序章
これは、夢によって導かれた男と女たちの話。語り継がれることなどないと思われた一度きりの夢の話を私は此処に記す。
始まりは、2012年5月8日午後4時。学校の屋上でいつものように寝ていた彼の夢に現れた人によって、彼らの人生の道が大きく変更された。
「おい、あんたはダレだよ?」
「我名は――。我の使命はお主らを夢に導くもの」
「はぁ?夢?つうか、あんたの名前がよく聞こえなかったんだけど?」
夢の中では青色の巫女服を着た人が、金髪の少年にゆったりと話しかけてきた。
金髪の彼は絶恕高校2年の忌慈輝樹。そこらへんの不良と変わらない男だ。
『我名を聞こえないのなら、お主と同じ道を歩む、あやつに聞け。名は桜樹慧』
「おうき・・けい・・だぁ?」
頷いては、巫女服を着た人は青い光に包まれて。消えた。
「えっ、ちょっ・・・!!」
消えた人を輝樹は掴もうとしたが、光は消えて・・・その場は暗闇になった。
輝樹は何もなく、音もない、全ての五感が奪われたような世界に一人でいた。
「おい。忌慈、起きやがれ」
輝樹を起こそうとしているのは、彼とは偶然同じクラスになった鈴浜永貴だった。彼は、目が悪いため度のきついメガネをかけている。そして、成績優秀、容姿端麗、家柄良好、性格良しの女にモテ要素を兼ねそろえているためにか、彼に告白をする女が多い。
「・・ぃ、あ?もう、放課後かよ」
「忌慈お前は相変わらず寝起きはいいよな」
「その寝起きだけを強調するのはやめろって」
輝樹はうざそうに永貴を睨むようにみると、永貴は毎日の繰り返しに溜息をついた。それを、見ていた輝樹もため息をつた。
「それに、変な夢を見たしな・・・」
「お?どんな夢を見たんだ?」
永貴は興味を示したのか、輝樹に聞いてきたが、そのまま輝樹はスルーした。
輝樹は背伸びをして、立ち上がり。永貴の方を振り向いて。
「ハマキ、俺の」
「ハマキじゃねーって、鈴浜永貴。俺の名前ぐらい覚えろ」
「しょーがねだろ。俺は人の名前覚えるのはメンドイだから」
毎日の掛け合いの中永貴は輝樹に輝樹のカバンを投げ渡した。すると、輝樹は永貴に夢の中で現れた巫女の人が言った名前を思い出して聞いた。
「桜樹慧ってやつ知ってるか?」
「・・桜樹、慧?・・・あー・・・いた。人の名前をなかなか覚えないお前が知ってるってことは気になるのか?」
「あぁ?・・・何が言いたい?」
凄みながら輝樹が言うと、永貴は微笑しながら輝樹の嫌いな単語を発した。
「お・ん・な。だよ。しかも、同じクラスの」
「はぁ?お、同じクラス!?」
輝樹は女が大がつくほどの女嫌いだ。そのためか、最初女の取り巻きができていた永貴のことが苦手だった。が、運命のイタズラなのか仲良くなってしまった。
「というか、お前の斜め前の席だけどな」
「・・・女好き」
「忌慈?何か言った?」
ボソッと言ったはずの言葉を、永貴はちゃんと聞いていた。
永貴は「まぁいいや」と言っては、輝樹の横に並んで帰ろうとした。
「おい、ハマキ・・てめぇ一緒に帰る気か?」
「ん?ダメ?」
すると、輝樹はめったにみせない笑顔で永輝に。
「嫌に決まってるだろ。てめぇは俺の性格をしってるだろ?」
輝樹は輝樹なりの遠回しの遠慮をしたが、それがから回ったのか。
「だから、俺は忌慈と帰りてぇの」
「俺は嫌」
「というか、忌慈・・・高校生なんだからさ。女に慣れろ」
それが、輝樹の癪に障ったのか輝樹が突然永貴にむけて蹴りを繰り出したが、それを、かっこよくサラリと避けたが。
「うがぁ」
輝樹のチョップが見事、永貴の頭に当たり、かっこよくもない声が出た。
永貴が頭を両手で押さえているうちに、輝樹はいまのうちだと思い、屋上を出て行った。すると、永貴は輝樹が出て行ったのに気づいて慌てて屋上を出て行った。
その様子を見ていた人がいたのを彼らは気づいていなかった。
「ねぇ、――。私は何をしたらいいの?」
彼女の声は突然の風によってかき消されて、誰にも聞こえないまま。
彼女は消え去った。