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カポエラ ログイン  作者: やしゅまる


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第23話「深淵への門出」

数日後の朝。ギルド協会の前には、街の人々がずらりと並び、《ひまわり団》を見送っていた。

「舞ちゃーん! 動画見てるよー!」

「深淵でもチートしてこーい!」

「いやチートじゃないですってばぁぁ!」

 舞は顔を真っ赤にして手を振る。その横で、葵は胸を張りながら堂々と答えていた。

「任せてください! 舞は最強なんですから!」


 協会から渡されたのは、緊急ポーション、転移用のクリスタル、そして各ギルドの旗印。勇太はそれを肩に担ぎ、気合十分だ。

「行くぞ、《ひまわり団》! 俺らの冒険が、ここから始まる!」



 馬車で数時間。《深淵の回廊》の入り口は、山の裂け目の奥に広がっていた。

 石造りの門がぽっかりと口を開け、内部からは薄紫の光と黒い霧が漏れ出している。地面には幾何学模様の魔法陣が浮かび、脈動するように光を放っていた。


「……これが未踏領域」

 沙羅が無表情のまま、矢筒を握る指先に力を込めた。

「なんか、雰囲気からしてバッドエンド臭すごいんだけど」千尋は苦笑いしつつ、端末を操作して撮影モードに切り替える。

「動画映えは間違いないね」


 舞はごくりと喉を鳴らした。心臓が速く打つ。

(未知の敵……怖い。でも……ワクワクする)


「舞」葵が笑顔で盾を掲げる。「大丈夫。私たち全員で挑むんだから」

「……うん!」


 こうして《ひまわり団》は《深淵の回廊》へと踏み入った。



 内部は異様な光景だった。

 壁は黒曜石のように輝き、足元には白い霧が漂っている。光源はないはずなのに、天井の裂け目から星空のような輝きが瞬いていた。


「うわ、マジでゲームのホラーDLCみたいじゃん」

 千尋が小声でつぶやいた瞬間――霧が渦を巻き、影のような人型が這い出してきた。


「出たぞ!」勇太が剣を構える。

「人間……?」舞は思わず身を引いた。


 影の兵士は剣を振り下ろしてくる。動きは重いが、不規則で読みにくい。

「勇太、下がって!」葵が盾で受け止める。金属音ではなく、不気味な軋みが響いた。

「こいつ……斬撃を吸ってる!?」


 勇太の一撃が影を裂いても、黒煙となって再生していく。

「物理効かねーのかよ!」

「じゃあ、燃やすわ!」千尋が火球を放つ。炎が影を包み、甲高い悲鳴のような音が広間に響き渡った。

「効いた!」


 舞は回り込むようにステップを踏む。影の剣が不規則に振るわれるが、彼女は体をしならせ、逆さまのように回転して避ける。

 ――カポエラの動きだ。

 床に手をつき、逆立ちの状態から足を振り抜く。光を帯びた蹴りが影を弾き飛ばした。


「よしっ!」

「舞、ナイス!」葵が声をあげる。


 沙羅が冷静に矢を放ち、千尋が追撃魔法で影を焼く。勇太が前に出て残った分身を切り裂き、葵が防御を固める。

 それぞれの動きが噛み合い、連携は次第に形になっていった。


 最後に舞が大きく回転蹴りを放ち、影兵士は霧とともに霧散した。


「ふぅ……やっぱり怖いけど、なんとかなるね!」

 舞が息を整えると、勇太がニヤリと笑った。

「いやいや、なんとかしてんのはほぼ舞だろ! マジで反則級!」

「だ、だからチートじゃないってばぁ!」


「……でも映えた」沙羅がぼそりとつぶやき、千尋は大笑いする。

「これ動画化したら100万再生いくわw “影兵士を逆立ちで蹴り飛ばすカポエラ娘”ってタイトルでな」

「やめてぇぇ!」



 笑い合う彼らの前で、ふいに地鳴りが響いた。

 床の紋様が赤く脈打ち、奥の通路から吹き荒れる風が霧を吹き飛ばす。

 そこに――巨大な影が立っていた。


 兵士ではない。四本腕を持つ巨躯、頭部は角のように歪んでいる。目の部分だけが赤く輝き、深淵の闇を切り裂いていた。


「な、なにあれ……ボスじゃん!」千尋が悲鳴を上げる。

「……本番はこれから、ってことか」勇太が剣を構える。

「全員、気を抜かないで!」葵が叫ぶ。


 舞は震える脚を押さえながら、一歩前に出た。

「未知だからこそ……楽しむんだよね」

 自分に言い聞かせるように笑う。


 巨大な影が咆哮を上げ、回廊全体が揺れた。

 《ひまわり団》の挑戦は、まだ始まったばかりだった。

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