第33話「コラボ練習会」
――《バトル・フェスティバル2026》開幕を一週間後に控えた夜。
公式イベント《コラボ練習会》のバーチャルステージには、無数のライトが瞬いていた。
「本日のスペシャルゲスト! 今話題の“踊る格闘家”こと、リズム・ブレイカーの風間舞、そして――ストライカーズ代表、黒川レンジ!!」
MCの声に合わせて、二つのアバターがスポットライトに包まれる。
観客のアバターたちが一斉にチャットを流した。
「来たああああ!」
「舞ちゃん本物!? 動きヤバい!」
「レンジの拳、また見られるとか神」
ステージの上、舞は軽く息を吸い込む。
身体が勝手に、カポエラのリズムを刻みはじめていた。
「レンジくん、緊張してる?」
「いや……お前が自由すぎて、逆に落ち着く」
短いやり取りに、観客が笑う。
けれど二人の瞳は真剣だった。
音楽が鳴り響く。
DJによるビートに合わせて、舞が最初のステップを踏む。
ジンガ、ジンガ――滑らかに左右へと揺れる。
レンジも続いて構えを取る。
無骨な拳法の構えだが、以前よりも柔らかく、リズムを意識した自然な動き。
――そして、敵が現れた。
運営が用意したホログラム型の中型ボス《シャドウ・オーガ》。
観客席からどよめきが起きる。
「では! 風間舞 × 黒川レンジの《デュオバトル・ショーケース》――スタート!」
掛け声と同時に、舞が跳んだ。
くるりと一回転、足を高く振り上げ――踵がオーガの顎を撃ち抜く!
華やかな一撃に、光のエフェクトが弾けた。
「リズム・ブレイク・キックッ!!」
舞の叫びと同時に、ステージが鮮やかに光る。
その隙を逃さず、レンジが前に出る。
拳が連撃を描く――だがそれは、単なる殴打ではなかった。
舞のリズムに合わせ、音楽の拍に沿って繰り出される“連打”。
「……テンポ、悪くないな」
「でしょ!? リズム感じて!」
二人の動きが完全に同期した瞬間、音楽のビートが一段階上がる。
観客チャットが一斉に沸騰する。
「動きシンクロしてる!? え、振付レベル!」
「これが格闘なのかダンスなのか分からんけど最高!」
「#リズム共鳴 トレンド入り確定!!」
舞がくるりと回転し、レンジの肩を軽く蹴って跳躍。
その反動で空中へと舞い上がり、両脚でスピンキック!
レンジが同時に下から昇竜のような拳を放つ――
ドォンッ!!
爆発のような衝撃。
二人の連撃が交わり、オーガが粉々に砕け散る。
光の欠片が降り注ぐ中、音楽がフェードアウト。
観客の拍手と歓声が、ステージを包んだ。
舞は息を整えながら、レンジの方を見た。
「ね、楽しかったでしょ?」
微笑むその顔は、勝負の余韻よりも“踊った満足感”に満ちていた。
レンジは少しだけ目を伏せ――そして口元を緩めた。
「……ああ。だが、次は舞と真剣勝負したい」
「ふふっ、またそれ言うの?」
舞が笑う。
その笑顔に、レンジもほんの少しだけ笑みを返した。
◇◇◇
イベント後、控室エリアに戻ると、ひまわり団のメンバーが駆け寄ってきた。
「舞、見たよ! あの動き、マジ映えすぎ!」千尋がテンションMAXで言う。
「……映えるね。完璧だった」と沙羅も短く称賛。
勇太が悔しそうに言った。「うおー、俺もあんな連携やってみてぇ!」
葵がにこにこと舞を抱きしめる。「やっぱりうちの舞が一番だね!」
「もー葵、やめてってばぁ!」と舞は顔を真っ赤にする。
その後、沙羅がスマホを掲げてにやりと笑った。
「もうトレンド入りしてる。タグ《#リズム共鳴》。再生数、すごいことになってるよ」
「うそっ!?」
「さすが舞ちゃん。まじバズ女神w」
舞は耳まで赤くしながら、ため息をつく。
「だからチートじゃないってばぁ……!」
けれど――その顔には、確かな笑顔があった。
レンジとの共演。
それは単なるイベントではなく、二人が“同じリズムを掴んだ瞬間”でもあった。
――《バトル・フェスティバル2026》、開幕まであと六日。
世界が“リズムと拳”の共鳴を、待っている。




