車内で出た仮説
おれはパトカーの後部座席に座らされていた。両サイドにはさっきの2人とは別の警官が座っている。さっきの2人の警官は車外で何か話している。
この状況を何とかするのは簡単だ。ここはおれの夢の中なのだから。しかし、おれにはどうしても気になることがあった。
ひとつは、パンツの件。
なぜ、メモを破るとパンツが現れたのか。そもそもパンツはなぜ一度消えたのか。おれはひとつの仮説をたてていた。
あのメモで物に触れると、メモのなかにそのまま保存できるのではないか・・・!
だから、あのメモで女性のパンツに触れたとき、パンツそのものがメモの中に保存されたのではないだろうか。そして、そのメモを破くと、またパンツが現れたのではないだろうか。ぶっ飛んではいるが、夢の中だからまあありえることだろう。
もうひとつ気になることがある。
スピーチの件だ。
昨晩の夢の中で、おれはスピーチのネタを考えたが、そのときのメモが現実世界でポケットから出てきたことだ。
これらふたつの、パンツの件とスピーチの件を合わせると、おれは当然の疑問にたどりついた。
あのパンツのメモを現実世界に持ち帰れるかどうか・・・だ!
そうすれば、現実世界であのメモを破くとパンツが現れるのではないか!?
そんなことできるわけがない。しかし、やってみる価値はある。確かめたい。何より、あのパンツを持ち帰りたい。
おれは決心した。何としてもあのメモ帳を取り返し、夢から脱出する。
あのメモは、どうやら外の警官がまだ持っているようだ。そして、おれの両サイドには2人の警官。
夢だからといって調子に乗って暴れると、殴られたり銃を撃たれたりする可能性がある。その衝撃で目が覚めるのだけは避けたい。メモを持ち帰れない可能性があるからだ。これは直感だが、夢とはいえ、あのメモをポケットに入れておかなければ、なぜか持ち帰れないような気がしたのだ。
どうしようか。
夢の中で敵と戦うこと・・・
よくありそうなことなのだが、おれには経験がない。
今まで夢の中でしてきたことといえば、昨夜のスピーチの件のように何かを練習してスキルを高めることや、考え事をすることや、あとはエロいことぐらいである。
ちょっとイマジネーションを膨らませば、手からレーザー光線を出したり、口から炎をふいたりといったことはできそうなものだ。しかし、おれは現実的なのだ。そんな非現実な想像はできそうにない。
そんなことを考えながら窓の外の警官に目をやった・・・。
ーー「いない!!」
警官がいなくなっている・・・いや、地面に倒れている!
誰だ、おれの夢のなかで勝手に非現実なことをするやつは!
つづく