメン屋やパチンコ店の名称に使われる事は無い。

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