第15話「ライバルとの邂逅」
予選を突破したプレイヤーたちは、巨大なドーム型の休憩エリアへと転送された。白い大理石の床に、点在するホログラム椅子や自販機。まるで現実のスポーツアリーナのロビーのように作られた仮想空間だ。
プレイヤー同士が戦況を語り合い、次の試合に備えて装備を整えるざわめきが響く。
「うわぁ……すごい人だね」舞は目を丸くした。
「当然だよ。ここに残ってるの、全国から集まった猛者ばっかだからね」葵が得意げに頷く。
「私ら、まじでヤベェとこ来ちゃったな……」勇太が苦笑しつつ剣を背負い直した。
千尋は早速、掲示板の情報を読み上げる。
「トップランカー常連の《紅蓮の魔導師カイ》、暗殺者系の《ナイトクロウ》、それから格闘枠の……おっと、出ました《レンジ》!」
「……っ」舞の身体がわずかに反応した。
その名を聞いた瞬間――視線を感じた。
振り返ると、群衆の向こうに一人の青年が立っていた。黒い道着風の装束に身を包み、鋭い目をした男。
「レンジ……さん」
舞が小さく呟くと、彼は人混みを割ってこちらへ歩いてきた。
◆
「やはり、君も勝ち残ったか」
低く落ち着いた声が、目の前に届く。
黒川蓮司――アバター名レンジ。現実では格ゲーの全国王者にして、舞が初めて真正面からぶつかり、敗北を味わった相手だ。
舞は慌てて姿勢を正す。
「あ、あの……予選、おつかれさまでした!」
「形式的な言葉はいらない」レンジはわずかに首を振る。「君の動き――やはり粗削りだ。けれど、それでも目を奪われる。まるで踊りのようだ」
「お、踊りって……いや、私、そんなつもりじゃ……!」舞は顔を真っ赤にして手を振った。
「だが次は違う。俺は君を“奇抜な新人”としてではなく、一人の戦士として叩き潰す」
レンジの眼差しは真剣そのもの。冗談や挑発の色は一切ない。ただ純粋に勝負を望む瞳だった。
舞は息を飲んだ。心臓が速く打ち、足が自然にステップを刻みそうになる。
「……でも、私は」彼女は勇気を振り絞り、視線を返す。「勝ちたいとか、叩き潰したいとかじゃないんです。ただ、楽しく戦いたいんです」
「楽しく?」レンジの眉がわずかに動いた。
「はい。踊ってるみたいに、リズムに乗って……心が震えるから。だから、戦うんです」
一瞬の沈黙。やがてレンジは小さく笑った。
「理解できない……だが、否定もできないな。その“楽しさ”が、君の力になっているのだから」
そして、拳をゆっくりと突き出す。「次は本気だ。互いに――全力で」
舞も戸惑いながら拳を重ねた。
「はい! 負けません……いや、楽しませてもらいます!」
◆
二人のやり取りに、周囲のプレイヤーたちがざわめき立つ。
「今の見た? あれ、絶対決勝カードだろ!」
「カポエラ娘VSレンジ……熱すぎる!」
「実況スレもう祭り状態だぞ!」
千尋はスマホを掲げ、「いやぁ、尊いライバル関係爆誕w これ動画にしたら100万再生いくわ!」とニヤつく。
「舞、また変なあだ名がつくかも」沙羅がぼそりと呟く。
「も、もうやだぁぁ!」舞は頭を抱えた。
だが胸の奥では、確かに熱が燃えていた。
レンジとの再戦が、もうすぐそこに迫っている――。




