第11話「氷の巨獣との死闘」
《ひまわり団》の五人は、再び氷結の迷宮の門をくぐった。
前回の撤退から数日。十分な回復薬と炎属性の装備を整え、心も身体も準備万端だ。
「今度こそクリアだ!」勇太が大剣を振り上げる。
「舞、氷で滑ってもバランス取れるんだから……むしろ主役だよ!」葵が背中を叩く。
「ちょ、そんな期待されても……」舞は頬を赤らめたが、心臓は高鳴っていた。
◆
最奥へ進むと、巨大な氷壁の前に、白い霧が渦を巻いた。
轟音と共に氷壁が崩れ、そこから姿を現したのは――全長十メートルを超える《氷の巨獣・フロストベヒモス》。
「でっか……!」千尋が口を開けたまま固まる。
「映える……」沙羅は冷静に呟いた。
巨獣は咆哮を上げ、吐息一つで空気を凍りつかせる。
「全員気を付けて! 盾は私が受ける!」葵が前に立つ。
次の瞬間、ベヒモスの巨腕が振り下ろされた。
轟音と共に氷床が砕け散る。
「うわっ!」勇太が転がって避ける。
「ちょっと待て、これ攻撃範囲バカ広くない!?」千尋が叫んだ。
◆
舞はステップを刻み、氷の破片を踏み台にして跳躍した。
空中で身体を回転させ、後ろ回し蹴りを巨獣の角へ叩き込む。
「はぁっ!」
鈍い衝撃音。角がわずかにひび割れる。
「効いてる! 舞、ナイスだ!」勇太が叫び、大剣を振りかざして斬撃を繰り出す。
しかし、分厚い毛皮と氷の鎧がそれをはじいた。
「硬すぎっ……!」
その頭上から氷柱の雨が降り注ぐ。
「――甘い」沙羅の矢が放たれ、氷柱の軌道をずらす。
「助かった!」勇太が息をつく。
だが、ベヒモスは吠え、巨大なブレスを吐き出した。氷の嵐が葵を直撃する。
「うぐっ……!」
盾で受け止めるも、氷に覆われて膝をついた。
「葵!」舞が駆け寄る。
「まだ……大丈夫! 時間を稼ぐから……舞たちは攻めて!」
親友の必死の声に、舞は歯を食いしばった。
◆
「ここで決めるしかない!」千尋が炎の詠唱を開始する。
「《フレアバースト》!」
赤い炎が渦巻き、巨獣の毛皮を焼いた。
「今だ!」勇太が吠え、大剣で裂け目を狙う。
「らあああっ!」
裂けた傷口から氷の鎧が砕け、肉が露出した。
「――舞!」葵が叫ぶ。
「うん!」
舞は氷の破片を次々と蹴り、空中を舞う。
――タタン、タン。
音楽が聞こえるようなリズムで、身体が自然に回転していく。
最後の蹴りは、空中からの逆立ち回転――カポエラのフリップキック。
「やあああっ!」
衝撃が巨獣の頭蓋を直撃し、光が弾けた。
フロストベヒモスが咆哮をあげ、巨体を震わせる。
そして――氷片を撒き散らしながら、ゆっくりと崩れ落ちた。
◆
「……勝った?」千尋が目を丸くする。
「……クリア、だね」沙羅が矢を下ろした。
数秒の沈黙の後――
「よっしゃああああ!」勇太が大剣を突き上げる。
「すごいよ舞! あんな動き、誰にもできないよ!」葵が抱きついてきた。
「ちょ、やめてよ! 恥ずかしいってばぁ!」舞は顔を真っ赤にする。
システムメッセージが浮かぶ。
《上級ダンジョン《氷結の迷宮》クリア!》
《称号〈氷を砕きし者〉を獲得!》
五人は顔を見合わせ、自然と笑みを浮かべた。
達成感と興奮に包まれながら、《ひまわり団》は初めての上級ダンジョン攻略者として歴史に名を刻んだ。
(やっぱり……楽しい!)
舞の胸に、熱いリズムが響き続けていた。




