第31話「新スキル:リズムリンク」
放課後のVRルーム。《ひまわり団》のメンバーは、次の大会に向けてゲーム内の新エリア《陽炎の回廊》に挑んでいた。
砂色の壁がゆらめき、まるで炎の中を歩いているような幻想的な場所だ。
「新スキル開放クエスト、開始っと!」
葵がタンクシールドを構えながら前へ出る。
その後ろで、舞が軽くステップを刻むように足を動かしていた。
「……今日もやっぱりウォームアップが踊りだね」
勇太が苦笑する。
「う、うるさい! 落ち着くんだもん!」
舞は頬を赤くしながらも、軽やかに回し蹴りのフォームを整える。
カポエラ独特の流れる動きが、デジタルの空間に鮮やかに映える。
その時、上空に光の文字が現れた。
《スキル試練:仲間との“リズム”をつかめ》
「リズム……?」
舞が首をかしげると、千尋がすぐにウィンドウを開いて解析を始めた。
「ほうほう、パーティ全員の動作タイミングを一致させる協調スキルっぽいね!」
「それ、めっちゃ難しくない?」勇太が眉をひそめる。
「いや、逆に舞ならイケると思う」葵が笑う。「いつも音で戦ってるし!」
その言葉に、舞は深呼吸した。
「よし……やってみる!」
画面上に舞の足音の波形が浮かび上がる。
ジンガ、ジンガ――左右に揺れるステップ。
軽やかなリズムが、砂色の回廊に響いた。
「うわっ……なんか、体が勝手に動く!?」
千尋が驚いた声を上げる。舞のステップに合わせて、葵の盾捌き、勇太の剣の振り、沙羅の弓の放つタイミングまでがシンクロしていく。
まるで一つのダンスを踊っているかのように、チーム全員の動きが美しく噛み合っていく。
「これが……《リズムリンク》?」
舞の瞳が輝いた。
攻撃も防御も、仲間の動きが音楽のように重なっていく。
勇太が剣を振り抜くと、葵の盾がその隙を守り、沙羅の矢が敵の魔法詠唱を断つ。
魔法陣の奥から炎を吐くモンスターに対して、舞は笑った。
「リズムに乗って――いくよ!」
回転蹴りが決まる瞬間、千尋の火球が舞の動きに合わせて爆ぜた。
炎とリズムが融合し、巨大な魔物が光の粒子になって消えていく。
「うわ……勝手に踊らされるw」千尋が笑い転げる。
「……でも、確かに動きが滑らかになってる」沙羅が静かに言う。
「舞のテンポに合わせるだけで、全体の精度が上がる。これはすごい」
舞は息を整えながら拳を握った。
「これが……“楽しむ戦い”の形なのかもしれない」
葵が盾を下ろし、柔らかく笑った。
「うん、舞のリズムは私たちを繋ぐんだね」
「え、えへへ……そうかな」
「そうだよ。だから――」
葵は手を差し出す。
「このスキル、大会の切り札にしよう!」
「……うん!」
舞がその手を強く握ると、システムが新たなメッセージを告げた。
《新スキル《リズムリンク》習得! パーティ全員の行動連携が強化されます》
その瞬間、ゲーム内の空気が変わる。
炎の揺らめきが、どこか音楽の拍に合わせて脈打っているように感じた。
舞は空を見上げる。
――レンジとの再戦、そのときこのリズムが通じるだろうか。
彼の言葉が脳裏に蘇る。
“勝負に偶然はない”――そう言っていた彼に、今なら言い返せる気がする。
「偶然じゃないよ。これは、みんなと作ったリズムなんだ」
舞が静かに笑うと、《ひまわり団》のメンバーもそれぞれ頷いた。
チームとして、心がひとつになった瞬間だった。
やがてログアウトの光が包む。
現実へ戻る前、葵が呟く。
「大会、楽しみだね」
「うん。次は……ステージで踊ろう!」
――風間舞、“リズム・ブレイカー”として。
仲間と一緒に、戦場をステージへと変えるために。




