第10話「氷結の迷宮へ!」
《ひまわり団》の面々は、町の広場で集まっていた。
「次はどこ行く?」勇太が剣を背負ったまま問いかける。
「せっかくなら、上級ダンジョンに挑みたいな!」葵が目を輝かせる。「氷結の迷宮っていうのがあるんだよ。氷と雪のギミックだらけで、攻略できれば一流プレイヤーって噂!」
「氷ダンジョン……動画的にも映えるな」千尋が即座に乗り気になる。
「危険度も高い。けど……挑む価値はある」沙羅が淡々と分析する。
舞は少し不安そうに眉を寄せた。「氷って、すごい滑りそうだけど……」
「舞なら大丈夫だよ!」葵が笑って背中を押す。「むしろ得意かも!」
こうして《ひまわり団》は、初めての上級ダンジョン《氷結の迷宮》へと挑むことを決めた。
◆
入り口の扉を開いた瞬間、冷気が押し寄せた。
「さっむっ!」勇太が身震いし、吐息が白く煙る。
床は一面の氷、壁からは氷柱が垂れ下がり、奥には吹雪が渦巻いている。
「わわっ……!」次の瞬間、勇太が派手に転倒した。
「うわー! つるっ……ぎゃああっ!」剣を振り回して尻もちをつく。
「ちょっと勇太! 危ないって!」葵が慌てて制止する。
舞は恐る恐る足を踏み出した。――タタン、タタン。
ステップを刻むと、意外にも滑らかに体が動く。
試しに回転すると、氷の上で軽やかにスピンしながら回し蹴りを繰り出せた。
「……いけるかも」舞は思わずつぶやく。
「ほらね! 舞なら氷の方が得意なんだって!」葵が自慢げに言った。
◆
だが敵は手強かった。氷狼、フロストゴーレム、小型の氷精霊――すべてが冷気をまとい、攻撃を弾き返す。
「硬すぎ! 剣が通らねぇ!」勇太が歯を食いしばる。
「うわっ……!」葵は盾でブレスを受けたが、全身を氷に覆われて動けなくなる。
ゴーレムの拳が振り下ろされる――その瞬間、氷の影から矢が飛んだ。
「……油断しすぎ」沙羅が冷静に放った矢は、ゴーレムの腕を貫き動きを止めた。
「このままじゃじり貧だな……」千尋はインベントリを開き、巻物を取り出す。「よっしゃ、切り札発動! 《火属性スクロール》!」
彼女が詠唱すると、炎の奔流が吹き荒れ、氷狼たちが一瞬で焼き崩れる。
「効いてる! やっぱ氷には炎だろ!」勇太が吠える。
「千尋ナイス!」葵も凍結から解放され、盾を構え直した。
舞も氷の床を滑りながらステップを踏み、回転蹴りを繰り出す。
「やあっ!」氷の反動を利用して狼を蹴り飛ばす。
観客はいないはずなのに、舞台で踊っているような感覚が胸に広がった。
◆
しかし、最奥へ進むほど冷気は強くなり、体力も削られていった。
「回復アイテム、残り少ない……」葵が渋い顔をする。
「このままじゃボスにたどり着く前に全滅だ」沙羅が静かに告げる。
「くっそ、せっかくここまで来たのに!」勇太が悔しそうに拳を握る。
「撤退も戦術だよ」葵はギルドマスターらしく言い切った。
舞は深呼吸して仲間を見回す。
「うん、次はもっと準備してから挑もう。絶対に、今度こそクリアしよう!」
「リベンジ決定!」勇太が拳を突き上げる。
「二部構成、動画的にも美味しいわ」千尋がすでに編集を考えていた。
「……映える敗退、ってやつだね」沙羅が小さく笑った。
氷結の迷宮を後にしながら、舞は胸の奥に熱い炎を感じていた。
(悔しい……でも楽しい。また挑戦したい)
こうして《ひまわり団》は一度撤退。だがその瞳には、再挑戦の決意が燃えていた。




