第7話「炎の試練」
ログハウスの夜。千尋がモニターを覗き込みながら叫んだ。
「みんな! 次は“火山ダンジョン”に行こうぜ!」
「火山?」舞は思わず聞き返す。
「そうそう! 炎系素材がごっそり取れるんだ。ほら、この“紅蓮鉱石”とか、鍛冶師が泣いて喜ぶやつ!」
勇太が目を輝かせる。「そりゃ武器強化できるな!」
葵はちょっと顔をしかめた。「でも高難度ダンジョンだよ? 初心者の舞が大丈夫かな……」
「心配すんなって!」千尋が胸を叩く。「舞ちゃんの華麗なカポエラなら、炎トカゲくらいイチコロだろ?」
「そんな簡単に言わないでぇぇ!」舞は慌てて手を振ったが――心の奥では少しワクワクしていた。
◆
翌晩。ログインした舞たちは、真っ赤に染まる火山地帯へと転送された。
空気は揺らめき、岩肌からはマグマが滲み出している。
「うわぁ……暑そう……」舞のアバターも思わず汗を拭う仕草をした。
「暑さでスタミナ消耗が倍になる設定だ。気を付けろよ」沙羅が冷静に告げる。
道を進むと、炎をまとったトカゲ型モンスターが飛び出してきた。
「うわっ!」舞は反射的に身を翻す。
だが体は自然にリズムを刻んでいた。――ステップ、回転、蹴り。
「やあっ!」
回し蹴りがトカゲを吹き飛ばし、溶岩の中へ沈める。
「やっぱ舞すげぇ!」勇太が笑う。
「いやいやいや! 必死なんだから!」舞は必死に否定した。
次々と現れる炎トカゲやマグマゴーレム。
勇太が剣を振るい、葵が盾で耐え、沙羅が矢で援護する。
舞は熱気に息が上がりそうになりながらも、リズムを刻むことで呼吸を整えた。
(カポエラのリズム……これなら冷静を保てる!)
◆
そして、ダンジョン最奥。
溶岩の湖から、巨大な影が姿を現した。
――火炎竜の幼体。赤い鱗が輝き、口からは炎が漏れている。
「うわ……これ、幼体でこの迫力!?」舞が息をのむ。
「気合い入れろ! 全員で行くぞ!」勇太が剣を構えた。
竜の咆哮と共に、灼熱の炎が放たれる。
「舞、下がって!」葵が盾で受け止める。
「大丈夫!」舞は前へ躍り出た。
竜の爪が振り下ろされる瞬間、舞はステップでかわし、くるりと回転。
「はっ!」
蹴りが鱗に直撃し、竜の体勢が一瞬崩れる。
「今だ!」沙羅が矢を放ち、勇太の剣が火花を散らした。
だが竜は再び炎を吐き、熱気で全員が動きを止めかける。
「ぐっ……!」舞も汗で視界が滲む。
それでも耳に残るのは、自分のリズム。
(止まっちゃだめ……みんなを導くんだ!)
舞は大きく息を吸い、ステップを刻んだ。
右へ、左へ、軽やかに回り込む。
その動きが合図のように、仲間も立ち直る。
勇太が剣を振り、葵が盾で突進し、沙羅が矢を連射する。
「せいやぁぁぁっ!」
最後は舞の後ろ回し蹴りが竜の顎を跳ね上げ、同時に勇太の剣と沙羅の矢が突き刺さった。
炎が弾け、竜の巨体が崩れ落ちる。
◆
勝利のエフェクトが舞い上がる。
「やったぁぁ!」勇太が大声で叫んだ。
「ふぅ……死ぬかと思った……」葵が膝をつく。
沙羅は小さく頷き、「舞。今の導き、悪くなかった」と一言。
「え、導き……?」舞は目を瞬かせる。
「お前の動きに、私たちが自然と合わせた。偶然じゃない。……仲間を導くリズムだ」
その言葉に、舞は胸が熱くなった。
(私……ただの趣味のカポエラだったのに……仲間を導く力になれるんだ)
千尋がログを確認し、「討伐動画、もうすでにチャットで拡散されてるぞ!」と笑う。
「えぇぇ!? また私だけ目立ってる!?」舞は耳まで真っ赤になった。
だが、心の奥では誇らしかった。
リズムに乗って、仲間と共に勝利する。
それが、舞の戦い方なのだ。




