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ヰセカイ=ゲンジツの幽現奇譚(ファンタズム)  作者: 哀川キリン
第一章 幕開けに紡ぐファンファーレ
8/10

VS『姿なき怪物』(ノーカラー) 前編 目に映るモノ

「どうしたのじゃ!もっと速くするのじゃ!」と白い少女は駄々(だだ)をこねている。だが、そのファシズムに近いおねだりは、不可能に近かった。

「自転車っ!二人乗りでっ!速度出る訳ないだろっ!」

 そう、自転車をこいでる少年。覗茂(みるも)橙冶(とうや)は叫んだ。その自転車の後ろには、まるで遅いと言わんばかりの顔で白い少女は乗っていた。しかし、ただの少女ではない。頭に(けもの)の耳があり、腰辺りには白い・・・九つの尻尾があった。

「わらわは、そんなに重くないのじゃ!空気の様に、ヘリウムガスの様に軽いのじゃ!」と白ぎつねが頬を赤らめて言った。実際、白ぎつねは重くない。軽い、空気やヘリウムガスは言い過ぎだが、重さを感じない。だが、九つの尻尾と後ろに乗っている白ぎつねの所為(せい)で大変自転車をこぎづらい。

「そうじゃっ!わらわが手を、いや尻尾を貸してやるのじゃ!」と何かを思いついたかのように言った。

「はぁ?何を――――――」

 多分、少年の悪い予感はほぼ当たっている。そう――――――無茶なことをするだろうというところは。

「加速じゃぁぁっ!!」と言い、尻尾を地面にたたきつける様に(はた)いた。

 ゴウッッッ!!と勢いの付いた音を発し、加速した。

「ぐぁあああぁぁああああッッッッ!!!」と声にならない声を発した少年の乗った自転車は加速し続ける。

「運転は任せたのじゃ!」と白ぎつねは言い捨て加速させ続ける。

「―――がっ!ヤロウがぁぁぁっっ!!」とやけくそにペダルをこぎ、電柱のすれすれで曲がる。

 そう、『姿なき怪物(ノーカラー)』目指して。悲劇を繰り返さぬ為に・・・


         △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


「それでは、『姿なき怪物(ノーカラー)』の対策会議を始めます。」と透御(とうみ)鵜野江(うのえ)が凛とした声で言った。

「私と月見里(やまなし)さんはこのDDWTSでバックアップをします。」

 それを聞き、月見里(やまなし)壱環(いつわ)は頷いた。

「御狐様と橙冶(とうや)君は『姿なき怪物(ノーカラー)』の討伐に向かって下さい。他のメンバーにも任務が終わり次第、向かってもらいます。それまで持ちこたえて下さい。」

 それを隣で聞いていた白ぎつねは不服そうに呟いた。

「別に、わらわが倒してしまっても構わんのじゃな?」と、明らかに死亡フラグを立てた。

「おい、それは死亡フラグだ!」と橙冶はツッコみ、「そのつもりです。」と鵜野江(うのえ)は言った。

「では、皆さん無理のないように『姿なき怪物(ノーカラー)』討伐作戦を開始します。」

 そう、鵜野江の言葉で一斉にやるべきことに取り掛かっていった。

 橙冶が白ぎつねに、「昼のパトロールで学んだ、俺は自転車に乗って行くぞ。」との意見に、白ぎつねは、「わらわも乗せていくのじゃ。」と駄々をこね、しばらく揉め合いながらも結局、白ぎつねを後ろに乗せた。(※良い子も悪い子も交通ルールに(したが)い、二人乗りや三人乗りなどしてはいけませんよ。)

 しばらくして、壱環(いつわ)から【テレパシー】で、「『姿なき怪物(ノーカラー)』は現在左の路地を横断中です。幸い人がいませんが、被害がこれ以上出る前に妨害しに行って下さい。」とのこと。

 何故『姿なき怪物(ノーカラー)』の場所が分かったかというと、確かに鵜野江の【(あま)(ぎょく)】の効果だ。ただ、橙冶達からの距離だと『姿なき怪物(ノーカラー)』は映らない。これは――――――九条(くじょう)麗子(れいこ)がバイクに乗り、囮になっているからである。


        △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 会議が終わり、皆が準備に取り掛かっているところで麗子が、「『姿なき怪物(ノーカラー)』を、どうやって、見つける、のだ?」と鵜野江に質問した。

「それは私の、【天の玉】で探し出します。ですから御狐様達には縦横無尽に動き回って、私の能力圏内(けんない)まで近づいてもらいます。」と鵜野江が答えた。

「それでは、時間が、掛かり、過ぎる。――――私も、その作戦に、参加させて、もらうよ――――」と麗子が言い終わる前に、

「危険すぎますっ!!」と言った。その声の主は、鵜野江ではなく、PCの前に座りかけていた壱環が発したものだ。

「もし、『姿なき怪物(ノーカラー)』と出くわしたら、能力の持たない麗子さんなら抵抗もできずに殺されてしまいますっ!!」

 それは、麗子の身を一心に案じての事だった。それでも、

「こう見えて、私は、昔、やんちゃだったり、する。」と続けて、

「私だって、徒歩で、動く訳では、ない。とっておきのが、ある。」といい、指にはめクルクルとバイクのキーを回して見せた。

龍城(たつき)が、あんな怪我を、させられたんだ。そいつに、詫びってもんを、入れさせないとね。」と、決して巫山戯(ふざけ)ている訳ではない。覚悟を決めている。そして有無(うむ)も言わさずに 外に飛び出していった。

 そして、『姿なき怪物(ノーカラー)』は何度か白ぎつねに痛い目に合わさせられているので、白ぎつねの気配のする方へは行かず、目の前をちょこまかと走るバイクを追いかけるのであった。それが、『姿なき怪物(ノーカラー)』自分自身の運命を左右するとは知らず、本能の(おもむ)くままに、一方的な蹂躙欲のままに、目の前のエサに喰らいつくのであった。


        △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 もう少しで大広場に差し掛かる所で【テレパシー】がかかった。

「橙冶さんっ!!大変ですっっ!!麗子さんがっ!」

 壱環の慌てた声が聞こえた、橙冶は、その情報だけで判断した。

「おい!白ぎつね!もっと飛ばすぞ!」

 それに白ぎつねは、口角をあげ、まるで誰かの完成しそうなトランプタワーを倒す前の表情で、「了解じゃぁ!」と叫んだ。

 やはり大広場に『姿なき怪物(ノーカラー)』は居た。だが、それの前には煙を吹くバイクと横たわる一人の女性が有る。

 橙冶は自転車から飛び降り、ハリウッド並みの受け身を取り、目の前の怪物と向き合った。

 『姿なき怪物(ノーカラー)』は走り出した。が、しかし、もう白ぎつねは動いていた。生憎様、ここは広い。多少遊具などの障害物が有るが、もう白ぎつねから逃げ出すのは不可能に近いだろう。

「ぬしよ、今までおいたが過ぎたのぉ~。それなり以上は覚悟するのじゃな。」と怒気(どき)(こも)った声を発した。それは、完全に勝負の結果が見えるに十分過ぎる材料だ。

だが・・・相手も相手、悪あがきが激しいのは当たり前だ。

 

        △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 結果は分かり切っている。その経過が重要なのだ。いくら終わり良くても、全て良しとは限らない。

 その目には全てが映っている。少年の目には全てが映っている。

 『姿なき怪物(ノーカラー)』のこと、白ぎつねのこと、そして横たわっている九条麗子のこと。

 目の真髄を、まだ分かり切っていなかった。

 まだ、何も知らなかった。

 多分、まだ目の真髄は分からないだろう。

 結果、それは『私』にとって興味の対象になるには十分だ。

 この『世界』の『世界』の事。色々気になる。

 やはり、『私』は知らなすぎたな。


        △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 そうして、一つ影が闇夜に紛れていった。

 それに気づけたのは二人だけだった。

 目の能力の二人だけであった。

次回、バトルがメインになるといいなぁ~・・・

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