表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

お姉ちゃんなんだから

掲載日:2025/12/15



 我が家ではいつも5つ下の妹が私より優先されていた。

 妹が欲しがれば、私のお人形もドレスも(くつ)も妹の物になった。


 ドレスも靴もぶかぶかで持っていても無意味なのに。

 私がどんなに泣き叫んでも母親は私をかえりみなかった。



「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」


 彼女の口から出て来るのはいつもこの言葉。

 私に与えられるのは妹が欲しがらない古着のみ。


 父親は仕事で忙しく、姉妹どちらにも興味がなかった。



 本だけは取られなかったから誕生日のプレゼントはいつも本をねだる。

 物語の家族はみんな優しくて、自分の親がおかしいんじゃないかってちょっとずつ知恵も授けてくれたし。

 使用人からちゃんと世話されていたから生きてはいける。



 それでも家族の愛には()えた。

 助かったのは避暑(ひしょ)でおとずれる親戚の家では、私も妹と同じくらいにかわいがってもらえたこと。



 伯母(おば)様は子供が男の子しかいなかったから特に。

 同じお人形を二つ買ってくれたことにはすごく感謝している。


 ワンピースを買ってくれた時はとってもうれしかったのを覚えている。

 古着じゃない新品のワンピース!


 自宅に帰りしだいすぐ取られてしまうのは分かっていたけど、休暇中はずっと着ていたなぁ。

 




 そうして私は12歳になる。

 学院に通うための制服を注文したら、あんのじょう妹が欲しがってきたよ。



「お姉様これあたしにちょうだい」


「無理よ、これは学院に通うための服なんだから」



 さすがにこれをゆずるわけには行かないんだけど。



「じゃあ学院になんて行かなければいいのよぅ。今までみたいに家庭教師で十分でしょぉ」

 

 断ったら妹が暴論をはいてきた。


「はあ? あなたのために私の人生を棒にふれっているの」


「ママぁー お姉ちゃんがひどいー」


 妹が泣き出せばすぐに母親が飛んでくる。



「お姉ちゃんなんだから妹の望みはかなえてあげなさい! 元々学校に行きたいだなんてあなたの我がままなんだから!」



 脳内が真っ白になる。

 その瞬間、理解した。我が家で問題があるのは妹よりも親なのだと。


 そして私は母親に期待するのを止めた。





 伯母や祖父母に助けを求めることにしたのだ。

 手紙のやり取りを数度くり返し、祖父母が我が家を訪問する。



「せっかく勉学の機会があるのだ、学院には通わせなさい」


「だって下の子がお姉ちゃんと一緒じゃないと泣くのよ‥」



 お婆様はため息をつく。


「姉妹は平等にあつかいなさい」


「だってこの子はちっともかわいくないんだもの。わたくしのことをひどい目でにらむし」



(それはお母様が私を尊重しないからです!)


 お気に入りを奪われたら、にらむくらいはするよ普通。




 お爺様はしかめ面で私に向かい合う。


「ふう‥ 確かにもう手遅れのようだ。孫の申しこみを受けるとしよう」


「やったあ! お爺様大好き」


 私は祖父に飛びついた。

 そして大人たちが書類の手続きを済ませる。


 母親はかなり渋っていたが、父が了承したのでそこまでとどこおりもない。




 私は祖父母の養子になったのだ。

 学費は予定通り父が(はら)うようで、学院への通学は無事に決まる。


 入学式前に解決して、すっごいホッとしたよ。

 それまでの数日はこの家で世話になるけれど、学期中は寮に住むし休暇に戻るのは祖父母の屋敷。



 もうこの家族とかかわらなくて済むのだ。ぃやったぁー !

 私は嬉々として荷造りを進めた。

 制服ももちろん妹から取り返す。



「ママぁー、お姉ちゃんがあたしの服()ったぁ」


 さっそく妹は母に泣きついた。馬鹿め、その手はもう使えないのだよ。



「これは元々私の物です」


 私が反論すると、母はいつものように目をつり上げる。



「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」




 ふっふっふ‥ その瞬間を待っていたのだ!




「残念、もうお姉ちゃんじゃないもの」



 私は母親へ向かい、はっきり宣言した。


「私はお爺様の養子にしてもらったわ! だから分かる? 私があなたの()なのよ!」


「はあ? 何を言っているの?」


 母は混乱している。そりゃそうだろう。



「なんで伯母様の養女じゃないか不思議に思わなかった?」



 伯母様からも養子縁組のお話はいただいていた。伯母は裕福な女伯だ。

 家族から離れたいだけなら、伯母に引き取ってもらう手もあったのだ。

 それでもあえて引退している祖父母の(せき)に入ったのは理由がある。


 祖父母の娘になった場合、戸籍(こせき)上は私が末っ子。



 母にとって『妹』とは愛されて優しくされて姉より優遇されるべき存在のようだから、私はなってみたのだ。




 元母の、妹に。




「妹に逆らってはいけないのよね、お姉様?」



 ゆっくりほほえんで見せたら、女の顔から血の気が引いていく。

 ようやく理解したようだった。




 たかが戸籍上の話だが、それでも効果はあったみたい。



「お姉様、わたくしに新しい服を作っていただける?」


 制服以外の衣服が新調された。これでボロを着なくても済む。

 祖父母からお小遣いはもらってあるけど、学院に着いたら少なすぎる私物を買い足さなければいけない。

 ()が買ってくれるならそれで済ませたい。



 もちろん妹が欲しがっても断る。


「もうわたくしあなたの姉じゃないからねえ~」

「お姉ちゃんがひどい~ ママぁ」


 まだ7歳の幼女には理解できていなかったが、親に何回か泣きついた後は欲しがる回数が減った。



「早く渡しなさい!」

「妹の物を取り上げるだなんてひどいわ、 お姉様なんだから取り上げるのも我慢するのよね?」


 詰め寄る母に言い返す私と、ブルブル震え出す母親を見続ければ7歳児にも分かる部分は分かるのだ。



 私が妹の立場を振りかざすと、()は顔を青くして震え出すようになった。


 それまで散々「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と呪詛(じゅそ)のように(とな)え続けた結果だろうね。


 はね返った呪いのダメージはかなり大きかった。




 まあ学院に入ったらもう会わないから別にイジメないよ?





 その後、長期休暇で祖父母宅をおとずれた時、妹もいたのには(おどろ)いたわ。


 なんでも「あたしも養子になるぅー お姉ちゃんだけずるいー」とごねたらしい。


 元母親は半狂乱になって止めたそうだ。

 愛玩している娘を取られるのが嫌なのか、自分に妹がもう1人できるのが嫌なのかは分からない。


 父親は反対も賛成もしなかった。私の時と同じだ。


 そして祖父母は妹を引き取る。この両親にまともな子育ては無理だと判断して。




「いいんですか?」


 尋ねたら祖母が懺悔(ざんげ)する。


「あの子があんな風に育ったのはわたくしの責任ですから」



 後妻だった祖母は母を生むと溺愛したらしい。

 先妻の娘である伯母をないがしろにして。


「お姉ちゃんなのですから」


 母が伯母の持ち物を欲しがると、そう言って何回も取り上げたのだ。

 ただ、祖父は2人の娘どちらも愛していたことが伯母にも祖母にも救いになった。


 祖父は入り婿(むこ)。家の継承権を持っていたのは先妻の娘である伯母だけ。

 伯母は成人するとすぐ爵位を継ぎ、祖父母夫婦は領地に隠棲(いんせい)させられたようだ。


 会うのは避暑の時だけだったらしい。


「わたくしだけでしたら、領地からも追い出されていたでしょうね」


 知らなかった。




 祖父母も妹に甘かったが、私を押しのけることはしない。

 家庭教師も付けてくれたので、妹は実家にいた時よりはるかにまともな教育を受けている。



 我が家にはあと取りがいなくなってしまったが‥ その問題は父がなんとかするのだろう。

 私には興味がない。手に職付けるつもりだし。




 妹ばかりかわいがる毒母と子育てから目を(そむ)けた父。


 2人の手元には今、子供は1人も残っていない。




 親がヤバいパターンではどうしてもコメディになってくれません (-_-;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ