表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉 × 弟  作者:
8/16

第8話  恋人同士

 翌朝、目が覚めると青空が目に写った。沙耶は眠い目をこすりながら、なぜ自分がここにいるのか思い出す。ベランダで寝ている理由を――

「・・・・・・」

 隣では横になって眠っている瞬の姿がある。

 そうだ、昨夜はここで一緒に花火を見ていたんだ。お互いの気持ちを確認して、それから、それから―――・・・覚えてない。まさか何かやってしまったかと必死で記憶を辿るが、何も思い出せなかった。

 と、そのとき、小さく寝息をたてていた瞬が目を覚ました。寝ぼけた目で辺りを見渡し、沙耶と目が合うと、

「わぁっ!」

 驚いて飛びのいた。失礼な反応だと沙耶は思う。

「おはよう、瞬君」

「おはよー。びっくりした・・・すごい夢みたー」

「どんなの?」

「内緒。でもいい夢だった・・・」

 意味深ににこーっと笑い、瞬は立ち上がる。沙耶は慌てて昨日のことについて訊いてみた。

「瞬君!昨日私何もしなかったよね?」

「えっ・・・・えー!」

「なに!?」

「昨日のことなかったことにすんの!?俺のこと好きって言ってくれたじゃん!」

「や、そうじゃなくて・・・その後」

 直で言われると照れくさくなった。沙耶は俯きながらぼそぼそと答える。

 その一方で、絶望的な顔をしていた瞬は急に恥ずかしそうになる。

「・・・・キスしたこと?」

「そっその後!私何もしてないよね!?」

「後って・・・姉ちゃんすぐ寝ちゃったじゃん」

「ね、寝た?」

 意外な返事に沙耶は固まる。

「そうだよー。花火が終わって姉ちゃんの方見たら寝てんの。起こそうかとも思ってたけど、そのうち俺も眠たくなってきて・・・で、朝までぐっすり」

「そうだったんだ・・・うわーごめんね」

「いえいえ。でも、次に俺の目の前で寝たら襲っちゃうからね」

「!」

 顔をくしゃっとさせて笑う瞬の言葉に沙耶は顔を真っ赤にさせた。


            ▽


 その日は新幹線と電車を乗り継いで家まで帰ることになっている。2人は荷物をまとめて、別荘内に忘れ物がないことを確認してから家を出る。

 家に帰るまでは2人は恋人同士の気分でいられた。それがわかっているから、なんとなく寂しかった。

「家に帰る頃は6時過ぎかなー」

 瞬が時刻表を見て呟く。昨日までのハイテンションが今日はもうない。お互いにわかっているのだ。この関係が他の誰にも知られてはいけないってことくらい。

『法律上では、血の繋がらない姉弟だって結婚できるのに』

 花火を見ているときに瞬が呟いた。気になって調べたらしい。

 だけど、偏見とかがあるのだろう。なによりも、沙耶たちによって両親が傷つくところなんて見たくなかった。

 それでも・・・それでも。

 沙耶は瞬の手をぎゅっと握った。

「行こう、瞬君」

 今だけは楽しく過ごしたかった。せめて手を繋いで歩いていても、誰からも気にされない場所だけでも・・・



「なんか新鮮だ」

「え?何が?」

 在来線に乗り換えた沙耶の隣で足を抱えて座り込む瞬は、照れくさそうに何かを言おうとしている。家を出るとき、沙耶から手を繋いだことが嬉しかったらしく、急激に上機嫌になった。なんというか、単純な男だ。

「だって姉ちゃん学校じゃずーっと俺に対して怒ってない?だから、今こうして手繋いでるのが不思議だなーって思った」

「それは怒られるようなことをしてるからじゃん。廊下走んないでよ。危ないから」

「走ったら構ってくれるじゃん」

「あんた・・・わざとやってたの?」

 そうだとしたらとんだ策士だ。沙耶が怒りで震えていると、瞬がにーっと笑って誤魔化す。いつもこの笑顔にやられてしまう。

「次走ったら絶交ね」

「絶交・・・!?なんで!?」

 瞬が慌てて立ち上がったときだ。バッグから1冊の雑誌が落ちた。それは沙耶にとっても見覚えがある『Men's モテ期』だ。この旅行にまで持って来たのだろうか。

 すばやい動作でそれを拾い上げる瞬。しかしもう遅い。

「・・・・・見た?」

「うん」

 あっさりと頷くと、瞬は恥ずかしそうに顔を赤くさせる。

「・・・ほんとはね、ここに書いてある『花火大会で告白!』っていうところを参考にしてもう1回告ろうと思ってたんだけど・・・無理だった。手繋いだことでいっぱいいっぱいだった」

 沙耶はその雑誌を見てみた。ラインナップは海での告白の仕方だったが、瞬は真ん中辺りの花火大会の特集のページの端を折ってある。

 ふと、沙耶はあることを思い出した。

「地元でも花火あったのに・・・こっちでよかったの?」

「いろいろ考えたんだけど、こっちのほうが姉ちゃんと2人になりやすかったから」

 その言葉に、沙耶はなんでもないことのように頷く。内心では恥ずかし過ぎたが。

 それにしてもこの雑誌・・・。歯の浮くようなセリフが平気で書いてあって、見ている沙耶のほうが恥ずかしくなってきた。こんな立派な言葉じゃなくて、瞬の言葉だけで十分嬉しいのに。

 心の中で小さく笑った。


            ▽


 地元の駅に着いたのは午後6時頃。

 並んで歩くときは2人で手を繋いでいたが、地元ということもあって沙耶は人目を気にして手を離そうとした。しかし、逆に瞬はぎゅっと力を込めて離そうとしない。

「瞬君」

「もうちょっとだけ」

 と、そのときだ。視界の隅に見知った人物が入ってきた。男女数名の団体――その中にアコという少女がいることに気づく。

「!」

 彼らが気づく前に、強引に手を振りほどく。それに驚く瞬は、少し遅れて自分の友人たちの存在に気がついた。

「あっ!瞬だー!!」

「みんな!何してんの?」

 瞬が友人に近寄っていく。沙耶は少し離れた所で待つことにした。久しぶりに会ったので少し時間がかかるだろう。



「あの・・・秋本先輩」

 ふとかわいらしい声で沙耶は我に返る。気がつくと、アコという少女が恥ずかしそうに立っていた。沙耶もなぜか緊張した。

「私、瞬君と同じクラスの清水っていいます。あの・・・突然ですが、私瞬君のことが好きで・・・」

「え・・・・あの子けっこう馬鹿なのに?」

 我ながら姉のような返し方ができたと思う。

「そこがいいんですよ!瞬君が笑うと、こっちまで楽しくなるんです!」

 彼女は力説する。そして、彼女の言葉は沙耶にもよくわかる。

「他のみんなには恥ずかしくて言ってないんです!先輩は生徒会長だし、お姉さんだからなんか心強くって・・・・・あの、お願いがあるんです!」

「お願い?」

「8月31日に瞬君と遊びに行きたいんですけど、協力してくれませんか?」

 瞬の誕生日だ――沙耶には断る理由が見つからなかった。


            ▽


 少し時間は(さかのぼ)る。

 沙耶と瞬が地元の駅に着いて手を繋ぎ、急いで離したところを見ていた人物がいた。

「あいつ―――」

 知らないところで世界は動く・・・

文中にも書きましたが

血の繋がらない兄妹の結婚はできるそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ