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カポエラ ログイン  作者: やしゅまる


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第19話「宿命のカード!舞 vs レンジ」

アリーナ中央に立つ二人を、満員の観客席が見下ろしていた。

 ソロ部門準々決勝、《風間舞》レンジ


「ついに来たね、舞ちゃんの宿命のカード!」千尋が実況者のように声を張る。

「レンジ……前に戦ったあの人か」勇太は拳を握りしめた。

「勝ち負け以上に、どんな戦いになるか楽しみだね」沙羅の瞳は静かに光っていた。

「舞ならやれる! 信じてる!」葵は立ち上がって大声を張り上げる。



「準備はいいか」レンジが低く言う。

 舞は小さく頷いた。心臓がドクドクとうるさい。でも――怖くはなかった。


 開始の合図。


 レンジが一歩踏み込んだ瞬間、拳が唸りを上げる。

「っ……速い!」舞はバク転で回避し、リズムを刻むように蹴りを繋げた。

 しかしレンジは冷静に受け止める。腕で軌道を制し、反撃の肘を差し込んでくる。


「読まれてる……!」舞は息を呑んだ。


「君のリズム、すべて解析済みだ」レンジの声は冷徹だった。

 彼は数十試合分の舞の動画を見て、動きのパターンを徹底的に研究してきたのだ。


 舞が右に回転すれば、レンジは先回りする。逆立ちからの蹴りも、膝で抑えられる。

 攻めても攻めても、壁のように防がれてしまう。


「勝負に偶然はない。必要なのは計算と必然……それが俺の戦いだ」



 押されている。観客席からもどよめきが広がる。

「舞、がんばれっ!」葵の叫びが届いた。


(負ける……いや、違う。私は……楽しみたくてここにいるんだ!)


 舞は深く息を吸った。頭を空っぽにして、体をリズムに委ねる。

 カポエラを始めた日のことを思い出した。

 太鼓の音に合わせて体が勝手に踊り出し、ただ楽しかった、あの感覚。


「はっ!」舞の瞳が輝く。


 今度は一定のリズムではなく、速いステップと緩やかな旋回を織り交ぜ、予測不能な動きへと変わった。

「……何だ?」レンジの眉がわずかに動く。


 連撃が不規則なテンポで襲い掛かり、分析で先読みできない。

「これが……舞の“楽しむ戦い”か!」


 蹴りと拳が激しくぶつかり合い、火花が散る。

 観客は総立ちになり、アリーナ全体が歓声で揺れた。



 残りHPはどちらもわずか。最後の一撃を決めた方が勝つ。


「行くぞ!」レンジが渾身のストレートを繰り出す。

「こっちも!」舞が逆立ちからの回転蹴りを合わせる。


 轟音が響き、二人の体が弾かれる。

 そして――舞のHPが、ほんのわずか先にゼロになった。


「勝者、《レンジ》!」


 大歓声。結果は僅差でレンジの勝利だった。



「……っはぁ……」床に座り込みながら舞は大きく息を吐いた。

 負けたはずなのに、笑いが込み上げてきて仕方がない。


「最高に……楽しかった!」


 その言葉にレンジの表情がわずかに崩れる。

 無表情の奥から、燃えるような闘志と、清々しい笑みがこぼれた。


「俺もだ。――戦うって楽しいな」

「うん! また戦おう!」


 互いに手を取り合い、強く握りしめた。

 新しいライバルの誕生に、観客席は再び歓声に包まれたのだった。


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