新しい家族 1
魔剣は双剣になってもよくしゃべるし、聖剣も穏やかに宝石を光らせている。
あの日以来、魔剣と聖剣が私の前に人の姿を見せることはない。
三年の月日が経った――少しずつ、家族を取り巻く環境は変わっていく。
フィアーゼ家のお義母様は私たちを害そうとした罪で軟禁されることになった。
お義父様も彼女の行動を止められなかったとして、フィアーゼ侯爵の地位を手放すことになった。
――表向きには、二人は病気療養ということになっている。
旦那様はフィアーゼ侯爵として、第一騎士団長として、王都の安全のために日々忙しく過ごしている。
「「お母さま~!!」」
手を繋いでいないときのほうが少ないのではないか。そう思っていたハルトとルティアは、今はもう別々の部屋に寝るようになった。
2人はもう7歳だ。
間もなく、騎士学校の初等科にも通いはじめる。
「おかあしゃまー」
「レイ」
淡い金色の髪にアイスブルーの瞳をした男の子が、よちよちとこちらに近づいてくる。
レイ・フィアーゼ、2歳。
我が家の新しい家族だ。
目下のところ、ルティアもハルトもレイに夢中。ずっと一緒にいる。
彼は可愛らしい。
旦那様とともに聖剣は遠征に出かけているため、魔剣は私たちとともに留守番だ。
魔剣もレイにメロメロなようで、チカチカピカピカ忙しい。
レイには魔力がほとんどない。
しかし、魔剣にも聖剣にも触れることができる。
けれど、最近になってわかったことがある。
魔剣の宝石が光る。すると、そのリズムに合わせてレイが手を叩いている。
そう、彼は魔剣と聖剣の言葉が聞こえるだけでなく、宝石の光も見えているようなのだ。
アンドレイ兄様やベルティナと同じ色合い。
彼の名前をレイとつけたのは無意識だったが……。
――まさか、母様が泣くなんて。
アンドレイ兄様の幼少期の呼び名は、レイだったという。
もちろん偶然に違いないが……。
最後にフィアレイアの姿を見たときに、兄様の気配を感じた。その直後の妊娠だったこともあり、ふとレイと兄様を重ねて見てしまうことがある。
――でも、兄様は魔力が強かった。レイは甥にあたるのだから、似ているのも当然だろう。
「「え? 魔剣さんも子どもの頃はレイって呼ばれてたの!?」」
ルティアとハルトの声に我に返る。
そういえば、レイブランドも短く呼べばレイと呼べる。
不思議な繋がりを感じながら、双剣になった魔剣を見つめる。
旦那様は、主に聖剣を携えて騎士団長の職務に従事している。
だから、もっぱら魔剣はルティアやハルトとともにお留守番をしている。
「「お母さま、準備できた?」」
「そうね、ほとんど準備は済んだわ」
実は、三日後にフィアーゼ侯爵領に行くことになっている。
本来であれば、二年前に旦那様が侯爵代行から正式に侯爵を襲名したときに行く予定だった。
けれど、私は第三子を妊娠したため、フィアーゼ侯爵領に行くことは叶わなかったのだ。
旦那様は、以前より更に忙しくなった。
屋敷の中で領地経営などの書類仕事はしていたが、妻の手助けもなく慣れない領主としての仕事にさぞや苦労しただろう。
けれど、旦那様が弱音を吐いたことなどない。日を追うごとに旦那様のことをを尊敬するばかりだし……ますます……。
そのとき、ルティアとハルトが窓の外を見て喜色を浮かべた。
「「お父さまが帰ってきたよ!」」
「おとーしゃま!!」
「「レイ、行こうね」」
「うん!!」
「「あ、魔剣さんも聖剣さんに会いたいよね!」」
ルティアとハルトが魔剣を一本ずつ手にし、レイの手を引いてエントランスホールに向かう。
私は少しだけ火照ってしまった頬を押さえ、それから旦那様を出迎えるためにエントランスホールに向かうのだった。




