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振り返ると  作者: 乱丸
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第3章

振り返ると

第3章 過去の自分は


目が開く。

頭は何十時間と寝ていた時みたいに重くて、意識があやふやな感じがする。

先ほどの出来事を思い出しすのに時間がかかり次第に鮮明になっていく。

俺は戻ったのか?と周りを見ると…学校にいた。

大学ではなく、この制服は…

「中学校?」

そう呟くと周りが一斉に笑い出した。

先生は呆れている。

何が何だか…

「おい、大丈夫か?さっき寝言で痛え!って叫んでたけど」

「え、あぁー大丈夫元気元気、ごめん何か悪い夢見てたわ」

後ろの席の奴が話しかけてきた。

咄嗟の反応にしてはナイス判断だと思う。でも、そう言えば頭がズッキンズッキンする。

笑い声がまた上がる。先生は溜息をついて黒板へ向き直り授業を再開し出した。すると、また生徒達は徐々に静かにノートを写し出しクラス内は静かになっていく。

一旦落ち着いて考える。自分自身動揺を隠せないでいる。

あの時、神様は俺を過去へと本当に送り込んだ。これは夢じゃなくて本当に中学時代に戻った。頬っぺた抓っても痛いし…

もしかしたら、俺一人だけが夢を見て起きたら布団の上にいるかもしれない。一人だけ見ている。そう、夢かもしれない…でも、とりあえずは起きるまではこの夢に付き合おうと思うと気持ちが楽になる。この前向きの姿勢が俺の良いところだ。

少し余裕が出てきて、周りを見渡してみる。

懐かしいな…中学時代と言ったら…特に思い出せないけど、良い感じだったと思う。

落ち着いて周りをもう一度見ると思い出してきた。このクラス編成は、中学二年生だ。そして、さっき話かけてきた後ろの席の奴は『高橋』だ。

当時よく遊んでた奴で、高校まで毎日の様に遊んでたと思う。高校入学と同時に連絡を取らなくなり、数年後に何処かで再会した感じだったような、あまり覚えてないけど。

時計を見ると11:45を指していた。

確か12:00から昼休みで13:00から5限の授業があった筈。これも神様が俺の為に考える時間をくれた配慮かもしれない。

とりあえず後15分。ノートを写す振りでもしとくか。



昼休みは何人かのグループになってご飯を食べてた。中学から弁当持ちでみんな好き勝手な場所で食っていた。

俺は高橋と佐藤という奴と三人で食っていた。

「さっきのあれは驚いたわ」

「どんな夢みてたんだよ(笑)」

「いゃー、俺もあまり思い出せないんだ。何か怖い夢だったようなー」

そうだよな、普通静かな授業中に奇声を上げたら気になるな。

高橋はバスケ部である。なかなか身長が高く、運動神経が良い。そして、佐藤は金髪である。中学の夏にデビューし、今に至る。

基本はこの三人だった気がする。

「午後の授業面倒だなー」

「サボるか?」

「良いなー、でも俺は顧問に知られるから出なきゃいけない」

「部活組は自由があまり無いな、お前はどうする?」

「俺は普通に出るよ」

まだ、色々考えたいことがあるし、授業中なら先生以外には邪魔されないで済む。

なんやかんやで昼食を終えた。

「さてと、喫煙所ってどこにあったっけ?」

「「…は?」」

「いや、だから喫煙所…」

「お前…タバコ吸ってんの?」

「……は!」

そうだった!今は中学生、タバコは20歳からだ!!

いつもの習慣で昼食後にタバコを吸いに行こうとしてた。

「う、嘘だよ!嘘、俺がタバコを吸う筈無いじゃん」

「だよなー、吸う奴に見え無いしな」

「でも、なんか嘘とは思え無いほど自然な感じだったような…」

「まぁ、最近演劇の漫画読んだからかなー、ちょっとは驚いただろ」

そんな漫画見た事ねぇー、それにそんな才能21年間生きてて片鱗すら見え無い。けど、不思議な事にタバコを吸いたいとは思わ無いんだ。

身体は中学生の頃のものだからなのか、不思議だ。頭脳は大人…実際にこんな体験すると戸惑うばかりだ。あの漫画の少年はこんな気持ちで過ごしていたのかと少し近親感が湧く。

午後を告げるチャイムが鳴り、それぞれの席に戻り始める。

佐藤はサボろうか悩んでいて結局授業を受ける事にしたようだった。

5限の授業は理科。

懐かし過ぎてちょっとドキドキした。

すいへーりーべーぼくのふね。そんな単語が思い出させる。でも、それって中二で習う事だったかは覚えてい無い。

何となく机の横を見ると自分のバッグがある。

何が入ってるのか見てみる。

ノート、教科書、ゴミ、ゴミ、鍵、タバコ、iPhone。当時の俺の授業態度が分かった。

タバコとiPhone以外は普通だった。

この時代にスマホというものはなかった…

使えるのかこれ?

ピリィィィィ!

突然携帯が鳴り出した。

静かな教室にまた騒音が響く。

こっち来てから心臓に悪い事ばかり起きる!

「先生!ちょっとトイレ行ってきます!」

許可を貰う事なく慌てて教室を飛び出し、後ろから聞こえる先生の声と生徒達のざわめきを無視した。

確実に「今日のあいつ変じゃね?」と囁かれているは間違いない。

玄関口を出て校舎の裏に行く。ここは誰もいないし、先生など一人も様子を伺いには来ない。

携帯の着信音は切れている。こちらから掛けてくるのを分かっているかのように途中で音は切れた。

履歴を確認すると、見知らぬ番号から掛かっていた。

折り返してみる。

……

『もしもし』

「……」

『もしもしー』

「…」

『もしもしー!!』

「神様…なんで掛けてくるんですか?」

案の定神様からの電話だった。っていうか携帯持ってるのかよ!

『そろそろ起きたかなぁと思って掛けてみました』

「授業の真っ只中に電話が来ましたよ…」

『ごめんなさい、でも、ちょっと重要な話なので早めに伝えて置きたくて電話しました』

なんか真面目なトーンで話し出す神様。

『過去に戻り、目が覚めてからちょうど一カ月の期間が貴方に与えられた猶予です。その間に貴方は自分のやり直したい事を見つけて下さい』

一カ月間か…長いような短いような期間だな。

『また、その期間で行った事は現代に戻った時に反映されます。…例えば、悪事を働いたらその事はみんな知っていますし、周りからの反応も今までと同じにはならないでしょう。逆に何もしなければ今まで通りの生活が待っています。一度体験した事なので、貴方は他の人より有利に立っています。それをどのように活用するかは貴方次第です。』

良く考えたらそうだな…やり直すって事は一人よりも自分が有利な条件で物事が進むって事だ。

『そして、それを実行する為に貴方の携帯にはアプリが入っています。お助けアイテム的な物と思って下さい』

使用方法、注意点など教えてくれた。一応使わないで済むようにしたいと思う。

『後は、特にありません。何か質問はありますか?』

「こっちからは何もないです。」

『そうですか…では、これで電話は終了です。貴方の成功を祈っています』

切られた。

今日から一カ月の間に何が待っているのか俺には分からない。でも、神様はこの期間に俺の中でやり直した事があると言っていた…一つ心当たる事を思い出した、それは俺が無くした記憶に関係する物だと思う。

中学の半分の記憶が俺の中には無い。思い出せるのはこの時期から飛んで高校入学前の記憶だけだ。つまり、一年間近く俺の中からぽっかり空いた穴は何の片鱗も見せないまま大学生まで年月が過ぎた。

それが今になってやり直した事だと言われても正直どうすればいいのか分からない。



午後の授業は普通に受けた。

案の定あの後戻るとみんな奇異な視線を送ってきた。

俺は悪くねぇと思いながら堂々と教室を闊歩して席に着き授業を受けた。

一日がなんか長く感じて疲れたが、ようやく家に帰れる。

何の部活にも入ってなかったので放課後は直ぐに家に直行出来る。

「待ちなさい」

一人の少女が呼び止めてくる。

「俺?」

確かこいつは…なんとか楓だったような…

「そうよ、今日から体育祭の準備をするって朝のホームルームで決めたでしょう」

「あ、あぁー!そうだった。うっかりしてたよごめんごめん」

遠くから安井さんと呼ぶ声がある。

それに反応し彼女は向こうへ行く。

去り際に「席に座って待ってて」と黒髪の短髪を降り走り去った。

そういえば安井楓は一年二年と同じクラスだった。

部活はバスケ部で結構上手いらしくてレギュラーで活躍してたと思う。

なかなか可愛い子だ。

良く見るとクラス内を見ると殆どの生徒が残って看板を作製したり、リレーの順番や当日の栞などを作っていた。

俺はこの頃何をしてたか考えてみるが何も思い出せなかった。

これは記憶喪失というより単に忘れただけ。

「お待たせ、とりあえず備品運ぶの手伝ってよ」

息を切らせながら安井が戻ってきた。

備品は体育倉庫にあるらしく、教室から出る。

「安井って実行委員だっけ?」

「そうだよ、他に高橋くんとか中西くんとか渡辺さんもいるよ」

あいつ実行委員だったのか…他の奴らの名前を出されても微かにしか覚えていない。

「そうなんだ。部活もやってて大変だね」

「そうなのよー!部活はあるわ、実行委員あるわ、テストも近いって毎日忙しいのよ」

俺とは違い多忙の日々を過ごしてるようだ。けど、今になって思うがこの時代からそういう風に積極的に取り組んでいく体験が、今後役に立つと今になって実感してる。

倉庫には人数分のハチマキと数本のバトン、その他を取りに来たようだ。

結構な量があり一人で持つには到底無理な話だ。

「よし、これだけあれば充分だわ」

そう言って荷物を全部俺に押し付ける。

「いや、一人でこの量は無理でしょう!」

両手、両腕、口を使い荷物を持つ俺。何の仕打ちなのか教えてくれ!

「いやぁ〜、毎日手伝いもせずに帰宅してた奴をイジメるにはこの瞬間しかないと思って」

「えっ?俺って毎日帰ってたの?」

「何を今更、あと5日しかないっていうのに…毎日手伝いもせず帰宅して…こっちはてんてこ舞いで苦労してたのに、少しは働きなさいよ!」

昔の俺…サボるなよ!

奇跡的に全部の荷物を持つ俺は凄いと思う。ただ、腕の震えが止まらないぜ。

体育倉庫から教室までは結構な距離を歩く。その間に美術室からマジック、模造用紙を追加して教室へと戻る。

「安井はさ」

「ん?」

「何でバスケ部に入ったの?」

特に会話が思いつかないので無難な質問。少し迷いつつ安井は答えてくれた。

「うーん、小さい頃さテレビでバスケットの試合を中継してて、その中で一人めちゃくちゃ上手い人がいて、『私もこんな人になりたい』って思ったからやってるんだ」

「その人はそんはに上手かったんだ」

「そうなの!今思い出すとその人の凄さがよく分かるわ」

ちょっと興奮気味で応え出す。

「今はまだ追いつかないけど、私もその内そんな人になってやるんだから」

「何かいいな、そういう風に目標があるって…俺にはそんなものないだから安井は凄いな」

「なにおっさんくさい事言ってるの!まだ、中学生なんだからやりたい事だってこれから見つかるわよ」

背中を思いっきり叩かれた。

考えてみたら自分のやりたい事なんて俺の人生で無かったかもしれない。ただ、大学に入れば良いと思って近くの大学に入って惰性の日々を過ごしてた。そんな馬鹿な日常に俺は時間を無駄に浪費してるだけなのかもしれない。

「まぁ、私もこれからどうなるかなんてわからないよ。偉そうに言ったけど今はこれを思いっきりしたいだけだから、あまり考え込まないでね」

表情に出てたのか、安井は優しい言葉を掛けてくれた。

「けど、あんたも色々考えてるんだね。なんかいつもと違うから戸惑うわ」

そんな話をしてる間にろうかのかどを曲がれば教室に着くところまで来ていた。もう腕が限界を超えて感覚が無くなってきた。

「ガンバれ!後少しよ」

その応援で俺は最後の力を使い、教室まで辿り着けなかった。

その角から来た人に当たって荷物を廊下にばら撒いてしまった。

「おい!気ぃつけろガキ共」

「なにやってんだよぉ」

どうやら先輩達が通ってきたらしい。そのせいで荷物を落としてしまった。

「すいま…」

「ちょっと!その言い方は無いんじゃないの!!」

俺が謝る前に安いの怒号が響いた。

「はぁー!?なんだってこら」

「打つかっといてその言い方は無いんじゃないの?謝りなさい」

「お前、二年だろ?その態度は先輩に対して有り得なくないか?てめぇ、ふざけてんのか?」

三人の先輩は安井に向かっていく。

「ちょっ、ちょっと待ってください先輩達!いやぁーこの度は僕の不注意で先輩達にご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません。今後はこの様な事がないようわたくし達気をつけて歩きます!!」

早口で謝罪をし見事なまでの直角のお辞儀をする俺。

見事なお辞儀に周りは言葉を失う。

「お、おぅ…まぁお前の誠意で今回の事は許してやるよ」

「ありがとうございます!」

踵を返し先輩達は廊下を歩きだす。

「こらー!ま…」

俺は安井の口を抑えつけ喋れなくする。というか今にも殴りかかりそうで全身で抑えつける。

「ははは」

チラッと振り返ったため愛想笑いで返す。舌打ちが聞こえたが気にしないようにしよう。

姿が見えなくなって安井を離した。まだ興奮してるようで俺を睨み付ける。

「落ち着けよ」

「落ち着いてるわよ!!」

「ふん!」と言いながら教室へ向かってしまった。

俺は荷物を再度持ち直してその後ろを追い掛けた。重いなやっぱり…

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