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商店街の攻防

その時、後ろでサイレンが聞こえた。パトカーだ。


おれの心というのは素直でありつつ現実的であるようで、悪いことをすると罰せられるという固定観念がある。夢の中でさえそれは同じだ。


すぐさま、おれは走りだした。夢の中なのだから、パトカーごとき何とでもなるかもしれないが、そこまで悪者にはなりたくないのだ。



「下着泥棒ーー!」


後ろからそんな悲鳴が聞こえた。パンツを見られたから下着泥棒とは、なかなか風情のあることを言うものだ。


おれはわびさびを感じながらも、商店街を走り抜け、一本目の曲がり角に入った。すぐに電信柱があったので、それををするすると登り、商店街のアーケードの鉄柱へ飛び移った。夢の中なのでこれぐらい朝飯前だ。


下を見るとパトカーから降りた警官が走って通り過ぎていくのが見えた。


ひと安心したおれは鉄柱の水平な部分に腰掛けて、さっきのメモを探した。パンツに触れたメモだ。パンツに直接触れたものだけあって、そのぬくもりは格別だろう。



ん!?



絵!?




そのメモには、パンツの絵が書いてあった。まさか、破られたのは別のページなのか?ラッキーだ。


しかし、凝視してみると、もっと驚くべきことがわかった。



ーー「これは、おれが書いた絵じゃない!上手すぎる!」



おれは鉄柱から下へ飛び降りた。もちろん夢なので痛くも何ともない。


急いでさっきの「現場」へ直行したおれは足元を見回した。

あった!さっきの破られてしまった紙の破片だ。よく見ると、おれの下手くそなパンツの絵が見える。


どういうことだ。このメモは何だ。

握りしめたメモを見ながら立ち尽くすおれの背後から、


「あんた!まだいたの!!」


振り返るとさっきの女性が立っていた。

心なしか内股気味でこちらを警戒している彼女。よっぽどおれのことを気持ち悪がっているのだろう。


「私の下着返してよ!変態!」


何のことだ。おれはパンツを盗み見たが、実物を奪ってなどいない。そんな大それたことはしていない。


と、その時、女性は凄まじいスピードでおれのメモを取り上げ、ビリビリに破いてしまった。


「もう一枚書いてたのね。このヘンタ・・・」


ふわっ


女性がそこまで言ったとき、紙の破片からピンクのパンツが現れた。そう、まるで手品のように。



!!



!!




今、この女性はノーパンなのか!!!

いや、違う!パンツはなぜここに現れた!?そもそもなぜパンツが脱げたのだ!?いつ脱げたのだ!?




混乱したおれは地面に落ちたそのピンクのパンツを握りしめ、走りだした。今日の夢はよく走る夢だ。とりあえず、パンツは胸ポケットに入れて、また商店街を走り抜けた。


曲がり角に入った瞬間・・・



ドンっ



「お前!さっきの男だな!」



警官だ。ツイていない。抵抗むなしく一瞬で地面に取り押さえられた。



「そいつが下着を奪ったのよー!胸ポケットに入れたはずよ!私見たもの。」


商店街の角の肉屋のおばちゃんが興奮して話す。



若い警官がおれを取り押さえたまま、もうひとりのダンディな警官がおれの胸ポケットにそっと手を伸ばす。ああ!おしまいだ!そこにはどんな敏腕弁護士も弁護できない無敵の証拠が!おしまいだ!


「おい!貴様!下着をどこへやった」


見てみると、ダンディな警官の手にはおれのメモ帳がある。パンツは無い。


??


どこかで落としたか。ひとまず安心だ。これでおれに証拠はなくなった。


「おい!これは何だ!」


ダンディポリスに見せられたのはメモ帳の1ページ目。見ると、そこにはまたもパンツがスケッチされていた。


ーー「いや・・・それは、私にも分からないのですが・・・何というか、身に覚えがありません。」


おれはしどろもどろそう答えたが、嘘はない。



「署で話を聞こう。」



おれは逮捕された。





つづく

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