双剣 2
火花が散る。
炉で金属を熱するが、作業は熱した金属に魔法陣を書き込むことで行われる。
竜の吐き出した炎に熱せられた金属にベルティナが魔法陣を書き込んでいくと、徐々に剣が形作られていく。
――それにしても、暑い。こんなに暑いものか。
不思議なことに、今の魔剣に直接触れられるのは私だけだ。
魔獣の皮を使った手袋で押さえているが、時々火花が飛んでくるし手の平も熱い。
「お母さま頑張って」
「魔剣さん頑張って」
ルティアとハルトは、必死になって応援している。
時間経過とともにその声は掠れ、眠そうになってきたが、二人は絶対に寝ようとはしなかった。
始まってからもう何時間経ったか、私にもわからない。
手は痺れ、火花が当たるたびに肌が痛い。
それでも――魔剣は私たちの家族なのだ。
「大丈夫ですか? 姉様……」
ベルティナが作業の合間に、心配そうに声をかけてくる。
魔力を持って生まれたベルティナに比べて、私は体力がない。ずっと強く握ったままだから手の感覚はもうないし、足も腰も痛いけれど……私にしか触れられないのだ。絶対に諦めない。
「大丈夫。続けてちょうだい」
もう夜中なのかもしれない。
ルティアとハルトは先ほどまで眠い目をこすりながら起きていたが、限界だったのだろう、座り込んで壁に寄りかかったまま、身を寄せ合って眠っている。
バルティ殿下は椅子に座り、作業の工程を記録している。
旦那様は微動だにせず、私たちを見守っていた。
フィアレイアもまるで息でも詰めているようにピカリとも光らずにいる。
初めのうちは白銀だった火花が、突如赤に変わった。
「姉様! 今です! 魔剣に宝石をはめてください」
「ええ!」
台座があるほうの双剣の片割れに赤い宝石をはめ込むと、複雑な魔法陣が浮かび、何かが作動するようにガチャリという音がした。
――作業台が真っ赤な炎に包まれる。
燃え上がる炎で火傷することを覚悟したとき、私の手の上に大きな手が重ねられた。
赤い炎が二振りの剣に吸い込まれていく。
「――レイブランド」
私の前に幻のように立つのは、長い白銀の髪に赤い瞳を持つ騎士だ。
彼は私の頭をそっと撫でて笑った。
その唇が言葉を紡ぐ。私には彼の声は聞こえないけれど……これは『ありがとう』と言っているに違いない。
「どういたしまして……」
「「……魔剣さん?」」
ルティアとハルトが目を覚まし、立ち上がると作業台に駆けてきた。
「「お帰りなさい!!」」
二人は声を張り上げた。
聞こえなくてもわかった。今、魔剣は『ただいま』と言った。
「おかえりなさい。レイブランド……」
その姿はかき消えて、双剣が残される。
二振りになった白銀の剣は、以前より短く刀身が反っている。
ルティアとハルトはそれぞれ一振りずつ剣を手にした。
「「魔剣さん、これからもずっと一緒だね!!」」
二人の言葉に呼応するように、鍛冶場は真っ赤な光に照らされた。




