第35話「波乱の二回戦! リズムVSロジック」
――《バトル・フェスティバル2026》、第2回戦。
ステージは冷たい光に包まれた円形アリーナ。
相手ギルドの名は《コード・ネメシス》。
全員がプロゲーマー出身、データとロジックで勝ち続ける分析型チームだ。
「彼らは戦闘中にリアルタイム解析を行う。心拍数、動き、攻撃パターン……すべて“数字”で読まれるぞ」
実況AIの説明が響く。
対する《ひまわり団》。
舞は軽くストレッチをしながら息を吐いた。
「つまり、ウチらの“ノリ”が完全に研究対象ってわけね」
隣で葵が笑って肩を叩く。「なら、いつもどおり楽しく踊るだけだよ!」
――カウントダウン、3、2、1。
開戦の合図と同時に、敵前衛が無駄のない動きで突っ込んでくる。
勇太が受け止めた瞬間、背後から魔法弾が正確に飛んだ。
「くっ! 合わせてきた!?」
千尋の防壁が弾け、沙羅の矢が空を切る。
舞がステップを踏む――だがその軌道にカウンターが刺さった。
「読まれてる……!? リズムが完全に先取りされてる!」
敵リーダーが無感情に言う。
「君たちのテンポは毎秒0.72の揺らぎ。次は右回転蹴りだ」
舞が息を呑んだ瞬間、まさにその右足が止められた。
「うそ……!」
リズムが崩れ、仲間たちも防戦一方。
その時、沙羅が矢を構えたまま静かに言う。
「舞。テンポ、ずらしてみて」
「え?」
「1拍……いや、半拍。ズラすの」
舞の脳裏に、カポエラの“変拍子”がよみがえる。
――ジンガは自由。リズムは裏でも刻める。
「……うん。やってみる!」
次の瞬間、舞のステップが変わった。
いつもの3拍子を、4拍+変則の“3+2+3”に分割。
それに合わせて、千尋の詠唱リズムがズレ、勇太の剣筋もわずかに外れる。
「解析不能、リズム崩壊……!?」
敵チームのHUDにノイズが走る。
AIが予測不能となり、最適解を導けなくなった。
舞は笑った。
「読まれないなら、読ませなきゃいい――ねっ!」
スピン、ステップ、フェイント。
音楽が乱れるように、舞の動きも自由に弾ける。
そのリズムに勇太と葵も乗り、チーム全体が“即興セッション”のように躍動した。
「《リズム・ブレイク・ジャム》――行くよ!」
舞が蹴り上げ、千尋の炎魔法がビートを刻む。
沙羅の矢がその爆発に乗り、勇太が一気に斬り抜ける。
轟音。光。
――《コード・ネメシス》、全滅。
審判AIの声が響く。
「勝者、《ひまわり団》!」
歓声が爆発した。
千尋が両手を挙げる。「テンポいじるとか、天才かよ舞ちゃん!」
沙羅が小さく微笑む。「……変拍子、クセになりそう」
葵が舞を抱きしめる。「やっぱり、舞のリズムは無敵だね!」
舞は少し赤面して笑う。
「うう……チート扱いされそう……」
その頃、観客席。
黒川レンジは腕を組み、画面をじっと見つめていた。
「リズムを壊して、またリズムを作る……」
彼の口元にわずかな笑みが浮かぶ。
《ひまわり団》は準々決勝進出。




