第34話「大会開幕! 波乱の初戦」
――《バトル・フェスティバル2026》。
世界最大級のVR格闘大会、その開幕を告げるファンファーレが鳴り響いた。
巨大なドーム型の会場。
現実と仮想が融合した光のステージには、各国のギルドが勢ぞろいしていた。
実況アナウンスが響く。
「続いて登場するのは、日本代表ギルド――《ひまわり団》!」
観客席から拍手と歓声が沸き起こる。
舞台中央、風間舞は深呼吸をひとつ。
「現実で……みんなと並んで戦うなんて、夢みたい……」
彼女の隣では、葵がにっこり笑って盾を構える。
「夢じゃないよ。だって、舞の“リズム”はもう世界に届いてるんだから!」
勇太が剣を抜き、千尋が魔法陣を展開。
沙羅は静かに弓を引き絞る。
――チーム《ひまわり団》、準備完了。
対するは海外ギルド《ナイトミラージュ》。
黒と銀の装備に身を包んだ4人が、無言で並ぶ。
動きはまるで機械のよう。完璧なフォーメーション、完全制御型AIの支援を受けた最強チームだ。
「人間らしさゼロね」沙羅が呟く。
千尋が苦笑い。「リズム皆無、完全オートマチック。舞ちゃんと真逆だね!」
勇太が剣を構え、気合を入れる。「だったらこっちは、“ノリ”で勝つしかねぇ!」
開始のカウントダウン――3、2、1。
爆音とともに試合開始。
ナイトミラージュの先制攻撃。光の槍が雨のように降り注ぎ、舞たちは一気に包囲される。
「くっ……速い!」葵が盾を構えるが、衝撃で後退。
勇太が突進するも、相手は正確にカウンターを合わせてくる。
動きに一切の乱れがない――まさに“機械”。
「ダメ……リズムが掴めない……!」
舞のカポエラが空を切る。相手のパターンが読めず、ステップが噛み合わない。
その時、葵の声が飛んだ。
「舞! 私たちのビートで作ろう!」
舞が目を見開く。
――そうだ、リズムは相手から奪われるものじゃない。自分たちで刻むものだ。
「《リズムリンク》――発動ッ!」
舞が叫ぶと、床に波紋のような光が広がる。
パーティの心拍、動き、呼吸――すべてが舞のリズムと共鳴していく。
勇太の剣がビートに乗る。
「ハッ! セイヤッ!」と一太刀ごとに音が重なり、攻撃が軽やかに加速する。
葵の盾がリズムに合わせて弾むように動き、仲間の攻撃を導く。
千尋の魔法が“ドラム”のように爆ぜ、沙羅の矢が“メロディ”のように響く。
舞は中心で踊るように戦った。
ジンガ――ステップ、キック、スピン。
それぞれが音楽の一拍となり、チーム全体を乗せていく。
「これが……私たちの戦い方っ!」
観客席がどよめく。
「なにあれ! 動きがシンクロしてる!」
「全員でリズム作ってるの!? 映像演出か!?」
ステージの光が明滅する。
《ナイトミラージュ》の完璧な動きが、わずかに乱れた。
リズムを乱され、AIが一瞬判断を誤る。
「今だ――勇太っ!」
「おうっ!」
勇太が剣を振り抜き、葵が盾で相手を弾き飛ばす。
その隙を突いて、舞が回転蹴りを放つ。
「リズム・ブレイク・コンボォォッ!!」
炸裂する光。
爆発的な一撃が敵チームを吹き飛ばした。
――勝負あり。
審判AIが勝利を告げると、会場が歓声で揺れた。
「勝った……!?」
「ひまわり団、初戦突破です!!!」
舞は仲間と顔を見合わせ、息を弾ませた。
「ふぅ……やっぱりリズムって、最強だね」
葵が笑う。「うん! チートじゃなくて、うちらの“ノリ”の勝利!」
その頃、観客席の片隅。
黒川レンジが腕を組み、静かに笑っていた。
「やっぱり、楽しそうだな……お前は」
光と音が交錯するステージの中央、舞は両手を広げる。
“踊る格闘家”――その名は、今、世界に刻まれようとしていた。




