表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エヴェレットの鍵  作者: 茶竹抹茶竹
【2章・冷たい部屋】
9/145

【2ー2】

【2ー2】


『だから、君のその力は希望となる。それは鍵だ、君自身の未来のための。目の前の確定した未来ではなく新たな可能性を切り開くための』



 夢を見ていた気がした。千果が目を覚ましたのは清潔なベットの上で、一瞬自分の状況が把握出来なかった。

 積み上げるように昨日の記憶をゆっくりと思い起こす。


「葵ちゃん……?」


 由梨乃という人に突然襲われて、葵ちゃんが怪我をして、鍵が現れて。それからどうしたんだっけ。

 はるかという人に連れられてこの場所まで連れてこられて。


「おはようございます、目が覚めましたか」


 部屋のドアが開いてはるかが顔を覗かせた。千果は咄嗟に身を強ばらせる。つい彼女の手に目をやった。銃は持っていない。


「ここを出て左に洗面所があります。済んだらその奥にある部屋に来ていただけますか。それとそこの袋に入っているものは自由に使って貰って構いませんから」

「えっと、はい」


 千果の返事を聞いてはるかはドアを閉めた。他に誰も居ない部屋で千果はぼんやりと周囲を見回す。手狭な寝室だった。ホテルかと思ったがそうではなさそうだった。ベットと小さな机が置いてあるだけだ。

 机の上に置いてある紙袋の中身を覗く。どちらも未開封の下着とワンピースが入っていた。少し考えてから下着だけ頂戴して着替える。ワンピースはそのまま残しておいた。

 服を着直すと部屋を出る。出ると直ぐに洗面台があった。蛇口が四つ横並びになっている横長のステンレスの洗面台を見て千果はこの場所は何処なのかとまた考える。

 学校か何かだろうか。冷たい水道水を持ち上げて顔にぶつける。顔を洗いながら昨日のことを思い出す。

 小型のバンに乗せられて途中から目隠しされ何処に連れてこられたのかいまいち定かではないままあの部屋に置き去りにされた。確かそのまま寝てしまったのだ。

 顔を上げる。鏡に映った自分の顔を見てみる。

 いつも不安そうな自分の顔はいつも以上に頼りなかった。


「あんた新入り?」


 鏡越しに後ろに誰か居ることに千果は気が付いた。その声の主の方に向かって振り返る。ショートヘアーの女の子だった。

 中学生位だろうか。自分より年上に見えると千果は判断した。


「新入り?」

「捨てられてきたんじゃないの? あんた。その年でってのは珍しいかもだけど」


 部屋に置き去りにされたのは捨てられたというのに当てはまるのだろうか。


「あの、よく分からないんです。なんだか説明もないうちに此処に連れてこられて。まず何処なんですか、ここ」

「いわゆる児童養護施設ってやつ」

「児童養護施設?」

「孤児院とでも言った方が分かりやすいかも 。違うんだけど」


 何でまたそんな所に、と千果は思う。この子もここで保護されている子ということか。


「あたしは紗英さえ。よろしく新入り」

「えっと千果です、私は雲雀丘千果」

「ちぃちゃん、起きたんだ」


 後ろから別の聞き覚えのある声がした。振り返ると葵が居た。その姿に千果は胸が詰まって泣きそうになる。思わず千果は葵に飛びついた。


「葵ちゃん!」

「おっと」

「本当に心配したんだよ! 葵ちゃんが死んじゃうんじゃないかって!」

「死なないってばー。それよりはるか達が待ってるから行こうか」


 葵が千果の肩に手を置くと千果の体を反転させた。そして千果の背を押す。蚊帳の外の紗英に向かって千果は小さく手を振った。


「紗英さん、またね」


 紗英から離れると葵は千果の耳元で声を潜める。


「ちぃちゃん。あんまり、ここの子達と関わらないでね」

「え? ねぇ葵ちゃん、ここって児童養護施設なの?」

「そうだよ、あの子から聞いた?」

「うん。なんで私はここに?」

「ここの経営者が、うちらの協力者なんだよ」


 話が呑み込めず千果は首を傾げる。葵がそんな千果を見て表情を変えた。


「うちらは反政府組織、革新派の魔法使いだよ。うちもはるかも」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ