謎の本
実は一か月前に書き終わってました
「これなんだけどさ」
「なにこれ」
今日はその茶色がかった艶やかな黒髪をツインテールにしている菊池が図書館の奥から古い魔導書のようなものを持ち寄ってくる。見た目紙が黄ばんでいたり虫に食われていたりしていそうだ、気持ち悪い。
「わからない。表紙にもなんかわからない文字が書いてあるし……」
「かしてみそ」
そういって手の中の分厚い本を取り上げる。ページを開くと実際は保存状態がとてもよかったらしく想像と全く違い普通に読めるものだった。しかしそれでも読めなかった。そこに連なるのは見たこともない謎の文字・数列だった。改めて表紙を眺めてみる。
「……overworld?」
「え?」
表紙をじっくりと眺める目の前に菊池が顔を寄せてくる。うっ、と言葉に詰まりながらも
「いや、そう読めた気がした」
と返事をする。
「少年よ、それは本当なのか」
いつものがきた。菊池は変な性格もとい癖がある。よく小説などの登場人物に自分の芯から根までなりきってしまうのだ。そのため俺は彼女の本質というものを見たことがない。会うたび会話するたび性格が変わるので困惑することが多々ある。こんな感じでは友達がいないんじゃないかという心配があるが、友達の間ではそれが面白いと逆に人気らしい。
だが正直言って俺は好きではない。もともと人間不信ではあるのだが彼女はどんなキャラを演じていても俺の領域、心という名の聖域にずけずけと土足で歩み寄ってくるのだ。というか彼女だけは俺を化け物扱いしていない気がする。別にそれはどうでもいいのだ。俺はただそれに気を許し、仲良くなったとしても裏切られたらという不安が大きい。ただ人間不信なだけで人間が嫌いなわけではないので普通に会話ぐらいはできる。しかしできれば離れていってほしい。
「何キャラだよそれ」
「これからはこれでいこうと思う」
「何を唐突に……」
「まぁよいではないか。それで中には何が書いてあるのだ? 私にはよく読めなかったのだが」
「へいへい」
再び本の中へと目を向ける。何やら四ページごとに区切られており大きな見出しが書いてある。そしてそれぞれの区切りの始めのページには世界地図らしきものが描かれていた。しかしそれは地球のものではなく、見たこともない大陸ばかりが連なっていた。もしかしたらこれはただの行き過ぎた中二病患者の遊びかもしれない。
適当に開いたページの見出しを読む。
「なんだこれ、地球並行世界第五群?」
「ほう面白そうだな少年よ。それで他にわかることは?」
「あんまり面白そうなものじゃないことだな」
「ふむ面白いものではなかったか」
腕を組み軽く顎をさする姿はさながら頭のいいお姉さんのようだ。髪型が少し幼いが。そんな彼女はこの分厚い本を指さし問う。
「そしてそれはどうするのか? 見たところこの図書館のものではないようだが」
やはりただの中二病患者の忘れ物なのだろうか。この図書館の書籍はすべてコンピュータで管理されており、本にはそれぞれバーコードが貼りつけてある。だがこの魔導書のような分厚い本にはそういう類のものは全くついていなかった。
「つまり勝手に持って帰ってもいいわけだな。とりあえず調べてみるよ」
「そうかあまり夜更かししないことだぞ少年、夜更かしは健康に悪い」
と適当に見てみるつもりだった俺に釘をさす。
「なんで夜更かし前提なんだよ。それじゃ」
「また会おうぞ」
いや明日も学校ですが……
次回もできるだけ早く……
変更点
人間不信
地味に難しいですね
人間不信の描写