表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふっと護ります!  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/69

神域の扉(3)

 真夏の昼下がり。

 アスファルトの熱気が足元からじんじん伝わってきて、息をするだけで汗がにじむ。


 そんな中、私は両手にアイスの袋をぶら下げて、蒼月神社の石段をのぼっていた。


「……溶ける前に届けないと」


 今日はお菓子じゃなくて、ソフトクリームを差し入れ。

 最近近所にできたアイス屋さんで、数量限定の夏フレーバーが出ていたのだ。



 境内に入ると、木陰のベンチに碧と宇汰がいた。

 碧は団扇をぱたぱた、宇汰はぐったり寝転んで、どちらも暑さにやられている。



「はい、これ。冷たいの持ってきた」


「おおっ!? ソフトクリーム!!」


「……わぁ……冷たいの……」



 袋を開けると、バニラ・チョコ・抹茶の3種類。

 私はチョコを手に取って、残りをふたりに差し出した。



「玲亜、神! いや、女神!!」


「兄さん、耳ピコピコさせすぎ……」



 碧が受け取ったのはバニラ。

 ぺろっとひと舐めして、目をきらきらさせる。


「ひゃあああ冷たっ! でもうまっ! ……やっぱ夏はこれだな!!」


「兄さん、声が境内中に響いてる……」



 宇汰は抹茶を選んで、ゆっくりひと口。


「……ん。甘すぎなくていい……。玲亜さん、センスいい」


「そ、そう? よかった」



 ふたりのリアクションに思わず笑ってしまう。

 それから三人並んで、木陰でソフトクリームを食べた。



「玲亜、口元にチョコついてる」


「えっ、どこ?」


「ここ、ここ」


 碧が身を乗り出して、指で私の口元を示す。

 距離が近すぎて、心臓が跳ねた。


「……じ、自分で拭けるから!」


「あはは、ごめん。なんか気になっちゃって」



 何気ない仕草。

 でも、だからこそ照れる。

 耳まで赤くなってないか不安になる。



「……兄さん、人間相手にそういうの、軽率だよ」


 宇汰がぼそっと口を挟む。


「え? なにが?」


「そうやって、距離詰めるの」


「だって玲亜はもう“仲間”だし」


「……ふぅん」



 宇汰の視線がちらりとこちらをかすめる。

 眠そうな顔なのに、どこか探るような目をしていて、思わずドキッとした。



「ねえ玲亜、次はどんなの持ってきてくれる?」


 碧が楽しそうにソフトクリームをぺろぺろ舐めながら尋ねてくる。


「……まだ食べ終わってないのに、次の話?」


「うん! 次はかき氷とか? スイカもいいな! 種飛ばし大会とか!」


「兄さんがスイカかぶりつくの想像したら……ぷっ」


「笑った!? 今宇汰笑ったよね!?」


「やだもう……ふたりして……」



 木陰に響く笑い声。

 夏の日差しは強いけど、この時間だけは涼しくて、心地よくて。



 ソフトクリームの冷たさよりも、

 碧の笑顔の方が、私の胸をずっとあったかくしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ