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エヴェレットの鍵  作者: 茶竹抹茶竹
【1章・anesthesia】
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【1ー2】

【1-2】


 由梨乃が鎌を振り下ろした。咄嗟に千果は叫ぶ。


「やめて!」


 突然のその声に由梨乃の動きが一瞬止まった。はるかがその隙をついて銃弾をぶっ放す。狙いを定めず放った弾丸は由梨乃を掠め空へ飛んだ。掠めた肌から花びらのように赤い血飛沫が散る。

 銃弾が掠めて由梨乃は激昂する。


「ふざけないでよ、あんたさぁ!」


 由梨乃が叫ぶと同時に千果と由梨乃を遮るようにして膨大な量の光の奔流が頭上から降り注いだ。一本の柱の如く、光が大地を抉りながら薙払うように光が地を走った。光が駆け抜け衝撃でアスファルト舗装が舞い上がる瓦礫と変わる。


「魔力砲撃!?」


 由梨乃に向かって二発目の光の柱が降りかかる。その場から由梨乃は飛び退いた。由梨乃のいた場所が光によって抉られる。由梨乃は飛び退き着地すると、咄嗟に周囲に目を配らす。上だと気付いて由梨乃は空に顔を上げた。


「由梨乃ぉ!」


 由梨乃の頭上へ一人の少女が飛びかかった。空中から落下しながら少女が一振りの剣を振り下ろす。由梨乃が身を引いてその一撃を去なすと鎌で切り返した。少女は半歩分を一気に踏み込み由梨乃の懐へ飛び込み剣を叩きつける。鎌の柄で受け止めた由梨乃と少女が拮抗する。


 はるかがそれを見て狙撃銃を拾い上げると、懐から何か球体状の物を取り出した。


「葵!」


 はるかがそう叫ぶと同時にそれを拮抗した二人に向かって放り投げる。それを見て少女は由梨乃から飛び退くと剣を振り下ろす要領でぶん投げた。由梨乃が左手を自身の前に向ける。由梨乃の目の前の空間に光線で描かれた幾何学模様の紋章が出現した。それは空間中に固定されると少女がぶん投げた剣を楯の様に受け止める。

 はるかが放り投げた手のひら大の球体が炸裂した。轟音が拡散し周囲を真っ白に染め上げるほどの光量が溢れ出る。


閃光手榴弾スタングレネード!?」


 由梨乃が閃光手榴弾で目を潰され動きが止まる。はるかは由梨乃に背を向けて、うずくまる千果の手を取ると少女と共に走り出した。無理矢理引っ張られて千果はよろめく。よろめいた千果を少女が受け止めた。


「大丈夫、ちぃちゃん?」


 少女の声に聞き覚えがあって。千果はそのあり得ない可能性を口にする。


「葵……?」


 振り向いて見えたのは葵だった。さっき別れたはずの友人がそこに居て千果は驚きのあまり言葉を無くす。様々な疑問が頭の中で回り出す。

 年不相応な程に小柄な千果を背の高い葵は葵後ろから抱き抱える。突然後ろから抱き抱えられて千果は身を強ばらさせた。


「ごめん目瞑ってて」

「え?」


 葵が思い切り地面を蹴った。千果を抱えたまま三メートルほど大きく跳んだ。弧の頂点を越えて落下し始めると、ぐん、と大きく真上に引っ張られるように更に上昇する。


「え、ちょっ、と……飛んでる!?」


 一気に急上昇して地面は千果の遙か眼下のものとなっていた。混乱して暴れる千果を更に強く葵は抱きしめたまま加速する。

 足がどこにも着かない感覚が脳を浮かす。


「ちぃちゃん、ちょっと黙ってて」

「で、でも葵ちゃん! 足が、足が浮いて」

「はるか来るよ!」


 葵が叫んだ。一線の流星のように閃光がはるかを突き上げる。それが由梨乃の鎌の軌跡だと千果が気付いた時には既に由梨乃は頭上をとっていた。擦れ違いざまにはるかを切りつけた由梨乃が宙で体勢を整え直すと再び勢いよく加速する。


「3.01B-01Fディフェンスシールドデュアルストラクチャ」


 はるかが目の前の空間に光線を投影しその光線が複雑に重なり合った幾何学模様を描き出す。その光線で描かれた幾何学模様が由梨乃の振り下ろした鎌の一撃を受け止めた。


「ぬるいよねぇ!」


 由梨乃が左手を鎌の柄から離すと身体を少し捻り構えた。左手の掌に光が収束し渦を巻く球体に変わる。それをはるかの張った盾に叩きつけた。

 爆発が起きる。膨大な光が急速に拡散してはるかを吹き飛ばす。爆音が鼓膜に突き刺さり、衝撃波が肌を撫でて一瞬、感覚を失う。


「はるか!」


 由梨乃が空を蹴ると葵の目の前まで跳んだ。葵が咄嗟に左手を目の前に突き出し幾何学模様を描き出す。それは楯となり由梨乃を拒んだ。


「だからぁ、ぬるいってさぁ!」


 由梨乃が楯に向かって左手を叩きつける。楯を通り越して衝撃波が葵にぶつかる。沈み込むような重みが葵が抱き締めた千果にのめり込む。


「ぁぁぁっ!」


 千果の遠退いていく意識の中で感じたのは落下していく事だけだった。




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