街へ
街へは徒歩20分程で着いた。道中は禿げた草むらが道代わりになっていたり、看板が案内してくれたのもあって、特に迷うことなく一直線で着いた。肉体の記憶にあった魔物などは特に見なかった。恐らく、定期的に掃討されているのだろう。
街は見る限りかなり広く、遠くまで建物が見えた。如何にもな西洋風の建物と石造りの道は俺からすれば観光地にしか見えないが、周りの人や若者のテンションの落ち着きようを見るに、住宅街なのだろう。あちらこちらで市場で果物や野菜を売っている。幸い、肉体の記憶によってこの世界独特の文字の読み書きが可能であった。
しばらく街を歩き回っていると、俺が希望的観測を持ちながら探していたものがあった。
古本屋。文字通り、様々な本を取り扱っている店だ。肉体の記憶があれど、俺は村の周りのことと、魔物と魔法の存在という知ってて当たり前のことことしか知らない。いわば三歳児と等しい知識量であり、親に色々と質問攻めする時期だ。しかし子供が親に聞くのは調べる術と文字の読み書きが不安定であること。言葉を説明する言葉が分からないからだ。
もちろん俺はその全てを知っている。言葉の意味は固有名詞以外なら基本大丈夫なはずだ。
一先ず俺は、タイトルが興味深い本を色々と手に取った。歴史書。哲学書。教育本。学者の本。片っ端から取っていった。
金はある。というか、ロールは物欲がなく、あまりお金を使わない人間だったようだ。
本というのは知識の塊だ。著者の思想、記憶、人生、理論。その全てが載っている。今の無知な俺には新鮮さの塊で、最高の娯楽品だ。
中古ということもあり、比較的安価で俺は大量の本を買い漁った。
数分後、俺は後悔することになった。本が多すぎる。父親との鍛錬のお陰で重さ自体はどうってことはないのだが、目の前が見えない。片手で持つにはバランスが取れない。
浮遊魔法で運ぶことも考えたが、街の中での使用は安全のため許可がいるらしい。まぁそもそも、魔法の才能はあまりないので、この重さには耐えれないのだが。
この世界の人間は、生まれた時にどの才能に秀でているかが分かる。俺の場合は肉体が強い代わりに魔法の才能がない。兄の場合は、近接戦が得意ではない代わりに魔法の才能があった。
とはいえ、所詮平民だ。貴族には敵わない。この世界の貴族は才能に溢れていて、平民の天才は貴族の凡人と力が等しく、基本的に一人っ子か、腹違いが多い。同じ血の兄弟は才能が山分けされるからだ。だから間違って双子が出来たりすると、殺し合いが発生する。恐ろしい話だが、これは常識らしく、誰も何とも思っていない。俺もこの世界の常識にとやかく言うつもりもない。銃社会に銃の撤廃を求めるのと同じようなことだ。
そんな感じで気を逸らしていると、本のバランスが崩れて倒れた時。
「おっと」
俺よりも少し背の高い銀髪で短くはあるが、目にかからないくらいの前髪のある男に本を支えられた。
「大丈夫ですか? もの凄い本の数ですけど......よければ家まで運んでいきますよ?」
銀髪の男は丁寧な口調で俺の本を少しだけ持ってくれた
「いえ、大丈夫です。家もここからは少し遠い場所にありますので」
「馬車を手配するので距離は気にしないでください。家はどちらに?」
「そんな馬車なんて! お金も全然ありませんし......」
「お金は俺が出すので気にしないでください。ああそれと、自己紹介が遅れました。俺の名前はロイ・ゼルスティール。17歳です。お気軽にロイとお呼びください」
17歳。俺と同い年か。
「ああこれはご丁寧にどうも。俺はロール・テルマ。同じく17歳です。俺もロールと呼んでください。それと、同い年なのですから、そんなにかしこまらないでください」
それから俺はご厚意に甘えて馬車を手配してもらい、村まで送ってもらった。最初はお互い敬語ではあったが、本好きという共通点で俺たちは一気に仲良くなった。
「お前も剣を使うのか! 奇遇だな。俺も剣を使っているんだ。とはいえ、両手剣なんだがな」
「両手剣か~俺はそれを振り回せるほどの怪力がないからな~羨ましいよ」
「片手剣も片手剣で持ち方とか防御とか色々器用さがいるじゃないか。俺からしたらそっちの方が凄いと思うぞ。っと、着いたみたいだな。また街に着いたら会いに来てくれ。大体俺はこの場所辺りに居るから、気軽に探して話しかけてくれ」
そう言って、ロイがよく居る街の施設を箇条書きしたメモを渡し、その後手を差し出してきたので握り返した。
「ああ、必ず」
これが俺のこの世界に来て最初の友人、ロイ・ゼルスティールとの出会いであった。




