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カポエラ ログイン  作者: やしゅまる


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第9話「模擬戦! 舞VSレンジ」

数日後。

 舞たちは広大な草原フィールドに立っていた。ギルド同士の模擬戦――通称「フレンドリーウォーズ」の会場だ。観客モードで周囲には多くのプレイヤーが集まり、チャット欄には期待と冷やかしが飛び交っていた。


「まさかこんなに人が集まるとはな……」勇太が剣を肩に担ぎながらぼやく。

「そりゃそうだろ。舞ちゃんVS全国王者だよ? 話題にならないわけない!」千尋はテンション高くスマホを構え、すでに録画準備万端だ。


 舞は深呼吸した。緊張で指先が震える。だが足は自然にステップを刻み始めていた。

(大丈夫……リズムに乗れば、落ち着ける。私の戦い方はカポエラなんだから)


 向かい合うのは黒川レンジ率いる「ストライカーズ」。六人編成の格闘特化ギルドだ。その中央に立つレンジは、真紅の拳闘士アバター。佇まいだけで観客の空気を支配していた。


「約束通り来たな」レンジの低い声が響く。

「はい。……逃げません」舞はしっかり答えた。

 レンジの目が細くなり、「よし」と頷く。


「開始!」システムアナウンスが響いた瞬間、戦闘が始まった。



 序盤。勇太が突撃し、葵が盾で押し込む。沙羅が援護射撃を放ち、千尋が支援魔法を唱える。

 舞は横から滑り込み、流れるようなステップで敵格闘士を蹴り飛ばした。

「やあっ!」

 華やかな回し蹴りが炸裂し、観客から歓声が上がる。


 だが――。

「遅い」レンジの一言と同時に、視界が揺れた。

 次の瞬間、舞の足が空を切り、反撃の拳が腹にめり込む。

「ぐっ……!」舞のHPバーがごっそり削られた。


 レンジは表情一つ変えずに言い放つ。

「君の動きは美しい。だが、美しいだけじゃ勝てない」


 それからの展開は一方的だった。

 レンジはフェイントを重ね、攻撃を誘い、的確にカウンターを叩き込む。

 舞は回転し、踊るように避けようとするが――動きをすべて読まれていた。


「舞ちゃん、無理しちゃダメだよ!」千尋の声が飛ぶ。

「くそっ、あの人強すぎだ!」勇太も押し込まれていた。


 舞は唇を噛む。

(勝てない……。全部読まれてる。私なんて、ただの素人で……)

 胸に重いものがのしかかる。ステップのリズムが乱れ、動きが硬くなる。



 そのとき――。

「舞!」葵の声が飛んだ。

「昨日までだって、勝つためにやってたわけじゃないでしょ! 舞はいつも楽しく踊ってただけだよ!」


 はっとした。

(そうだ……私、勝つためじゃなくて……踊るために戦ってきたんだ)


 舞は深く息を吸い込む。

 ――タタン、タタン。ステップが軽やかに戻る。

 笑みさえ浮かべながら、体を流れる音楽に身を任せる。


 レンジの拳が迫る。だが舞は回転し、リズムのまま後ろへ跳ねる。

「っ……?」レンジの眉が動いた。

 次の瞬間、舞の蹴りが彼の肩をかすめ、バランスを崩させる。


 観客がざわつく。

「かわした!?」「今の見たか!?」


 舞は笑っていた。

「楽しい……! やっぱり戦うのって、踊るのって、楽しい!」



 激しい攻防が続く。

 レンジの攻撃はなお速く、鋭い。だが舞も止まらない。リズムを刻み、回避し、反撃し、仲間と連携する。


 そして時間切れのアナウンスが鳴り響いた。

 ――試合、引き分け。


「……ふぅ」舞は大きく息を吐いた。

 レンジは沈黙したまま、やがて笑みを浮かべた。

「悪くない。むしろ――まだ伸びるな」


「え……?」舞が目を瞬かせる。

「君の踊りは、戦いの形になっていく。……次は勝たせてもらう」


 そう言い残し、レンジはギルドを率いて去っていった。


 舞は膝に手をつき、胸の鼓動を感じた。

(負けなかった……いや、引き分け。でも……楽しかった!)


 ギルドの仲間たちが駆け寄る。

「舞、すげぇ! あの全国王者と互角とか!」勇太が叫び、紗羅も「よく粘った」と肩を叩いた。

 葵は涙目で「ほんとに踊ってたよ、舞!」と笑った。


 舞は汗を拭いながら、空を見上げた。

(これからも、私は踊る。戦いの中で、仲間と、ライバルと――リズムを刻んでいくんだ)


 新たなライバル。新たな高鳴り。

 舞の冒険は、ますます熱を帯びていく。


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