第4章 昔の家にて
18時を超えた時点で先生から帰宅の通達が届いた。
一応、準備はできるだけ行って来た。俺は主に雑用ばかりだったが…でも、そのお陰で他の人とも仲良くなり、何かおかしいけど…仲良くなった。
少しずつ記憶を思い出して来た気がする。消えた1年半の方ではなく、普通に過ごした日常の記憶の方だ。
俺は、中学の時こんな感じだったかなと戸惑う事もあったが、懐かしい感じがする。
帰り道、ふと気づいたことがあった。
俺は大学では一人暮らしをしていたけど、昔は家族四人で住んで居たんだ。
その足は知らぬ間に帰路へと着いていて、場所など記憶があやふやなのに対して、足はしっかりとその場所へと向かっていた。
「ここだな…」
懐かしさと嬉しさが湧き出てくる。
少しボロくなった家だけど一軒家で、その窓からは温かな光が漏れている。
ドアを開けて帰宅の挨拶をする。奥からは昔の母が「おかえりー」と言ってくる。
それだけなのに何故かこんなにも嬉しくなるのは何故だろうか。
大学に入り一人暮らしが長かったせいだろうか、家族と過ごす時間の大切さが何となくだがわかったような気がする。
「ただいま」
自分の家だが恐る恐る上がる。
リビングには母が晩御飯の準備をして立っていた。
「おかえりー、すぐご飯できるから先にお風呂に入って来なさいね」
「う、うん、わかった」
「うん?何か今日は珍しく素直ね」
「そ、そうかな?」
「あんたはいつも言うこと聞かないのに、何か学校であったの?」
「いや、特にないよ、じゃあ風呂入ってくるわ」
逃げるように風呂場に行く。
自分家なのにどこか違う気がして他人の家に上がったような感覚だ。
風呂に浸かりながら、今日1日を思い浮かべた。
こっちに戻ってきて、授業受けて、
体育祭の準備して、家に帰ってきて…何かと慌ただしい1日だったな。
まだ、何の為に戻ってきたのか目的も思い出せないし…もしかしたら、一ヶ月間このまま過ぎ去っていくのでは無いかと思ってきた。
「まぁ、言ってもまだ1日目だし…気楽に考えようかな」
「シャンプーとリンス変えるの忘れてたわー!」
「うわぁらっ!!」
「あ、ごめんね、でも、見えてないからセーフ」
「バカ野郎!!そういう問題じゃない!早く出てけー!」
「もう、年頃なんだから、じゃあね」
そう言うと母は風呂場から退散して行った。
「くそ、このやり取りも懐かしい」
顔をバシャッと洗い上がった。もちろん身体も洗いましたよ。
母のご飯は美味しかった。
好きなものとか特になかったけど、久々の普通のご飯に家族との団欒。
父は仕事から帰宅し、三人でご飯を食べてたわいも無い話しをして…これが、この時代では当たり前の事だったんだな。
ベッドに横になり感慨深くなっていた。
そのまま気付くとうとうとしてそのまま眠ってしまった。
変な夢を見た。
家族で行った。遊園地、父や母がいる。
俺は楽し気にしてた。
俺は誰かの手を引いていた。
女の子…?
小さい、女の子
笑ってる。俺も笑ってる。
みんな、笑顔だった。
何の…夢だろうか……