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もふっと護ります!  作者: あしゅ太郎


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35/69

繋いだ手と、覚悟の影(1)

 その日は、拝殿の奥にある古い棚を整理することになった。

 誠一さんに「ずっと放っておいたから、埃を払ってほしい」と頼まれたのだ。


 棚の引き戸を開けると、中には古びた木箱や巻物がいくつも並んでいる。

 どれも手入れが行き届いていないらしく、うっすらと埃をかぶっていた。


「……っと。思ったより高いな……」


 棚の一番上に置かれた木箱に手を伸ばすけれど、指先がかすかに触れるだけで全然届かない。

 背伸びしても、結果は同じ。


「うー……」


 脚立を探そうかと振り返った、その時。


「玲亜、どした?」


 背後から碧がひょいと覗き込んできた。

 気配も音もなく近づいてきたものだから、思わず肩がびくりと跳ねる。


「……届かないの。これ」


「あー、なるほど」


 碧はにかっと笑い、ひょいと手を伸ばして、私が苦戦していた木箱を軽々と取ってしまった。

 埃を払いながら、得意げにこちらへ差し出してくる。


「……ずるい」


「いや、普通だよ? 玲亜って、俺たちより全体的に小さいんだな」


「ちっ……小さいって言うな!」


「ほんとだって。ほら、手とか──」


 そう言って、碧が私の手を取った。

 突然のことで「えっ」と声が詰まる。


 彼は自分の掌を私の手に重ねて、しげしげと見比べるようにじっと見つめた。


「ほら、俺の方がひとまわり大きい」


「そ、そんなの……当たり前でしょ……!」


「でもさ、玲亜の手……あったかい」


「っ……!」


 その一言に、顔が一気に熱くなる。

 慌てて手を引こうとしたのに──


「……ん」


 碧が、逆にぎゅっと握ってきた。


「な……っ、碧!?」


「落ち着くな、これ。玲亜の手、小さくて柔らかい」


「ちょ……っ、もう、放して!」


「やだ」


「やだってなに!?」


 耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。

 なのに碧は、ただ無邪気に笑って手を握りしめてくる。


 手のひらから伝わる温もりが、胸の奥まで広がっていく。

 心臓が早鐘のように鳴っているのに、それを悟られたくなくて、余計に焦ってしまった。


「……玲亜、俺さ」


 急に、少し真面目な声になる。

 さっきまでの子犬みたいな笑顔じゃなく、まっすぐに私を見つめて。


「こうして触れると、“一緒に守ってる”って感じがするんだ」


「……っ」


 その言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。

 碧の手は大きくて、力強いのに、優しい。

 そして確かに──同じものを守りたいって願いが、伝わってくる気がした。


 照れと、嬉しさと、どうしようもない気持ちが混ざって、うまく返事ができなかった。

 でも、握られた手のひらをそっと握り返すことで、少しだけ気持ちを伝える。


「……玲亜?」


 驚いたように目を丸くした碧が、次の瞬間、ぱっと耳を揺らして笑った。


「……やっぱり、俺たちいいチームだな」


 手の温もりは、もう簡単には離せそうになかった。


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