内藤駿介のスイッチ 後編
「初恋ショコラ」遅まきながら、登場です。
「デザート買ってくるから、ちょっと待ってて」
駿介くんはそういうと、私からちょっと離れてコンビニに入っていった。しかも外から見てるとなにやら探すのに手間取っている。言ってくれれば一緒に探すのに。
しばらくすると、お目当てのものがあったらしく、駿介くんは上機嫌でお店から出てきた。
キッチンにかけてあるエプロンから黒いのをとると、駿介くんは料理の準備を始めた。
「あ、私も手伝うよ」
「大丈夫。座ってていいよ」
対面型のキッチンで駿介くんは手際よくパスタをゆで、ベーコンを刻み野菜と炒めてる。家事を3人で分担してるって本当だったんだなあ、やりなれてるもん。
キッチンにはエプロンが残り2着。渋い赤色とターコイズグリーン。
たぶん・・・赤いほうはお兄さんで、ターコイズグリーンが内藤くんなんじゃないだろうか。
駿介くんが作ってくれたのは、カルボナーラ、トマトと水菜のサラダときのこの入ったスープ。
「簡単なものばっかりになっちゃったけど」
「ううん。美味しそう」
パスタの量が私の倍はある。やっぱり男の人なんだなあ。
「うちは男ばっかりだから量が大事なんだよ。えっと、食べようか」
「はい。いただきます」
私はカルボナーラを一口食べて、その濃厚な美味しさに目を見張った。
「駿介くん、カルボナーラ美味しい!どうやって作ったの?」
「レシピサイトで牛乳と卵、チーズでできるレシピがあってさ。兄さんがためしに作ったのを食べたら美味しくて。それいらいうちのカルボナーラはこれ」
「へ~。私も検索してみようかな」
彼氏の作った料理を食べるって、なんか幸せだなあ。サラダとスープもとても美味しくて私はとても満足。
「ごちそうさまでした。とても美味しかった」
「それはよかった。あ、デザートも食べるよね」
そういうと、駿介くんは冷蔵庫から出してきたものをテーブルに置いた。
「はい、今日のデザート」
「え?これ・・・」
透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンがかけられた外見のチョコレートケーキ「初恋ショコラ」。以前、駿介くんに聞かれて、そのCM内容を話す羽目になったやつ。
「苑子ちゃん、これ好きだろ?」
「う、うん。でも1個しかないよ。駿介くんの分は?」
「俺はいいよ。食べたら?」
「じゃ、じゃあ・・・」
お言葉に甘えて、フタをあけて一口・・・・ん~~~、やっぱり美味しい。なめらかで濃厚なチョコクリーム、ふんわりとしたスポンジ・・・これを食べていると幸せな気分になるのはしょうがないと思うの。
「苑子ちゃん、美味しい?」
いつのまに隣に座っていたのか駿介くんが顔を近づけてきてキスされる。だけど、今日のキスはなんか、いつもと違う。
「んっ・・・・んんっ」
息苦しくなって口をあけると、駿介くんがさらに深いキスをしてきた。く、口の中に舌???まるで、食べられてるみたい・・・・でも・・・・。
唇がはなれると、駿介くんは今まで見たこともない色気のある表情だった。
「ケーキと俺のキス、どっちがすき?」
「え。ええっ、駿介くん、そ、それは・・・」
普段は寡黙な駿介くんがそのセリフをいうのは反則だよ。何かスイッチ入るような出来事があった?・・・だめだ、何も思いつかない。
「もう一度したほうがわかるかな」
駿介くんが顔を近づけたそのとき、玄関から「ただいま~、なんだ駿介帰ってるのかあ?・・・・と、女の子の靴??」とちょっと慌てた声がして、バタバタとこちらに向かって走ってくる。
私たちは、あわてて離れた。
帰ってきたのはお兄さんで、家に私がいるのを見て驚いていた。
「駿介、おまえ外で夕飯って言ってなかったか」
「兄さんこそ、飲み会にしちゃ早いじゃないか」
「飲み会だとおもったら、合コンだったんだよ。だから挨拶だけして帰ってきた。お?カルボナーラ食べたのか。俺の分は?」
「あるわけないだろ。自分で作ってくれよ。俺、苑子ちゃんを家まで送ってくるから」
「駿介、ちゃんと送るんだぞ。寄り道すんなよ。苑子ちゃん、またね」
「はい、失礼します」
私がお辞儀をすると、お兄さんはにこにこと手をふってくれた。
2人とも黙ったまま手をつないで歩いてく。
さっきのキス、びっくりした・・・・食べられちゃうんじゃないかってどきどきしちゃった。まさか、私がCMと同じことを言われるなんて。
今度からあのCMを見るたびに、どきどきしてしまいそうだ。1人で顔を赤くしている私・・・外が暗くてよかった。
読了ありがとうございました。
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薄い・・・薄すぎる青い衝動が。
しかもオチついてるし(汗)。
ちなみに苑子が駿介にCM内容を話す羽目になった話は
拙作「初恋ショコラ」内の”Operation chocolate cake”です。