第5話「ひまわり団の休日」
翌日の夜。舞がログインすると、ギルド拠点のログハウスは、前夜の冒険とは打って変わってのんびりした空気に包まれていた。
暖炉の火が揺れ、テーブルの上には誰かが作った料理らしき皿が並んでいる。
「おー舞! 昨日の防具、試したか?」
勇太が豪快に手を振る。舞は顔を赤くしながら、しぶしぶメニューを開いた。
「えっと……この装備……」
画面が光り、次の瞬間、舞のアバターが踊り子風の軽装に変わった。胸元や足が大胆に開いたデザインに、彼女は耳まで真っ赤になる。
「ちょっ、これ……露出多すぎない!?」
「うおおお! やっぱ似合うじゃん!」勇太が鼻を押さえながら叫んだ。「お色気担当、決定だな!」
「決定しなくていい! てか鼻血出すなぁぁ!」
葵が盾で勇太の後頭部を軽くはたき、「舞をエロい目で見るな!」と叱る。
だが沙羅は腕を組んで静かに言った。「……似合ってる。動きやすそうだし、映える」
「沙羅ちゃんまでぇ!」舞は頭を抱えた。
◆
そのとき、千尋が得意げにノートPCを掲げた。
「はい注目〜! 昨日のダンジョン動画、僕が編集して“舞ちゃんMAD”にしたんだ!」
再生を押すと、映像の中で舞が影狼を蹴り飛ばし、くるくる回るシーンがリズムに合わせて繋がれていた。BGMは派手なEDM。
しかも最後には「舞、爆誕!」とテロップまで入っている。
「やめろぉぉ!」舞が飛びついて止めようとするが、千尋はひらりとかわす。
「遅い! もう投稿済み! ほら、再生数……一万突破!」
「ひゃぁぁぁ!」舞は床に転がりながら絶叫した。
「すごいね!」葵は純粋に喜び、勇太は「人気者だなぁ!」と笑い、沙羅は「やっぱり映える」と小さく頷いた。
(……どうしよう、どんどん有名になっちゃう……!)
◆
その後は、ギルドの面々でまったり過ごす時間となった。
勇太は料理スキルを習得しようと鍋をかき混ぜていたが――。
「ぎゃああああ! 爆発した!」
鍋の中で緑色の泡が膨れ上がり、拠点中に煙が充満した。
「何作ったのよ!」
「カレー……のはずだった……!」
舞と葵が慌てて窓を開け、千尋は「これ動画にしよう」とまた悪ノリ。
笑いと咳き込みの中、沙羅だけが窓辺に座り、舞に視線を向けた。
「舞。昨日の戦い、悪くなかった。だけど、もっと動きを活かせるはず」
「……動きを活かす?」
「舞は踊るように戦う。なら、流れを仲間に繋げることを意識するといい。昨日の矢と蹴りの連携、あれは偶然じゃなく必然にできる」
「……なるほど」
舞は目を瞬かせた。今まで「ただ必死に動いていただけ」と思っていたが、仲間と繋がれば戦い方はもっと広がるのだ。
(私、もっと……強くなりたい。仲間のために)
◆
やがて騒ぎが収まった頃、葵が皆を集めた。
「ねえ、次は公式クエストに挑戦しない?」
「公式クエスト?」舞が首を傾げる。
「うん。運営が配信するイベントで、ギルド単位で受けられるやつ。次は“護衛任務”なんだって」
千尋が目を輝かせる。「それ配信映えするぞ!」
「またそれか!」舞は即ツッコミを入れたが、心の奥ではワクワクが膨らんでいた。
暖炉の火がぱちぱちと音を立てる。昨日は「仲間と戦う楽しさ」を知った。
今日は「仲間と過ごす温かさ」を知った。
そして――次は「仲間と挑む新たな冒険」が待っている。
舞は小さく拳を握った。
(よし……がんばろう)
こうして《ひまわり団》は、新たな挑戦へ歩き出したのだった。




