町に溶け込む祈り(2)
パンケーキをあっという間に平らげた碧は、皿を見つめながら小さく肩を揺らしていた。
(帽子の下で耳がぴょこぴょこ動いてるのはもう見慣れたけど、パーカーの中でしっぽまで暴れてるのは誤魔化しきれてない……)
玲亜は冷や汗を浮かべつつ、そっとテーブルの下からパーカーの裾を押さえる。
「碧、ちょっと……揺れすぎ、しっぽ……!」
「……玲亜」
「なに」
「まだ……食べられる」
「は?」
「ほら、メニューに“本日のデザート”ってある! ほらほら、チョコパフェ! クリームたっぷり!」
きらきらした目でメニューを差し出してくる碧。
その光景は、まるで子どもがおもちゃをねだっているみたいで、私は頭を抱えた。
「……碧。さっきパンケーキ全部食べたばっかりでしょ」
「でも玲亜と一緒に食べると、美味しさが倍増するんだよ!」
「いや、理屈おかしいから!」
財布をそっと開いてみる。
──薄い。昨日もお菓子で散財したばかりだ。
「……給料日前なんだけどなぁ……」
思わずぼやくと、碧がぱっと顔を近づけてきた。
「玲亜、お願い! ねっ! 甘いのちょっとだけ!」
耳がぴんと立って、帽子がずれそうになる。
完全に“おねだりモード”で、ずるいくらいに可愛い。
「……そんな顔してもダメ」
「えぇぇぇ……」
しゅんと耳が垂れ、肩を落とす碧。
その落ち込み方があまりに犬っぽくて、私は耐えきれずに吹き出してしまった。
「……はぁ。ほんと、ずるいなぁ」
「じゃあ、いいの!?」
「……一番小さいデザートだけだからね!」
「やったぁぁぁ!!」
耳と尻尾をぶんぶん揺らして喜ぶ碧を見て、店内の他の客がちらりとこちらを見た。
私は慌てて手で制したけれど、心の奥はなぜか温かかった。
(財布は軽くなるけど……こうして笑ってる顔を見たら、断れないよね)
デザートの到着を心待ちにする碧の隣で、私はため息をつきつつも、自然と笑みを浮かべていた。




