第6話「公式クエスト発令!」
その日の夜、舞がログインすると、ギルド拠点のログハウスに張り紙が出ていた。
【公式クエスト:商隊護衛任務 参加ギルド募集中】
金色の文字が揺らめき、参加すれば報酬アイテムやランキングポイントが得られるらしい。
「おっ、舞! 来たな!」勇太がテーブルを叩いて立ち上がる。
「これ見ろよ! いよいよ俺ら《ひまわり団》の公式デビューだ!」
「公式デビュー……ってアイドルじゃないんだから」舞は苦笑したが、胸の奥は高鳴っていた。
葵が説明を補う。「商隊をモンスターから守るクエストだよ。途中で他のギルドも同じ護衛任務を受けてて、競い合うんだって」
「競い合う……ってことは、実質ギルド同士の戦いになる可能性も?」沙羅が鋭く問いかける。
「そういうこと〜」千尋がにやりと笑った。「配信映えするじゃん! 舞ちゃん、また見せ場だよ!」
「やめてよ!」舞は真っ赤になって手を振った。
◆
いざ開始の時間。
草原の街道に、立派な馬車とNPCの商人たちが並んでいた。護衛対象だ。
舞たちは馬車の左右に陣取り、イベントが始まる。
最初に襲ってきたのは盗賊型モンスターの群れ。
「さあ行くぞ!」勇太が剣を振るい、葵が盾で前を固める。
舞は後方から迫る敵にくるりと回転蹴りを放つ。軽快なリズムで動くたびに盗賊が吹き飛び、商人NPCが「助かった!」と叫んだ。
「……やっぱり舞、戦いながら踊ってる」葵が思わず見とれる。
「いやいや、普通にカポエラやってるだけだから!」舞は必死に弁解した。
そんな中、戦闘が一段落した頃だった。
道の先に、黒い旗を掲げた一団が現れる。十数人のギルドメンバー。
先頭の大男が鼻で笑った。「おいおい、ここに例の“踊るチート”がいるって噂は本当か?」
「“踊る……チート”?」舞は目を丸くする。
「お前だよ!」男が指を突きつける。「あの動画でバズってただろうが! どうせ不正だろ、白状しろ!」
「待ってください!」葵が前に出る。「舞はそんなことしてません! ただの格闘好きで――」
「ほう、口で言うなら証明してみせろ」
その瞬間、黒旗のギルド――《トロール団》が剣を抜いた。
◆
商隊護衛の任務は続いている。敵ギルドを退けつつ、馬車を守らなければならない。
「ちょっ……二正面作戦!?」舞が焦る。
「上等だ!」勇太が剣を構える。「相手してやるぜ!」
「動画のネタいただきます!」千尋はすでに録画を開始していた。
戦いは激しかった。
《トロール団》は数で押し、舞たちを分断しようとする。
舞は敵の斧をかわしながら、反動を利用して回し蹴りを放つ。
「せいやっ!」
蹴りの弧が三人まとめて吹き飛ばすと、周囲から「チートだ!」という怒号が飛んだ。
「違うってばぁぁ!」舞は必死に叫ぶが、体は自然とリズムを刻んでしまう。
その動きに合わせ、沙羅の矢が次々と敵を射抜き、勇太が剣で流れを繋ぐ。
葵は盾で商隊を守り抜き、「ここは通さない!」と声を張り上げた。
仲間の声が舞の背中を押す。
――踊るように戦え。それが舞の強さだ。
最後、舞の後ろ回し蹴りと沙羅の矢が同時に決まり、敵ギルドのリーダーが地に伏した。
◆
「……チッ、やるじゃねえか」大男は不満げにログアウトして消える。
残ったのは、無傷で進み続ける商隊の馬車。
「護衛任務、成功!」NPCが歓声を上げ、金貨が舞たちに配布された。
勇太は拳を突き上げ、「やったな! 初公式クエスト、勝利だ!」と叫ぶ。
千尋はすでに画面を確認し、「同接やばい! コメント欄も“踊る姫”って大盛り上がりだ!」と笑う。
「やめてよぉぉ!」舞は頭を抱えるが、心の奥では――熱く、誇らしいものが込み上げていた。
(私、ただのカポエラ好きなのに……でも、みんなと戦うの、こんなに楽しいんだ)
こうして、《ひまわり団》は初めての公式クエストを華々しく乗り切ったのだった。




