第39話「決勝戦! ひまわり団VSストライカーズ」
――《天空アリーナ》。
無数の光が浮かび、青い空の中にステージが広がっていた。
地上からの距離、約三千メートル。風すら音楽のように流れる――この大会の最終決戦の舞台。
実況の声が響き渡る。
「さあ、ついに来ました! 《バトル・フェスティバル2026》決勝戦ッ! 対するは《ひまわり団》と《ストライカーズ》!!」
観客数は同接一千万を突破。コメント欄は世界各国の言葉で埋め尽くされていた。
――風間舞、構える。
その対面、黒川レンジ。
互いの視線が交わった瞬間、風が止まった。
「開戦!」
レンジが先に動いた。
地を蹴る音すら聞こえない速度。拳が閃光となって舞に迫る。
舞はスウェイでかわす――はずだった。だが、レンジの足がすでにそこにあった。
「読まれてる!?」
彼の拳が、まるで未来をなぞるように正確に襲う。
「勝つために“音”を消した構成だ」
レンジが低く呟く。
《ストライカーズ》の魔導士が場の効果を発動――《サイレント・フィールド》。
観客には音楽が流れているのに、プレイヤーたちの空間からはリズムが完全に消えた。
舞の“音の戦闘感覚”が奪われる。
「これじゃ……リズムが取れない!」
舞はステップを乱し、葵の盾がその前に滑り込む。
「舞、下がって!」
「葵っ、でも――!」
「いいから!」
葵の盾が輝き、連撃を防ぐ。だが、レンジのギルドの追撃が止まらない。
勇太の剣が砕け、沙羅の矢が空を切る。
千尋が呪文を唱えるも、魔力の共鳴が乱れて発動失敗。
――完全に流れを奪われた。
「どうした、《ひまわり団》! もうステップは踏めないのか!」
実況の声が響く。だが、舞の瞳は揺れていなかった。
――静寂の中。
彼女の胸の奥で、かすかな“音”が鳴る。
鼓動。呼吸。仲間たちの息づかい。
(……リズムは、音じゃない。心で感じるもの)
舞は深呼吸をして、拳を握った。
「みんな、聞いて――私のリズムに乗って!」
次の瞬間、舞の身体が光を放つ。
ステージ全体に金色の波紋が広がった。
《スキル発動:リズムリンク・クロス》
それは彼女だけの、未知のスキル。
音の代わりに“鼓動”と“感情”をリンクさせる。
敵味方問わず、全員の心が共鳴した。
「な、なんだこの感覚……!」
レンジが拳を止める。
心臓の鼓動が舞と同期する。
まるで、同じリズムを刻んでいるかのように。
「レンジくん……リズムって、共有できるんだよ」
舞が笑う。
その笑顔に、レンジの瞳がわずかに揺れた。
「……面白い。じゃあ、共鳴の中で勝負しようか」
ふたりが同時に踏み込んだ。
舞の回し蹴り。
レンジの正拳突き。
風が弾け、光が散る。
まるで空そのものが音を取り戻したように、アリーナが震えた。
「すげぇ……!」
勇太が息を呑み、葵が涙ぐむ。
沙羅が呟く。「……美しい」
千尋はカメラ越しに叫んだ。「神演出すぎて鳥肌ぁぁ!」
連撃が交差するたびに、二人の身体が光に包まれる。
互いの攻撃が読み合い、リズムが重なり、拳と足が“音楽”を奏でていく。
「舞っ!」
「レンジっ!」
最後の一撃。
回し蹴りと拳が、中央でぶつかった。
――ドンッ!
爆発的な光が広がり、画面が真っ白になる。
数秒後、審判AIの声が響いた。
『判定不能――両者、同時撃破。結果、引き分けとする』
静寂。
次の瞬間、世界中の歓声が爆発した。
コメント欄は「神試合」「リズムと拳の奇跡」で埋め尽くされる。
舞がゆっくりと目を開け、隣で倒れているレンジに手を伸ばした。
「ね、また一緒に戦お?」
レンジは少し驚いたように彼女を見つめ――そして笑った。
「ああ。次は――同じチームでな」
ふたりの手が、固く結ばれた。
空のアリーナに、太陽のような光が差し込む。
その中心で、《ひまわり団》と《ストライカーズ》の仲間たちが集まり、笑い合った。
――こうして、《バトル・フェスティバル2026》は歴史に残る“引き分けの決勝戦”として語り継がれることになる。




