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カポエラ ログイン  作者: やしゅまる


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第2話「チートじゃないってば!」

翌日。

 放課後の教室で、葵がスマホを見ながらニヤニヤしていた。


「ねぇ舞、これ見て!」

「なに?」

 舞が覗き込むと、そこには《ブレイブ・ファンタジア・オンライン》の掲示板が表示されていた。

 ――《素手の初心者、ゴブリンを一撃で倒す動画》


「……え、なにこれ」

 クリックすると、昨日の舞のアバターが後ろ回し蹴りを繰り出す映像が映った。ゴブリンは盛大に吹き飛び、コメント欄は大盛り上がりだ。


『チートwww』

『これ素手だよな? 威力おかしくね?』

『踊ってるのに敵が消し飛んだ件』


「……いやいやいや!」

 舞は思わず立ち上がった。

「ただ普通に蹴っただけだし! なんで動画になってんの!?」

「やっぱ目立ってたんだよ、舞。あの動き、カッコいいもん!」

「かっこ……っていうか、恥ずかしいんだけど!」


 結局、気になってその日の夜も舞はログインした。



 チュートリアルを終えた舞は、最初のクエスト「森のゴブリン討伐」に挑戦していた。

 剣士や魔法使いの初心者たちが集まる定番クエスト。舞もその輪に混ざることにした。


「よろしくお願いします!」

「お、昨日の動画の人じゃん!」

「……え?」

 いきなりパーティの一人に指差され、舞は固まった。

「素手の人でしょ? 一撃でゴブリン倒してた」

「ち、違……っ! ただ偶然で!」


 しどろもどろになる舞をよそに、戦闘が始まった。


 木陰からゴブリンが飛び出す。剣士が構え、魔法使いが詠唱を始める。

 舞は深呼吸し、ジンガのステップを踏んだ。


 右へ、左へ、リズムに合わせて身体を揺らす。

 敵の棍棒が振り下ろされる瞬間――。


「ハッ!」

 回転しながら放った蹴りが、ゴブリンの顎を打ち抜いた。

 光の粒となって消える。


「……早っ!」

「また一撃!?」

「いやいや、やっぱおかしいって!」


 周囲がざわめく。舞は慌てて両手を振った。

「ち、違うから! ただの……えっと、避けながら蹴っただけで!」

「それで倒せるのおかしいだろ!」


 疑いの視線が集まる。舞は半泣きになりながら必死に弁解した。

「本当にチートじゃないんだって! いつも練習してる動きだから……」


 しかし、その後も舞の攻撃はやたらと冴え渡った。

 スライディングのように床を滑って敵を蹴り飛ばし、宙返りの流れで連撃を叩き込み、仲間が攻撃する隙を作る。


「なんか……すごく見栄えいいよな」

「うん……強いだけじゃなくて、見てて楽しい」

「踊ってるみたいだ」


 一部の仲間はそう呟き、疑いから感心に変わりつつあった。


 最後のゴブリンを倒し、クエスト完了のログが出る。

 パーティメンバーが舞を見やる。


「……で、結局チートじゃないんだよな?」

「だから違うってばぁぁぁ!」


 舞の声が森に響いた。



 ログアウト後。

 掲示板にはまた新しいスレッドが立っていた。


『踊る格闘家、今日も無双』

『動きが芸術点高すぎるw』

『素手縛りのロールプレイ勢?』


 舞はモニターの前で頭を抱えた。

「ど、どうしよう……ますます誤解されてる……」


 けれども、胸の奥ではほんの少しワクワクしている自分に気づいていた。

(……なんだかんだで、楽しいんだよね)


 まだ自覚はなかった。

 “踊る格闘家”の名が、これから大きく広がっていくことを。

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