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並行世界はいわゆる直列  作者:
プロローグ
7/9

学校にて

おそくなってすみません

受験勉強やらテストであまり時間が取れなかったもんで

もしかしたら結構誤字脱字があると思います

 がやがやと教室が騒がしい中、昨日の謎の本とともにちゃっかりと借りてきた小説を読む。ちなみに例の本はロッカーに置いてある。

「どうだったか? 少年」

 昨日のキャラがまだ残っているようで口調が変わっていない菊池が机をぬって歩み寄ってくる。

「――ろくなもんじゃなかったな、並行世界を回れるらしい」

 俺にとっては魅力あるものだったが。

 少しの期間の間に信頼関係というものの大半を疑うようなことが起き、実際に信じられなくなった。神様にレールを敷かれた人生はいやだ。未来への切符はいつだって白紙なんだ。こんな楽しくない人生は変えられるんだ。

「そうか、並行世界を回れるのか――」

 ん? もしかして俺、今やばいこと言っちゃった? いや、もう遅いのは分かっている。並行世界を回れるなどあり得ない話だ。菊池はきっと俺のことを痛い子だと思ったに違いない。

「では、地盤沈下事故との関係性はあるか?」

 真に受けたらしく別の質問をしてきた。キャラが変わっていたら別の反応でもしていたのだろうか。しかしなぜ今陥没事故が出てくるのか、そういえば今朝の新聞にそんな記事があった気がする。特に気にはしていなかったのであまり覚えていない。ニュースでも見てくればよかった。

「それがどうかしたのか?」

「いや、昨日別れてから起きていたものでな。関係ないならまぁ問題ないだろう」

「その地域では大問題だろうな」

 まぁまぁ落ち着けと言いたげな表情を浮かべ、耳を近づける。いったいなんなんだろうか。

「で、どうだったのだ?」

「……何が?」

 より一層目をキラキラと輝かせ身を乗り出してくる。餌をお預けくらった子犬のようだ。なんとなく状況を理解したので説明するため口を開く。

「世界には自由に回れないからな、制約がいくつかある」

「そうか」

 一気に菊池を覆っていた明るい空気がどんよりと湿る。

「その制約は?」

「めんどくさいからいい」

「いやこっちが聞いてるんだが」

「まぁさしずめ俺は救世主といったところか」

 きょとんとした顔をされる。そして深く考え込む菊池。特に深い意味など考えずにそのままの意味を伝えたつもりなんだが、よくわからないらしい。まぁそれが普通だろう。


『おい、今すぐこの町から離れろ!』『お前の身勝手な考えで今まで築いてきたこの地が消えんだよ!!』『なにをしようと結果が出ればそれでいい』『そんなにそれが大事なことなのか!?』


 ――!?

 一瞬、誰かの声が頭を電撃のように走った。俺の声も聞こえたような気がする。だがいったいなんなのか? 昨日、あの本(、、、)を手に取ってから何かが俺にうったえかけてきているようなことがあるの気のせいだろうか。

「どうしたんだ?」

「いや、なんでもない……」

「なんなら明日学校に来なくてもいいんだぞ?」

「――? はい?」

 なぜそうなるのか? よほど俺はつらい顔でもしていたのか? 

「あまり考え込まないようにな、ため込むと身体に異常をきたすぞ」

 俺の考えていることがわかっている? いやそんなはずはない、人の心なんてそうそう簡単に読めるはずがない。ただ単に表情などを見てそう感じたんだろう。

「大丈夫だ」

 菊池が手を伸ばしてきたので身構えたが、その慈愛に満ちた表情を見てなんとなく力を緩めた。俺の両手をつかみ、優しく包み込む。その手は俺の疲れた心を癒すかのような温かさだった。

 その手をゆっくりと離し、俺の目を見据えにっこりほほ笑む。そして一言またなといって教室の隅で何かの話に花を咲かせている女子グループのもとへ行く。

「なんだったんだ……?」




 入浴をすませ部屋着に着替えたあと、椅子に腰かける。目の前の机に置かれている例の接続書――名前がわからないので世界と世界をつなぐ本らしいのでそう呼ぶことにした――を眺める。しかしそれは昨晩と全く見た目が違っていた。ほのかに光っているのだ。しかし本全体が光っているわけでなく限定されたページだけが光っていた。

 理由を探してみようと思ってみたがそもそも自身の所有物ではないので何が起きているのかもわからない。ましてや接続書と出会ってからまだ二日。接続書すら理解していないのにどうやって探れというのだろうか。

 しばらく接続書を見つめる時間が続く。悩んでいても仕方ないがやはり気にはなってしまう。ふと気になって時計を見ると静かに午後11時をさしていた。それをみて軽くため息をつく。

「入っていい?」

 控えめなノックの音がしたあと、母さんの声が聞こえてくる。少し躊躇ったがいいよ、と返事をすると静かに母さんはドアを開き椅子に座っている俺に近寄ってくる。その目線はもちろん卓上にある接続書に向いていた。

「勉強してるのかと思ったんだけどそれ、どうしたの?」

 やめてくれ、そんな顔でこっちを見ないでくれ。こっちが恥ずかしい。

「……なんでもない」

 こんな返事を俺が悩んでいると感じたのか母さんはなにかを言おうとしていた。

「……あなたが何を思ってるかはわからないけど進む道は一つしかないのよ。あなたは正人、正しい人。進むべき道は自分が正しいと、正義と思った方。ただそれだけよ」

 あれから半年たっていまだにその溝は一方的に埋まらないが、こういう時には母さんが頼りに思えてくる。しかし俺には母さんの選んだ道が正しいとは思えない。なぜあんなにも早く、そしてよりにもよってなぜあんな男と。あの男は何か裏がありそうで少し恐ろしい。

「……ありがとう」

「えーと……とりあえず、自分を信じて頑張りなさい――」

 おやすみ、と一言いって母さんは部屋を出て行った。

 正しい事、正義、か……

 もし原因がわかったとして俺はどうするのだろうか。どう進んだら正解なのか、それは誰にもわからない。いや、それはむしろ俺だけがわかることなのかもしれない。ただ目をそらして逃げるよりは、それに立ち向かう方がかっこいいと! 楽しいと! 正しいと! 俺は思う!


 

次回もなるだけ早く……

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