第8話「ライバル登場!」
翌日。舞はログインするや否や、ギルド拠点のログハウスに呼び出された。
「ちょっと舞ちゃん! すごいことになってるよ!」千尋が興奮気味にスマホを掲げる。
画面には――昨夜の火炎竜討伐の動画。再生数はすでに十万を超えていた。
「十万……!?」舞は思わず声を裏返した。「昨日のアレ、そんなに広まってるの!?」
「だってさ、舞ちゃんの蹴りがめっちゃ映えてたもん。ほらこの“回転からのフィニッシュ”とか!」
千尋がスロー再生すると、舞の後ろ回し蹴りが火花を散らし、竜の顎を跳ね上げる瞬間が大写しになる。
「……私、恥ずかしいんだけど」舞は頭を抱えた。
「いや、普通にかっこいいから!」勇太が大笑い。葵も「ほんとに主人公みたいだった」と苦笑いを浮かべる。
そのとき。ログハウスの扉がコンコンと叩かれた。
「訪問者……?」沙羅が警戒して弓に手をかける。
「やぁ」扉を開けて入ってきたのは、黒髪に赤いラインを入れたクールな青年アバター。
「初めまして。俺は黒川レンジ。舞さん、君に用がある」
「えっ、私!?」舞が慌てると、レンジは口角をわずかに上げた。
「昨日の動画、拝見したよ。――面白い戦い方だ。踊るように戦う格闘家なんて初めて見た」
「え、いや、私はただ……趣味でやってるだけで……」舞がしどろもどろに答えると、レンジの目が鋭く光る。
「だが、勝負は別だ。俺は武術格闘ゲームの全国大会優勝者。勝つために磨いた戦い方をしてきた。……だからこそ、君に挑戦する」
ギルド内が一気にざわめいた。
「全っ国大会!? そんな人がVRに!?」勇太が絶叫。
「つまり本物の強豪ってことか……」葵が眉を寄せる。
千尋は半分興奮、半分不安そうに舞を見た。「舞ちゃん、すごいよ! いきなりトップゲーマーに目をつけられるなんて!」
「すごいとか言わないでよぉぉ!」舞は頭を振ったが、心臓は高鳴っていた。
(全国優勝の人……そんな相手に私なんかが? でも……胸の奥が熱くなる。カポエラで、どこまで通じるか試したい……!)
レンジは静かに宣言する。
「数日後、ギルド同士の模擬戦で会おう。逃げてもいいが――逃げたら、君の踊りが“偶然の産物”だと証明するだけだ」
「……っ!」舞は思わず拳を握りしめた。
「わ、分かりました。受けます! でも私……勝ち負けより、楽しんで戦いますから!」
その言葉に、レンジは小さく笑った。「いい答えだ。――ではまた会おう」
去っていくレンジを見送りながら、ギルドメンバーは口々に騒ぐ。
「やばいな……本物のプロゲーマーがライバルになるとか」勇太が唸る。
「でも舞ならやれる。昨日だって竜を導いたじゃないか」葵が真剣に言った。
沙羅も頷き、「舞。勝負を楽しめ。結果はその先についてくる」と短く告げる。
「みんな……ありがとう」舞は胸に手を当てた。
恐怖よりも、ワクワクが大きくなる。
(私の戦い方……リズムに乗るカポエラ。どこまで通じるか、試してみたい!)
――こうして、舞の前に初めての“明確なライバル”が現れたのだった。




