第22話「新たな扉」
大会から数日後。
熱狂と歓声に包まれた非日常は終わり、《ひまわり団》はまた、いつものダンジョン攻略へと戻っていた。
「よし、次の角はスライム二匹。油断しないでね!」
盾を構える葵の声に続いて、勇太が前に飛び出す。
「おう! 舞より先に倒してやる!」
だがその横を、ひらりと回転する影が抜けた。舞のカポエラ蹴りが炸裂し、スライムは見事に吹き飛ぶ。
「えへへ、反応がちょっと遅かったね」
「くっそおお! 舞はほんと反則級だろ!」
勇太が頭をかきむしる。
「……また映えたね」沙羅が矢を番えたまま呟き、舞は慌てて赤面した。
「だ、だからチートじゃないってばぁ!」
千尋はにやにやしながら端末を操作している。
「ほら見ろよ、またまとめ掲示板に上がってる。『カポエラ娘、日常でもチートムーブ』だって!」
「う、うそでしょ!? まだ大会の熱冷めてないの!?」
「むしろ加速してるわw “チート娘かわいい”タグでトレンド入りしてるし」
舞は崩れ落ちた。
(やっぱり、普通に戦ってるだけなのに……なんでこうなるのぉ……)
そんな彼女の背を、葵がぽんと叩く。
「いいじゃん、舞が注目されるの。私、すっごく誇らしいよ」
「……うう、嬉しいけど複雑ぅ」
◆
その日の帰還後。
町のギルド協会から、一通の封書が《ひまわり団》宛てに届いた。
「な、何これ……本物?」千尋が口をあんぐりと開ける。
そこに書かれていたのは、金色の紋章が押された招待状だった。
――『特別探索クエスト』へのご招待。参加資格は、大会ベスト4以上のギルドに限る。
勇太は読み上げると同時に叫んだ。
「マジかよ! 俺らが選ばれたってことじゃん!」
「……特別探索って、噂の?」沙羅の眉が動く。
葵は大きく頷いた。
「うん。通常の依頼じゃ入れない“未踏領域”に挑むやつ。たしか、発見されたばかりの迷宮が舞台になるって」
舞はごくりと息をのむ。
「で、でも……私たちでそんな大役、務まるかな。まだ無名だし……」
「違うよ、舞」葵は真っ直ぐに言った。「無名なのにベスト4まで行ったから、選ばれたんだよ」
「……!」舞の心に、熱いものが込み上げた。
◆
打ち合わせのため、翌日、協会本部を訪れた《ひまわり団》。
そこには既に何組かのギルドが集まっていた。その中には、見覚えのある顔も。
「……レンジ」舞が思わず声を漏らす。
黒いコート姿の青年がこちらを見て、軽く顎を引いた。
「お前たちも来たか。……いい。次も俺は負けない」
「ふふ、こっちだって負けないんだから!」舞は自然と笑みを返した。
葵が小声で囁く。
「……ライバルだね」
「うん。でも……嫌じゃない。なんか、ワクワクする」
◆
会議室で協会の職員が説明を始める。
「特別探索の舞台は《深淵の回廊》。発見からまだ一か月しか経っておらず、内部は未知のモンスターで満ちています。挑戦は危険ですが、成功すれば各ギルドの名声は計り知れないでしょう」
勇太は拳を握りしめる。
「やってやろうぜ! これで一気に名を上げられる!」
「……確かに、動画映えする」沙羅が冷静に付け加える。
「いやいや命の危険もあるからね!? ……でも、ちょっと楽しそうかも」千尋も笑う。
そして視線が舞に集まった。
舞はしばらく俯いていたが、やがて顔を上げる。
「私……やる! 強い敵と戦うのは怖いけど、それ以上に楽しみたいって思う。だから……挑戦したい!」
葵がにっこり笑った。
「よし、決まり! 《ひまわり団》、特別探索に挑戦だ!」
その瞬間、仲間たちの声が重なる。
「おおお!」
新たな扉が、音を立てて開かれた。
――こうして《ひまわり団》は、次なる冒険へと歩み出すのだった。




