第20話「準決勝戦と新たな目標」
――大歓声の中で、舞はまだ胸の鼓動が収まらないのを感じていた。
レンジに負けた。でも、悔しさよりも楽しさが勝っていた。
会場の熱気も冷めやらぬまま、アナウンスが響く。
『続いて、ギルドバトル準決勝! 《ひまわり団》対《黒鉄の牙》!』
「うわ……マジかよ。ベスト4で当たるの、トップランカーギルドじゃん!」
千尋が目を丸くして叫ぶ。
「ランカーって、ランキング上位の……?」勇太がごくりと唾を飲む。
「うん。黒鉄の牙は“防御と連携の鬼”って呼ばれてる。下馬評では優勝候補」葵が説明する。
「でも、ここまで来たんだ。胸を張ろうよ!」舞は笑った。疲れているはずなのに、不思議と心が軽かった。
◆
アリーナに転送されると、観客席からどよめきが上がった。
「おい、あれが《ひまわり団》か!」
「無名ギルドなのに、準決勝まで来たんだぞ」
「特にあの格闘の子……チートって噂だろ?」
視線が一斉に舞へ集まる。頬が熱くなる。
「ち、チートじゃないからぁ!」小声で抗議すると、仲間たちが笑った。
「ほら、舞。いっつもそう言うから逆に目立つんだよ」千尋が肩をすくめる。
「……でも映えるね、舞」沙羅がぽつりと呟く。
「そ、そんなこと言われても!」舞は両手をぶんぶん振って赤面する。
◆
開始の合図と同時に、黒鉄の牙が一斉に前進してきた。
重厚な鎧の戦士二人が最前線を固め、後方には魔術師と弓使い。完璧な布陣だった。
「行くよ!」葵が盾を構え、勇敢に突っ込む。
「うおおおっ!」勇太が剣を振るって続く。
舞もリズムを刻み、低いステップからバク転で一気に前線へ。
だが、黒鉄の戦士の壁は厚い。舞の蹴りは防がれ、勇太の剣も弾かれる。
「やっぱり硬いな……!」勇太が歯ぎしりする。
「ちょっとやそっとじゃ崩れないよ」葵も押し返されながら声を張る。
後方から火球が飛び、千尋の防御魔法でかろうじて相殺される。
「くっ……数値だけじゃなく、立ち回りもうますぎ!」千尋が焦る。
「冷静に、相手の連携を崩そう」沙羅が矢を放ち、敵魔術師を牽制する。
◆
舞は息を整えた。
(勝てるかどうかはわからない……でも、踊るように戦えばきっと!)
逆立ちから回転蹴りを連続で叩き込み、壁役の一人をよろめかせる。
すかさず勇太が斬り込み、葵が盾で体を押し出した。
「よし、崩せる!」舞が叫んだ瞬間――後方から矢と火球が飛び込み、流れを断ち切られた。
「っ、惜しい!」舞は悔しげに息を吐く。
黒鉄の連携は完璧で、穴を作らせない。
◆
戦況は拮抗していたが、次第に差が広がっていった。
舞たちの攻めは華やかだが、消耗が激しい。
対して黒鉄の牙は鉄壁の防御で粘り、じわじわと体力を奪ってくる。
「これがランカーの戦いか……!」勇太が汗を滲ませる。
「でも、最後まで諦めない!」葵が声を張る。
「当たり前だよ!」舞は笑って、再び前へ踏み込んだ。
最後の力を振り絞り、舞の回転蹴りが敵の盾を吹き飛ばす。
観客席から大歓声が上がる。
だが、直後に集中砲火を浴びて舞のHPが尽きた。
「ごめん……!」光となって消える寸前、仲間に声を残す。
結局、黒鉄の牙が押し切り、《ひまわり団》は敗北した。
◆
「……負けた、か」勇太が地面に膝をつく。
「でも……すごくいい試合だった!」葵が笑った。
「ベスト4だよ? 無名ギルドでここまで来たの、快挙だよ!」千尋が興奮気味に言う。
「……映えてた。最高に」沙羅の冷静な声に、舞の胸が熱くなる。
「……うん。まだまだ強くなれる!」舞は拳を握った。
「私、もっともっと楽しんで、強くなる!」
観客席から「ひまわり団!」と声援が飛ぶ。
舞たちは互いに顔を見合わせ、笑い合った。
レンジとの再戦、そしてさらなる冒険を胸に――彼女たちの物語は、まだ始まったばかりだった。




