私には、これ以上……。
私には、これ以上の高望みなどない。
考えるまでもないのだ。
生きるに過ぎる物があふれている、今、 ただ一滴の水が飲めなくなるのを恐れるだけだ。
私は、これ以上、何も欲しはしない。
思案するまでもないのだ。
便利に過ぎるものが氾濫している、今、ただ一指すら動かさなくなるのを恐れるだけだ。
私には何もない。
雨露をしのげる屋根すらない。
私には何もない。
ながれた涙も、痛めた心も、すり減った想いも、ただ海水の冷たさに慄くのみだ。
私には、これ以上の進歩はいらない。
何も慌てることはないのだ。
先端技術に心が絡め取られている、今、ただ人が住める街が消えるのを恐れるだけだ。
私は、これ以上、迷路を歩こうとは思わない。
躊躇うことはないのだ。
根拠のない情報に道を誤る人がいる、今、ただ優しさが崩れ去るのを恐れるだけだ。
私には、これ以上……。
何を欲するものがあろう。
私に、これ以上……。
何を与えてくれると言うのだ。
私たちは、なにかを忘れてはいないだろうか? そして、急ぎ過ぎてはいないだろうか?
読んでいただいて有難うございます。