双剣 1
それから三週間後、魔剣を双剣に作り替えるための素材が揃った。
ぴーちゃんは、ロレンシア辺境伯領から取り寄せた霊鉄で新しいアームを作ってもらい元通り動けるようになった。
騎士の武器を手掛けている鍛冶場に、私たちは勢揃いした。
――炉に燃え盛る火は、黄金色をしている。
「刃は折れたけれど、タングは残っているわね」
「タング?」
ベルティナが魔剣を分解しながらつぶやく。
作業台の上で、魔剣の柄が外されて芯になる部分の金属が露わになっていた。この部分がタングらしい。
そこにはぎっしりと、魔法回路が書き込まれている。
刃の断面を見た時も、精密な魔法回路に驚いたが、この部分はさらに複雑だ。
「――再現するのは難しいわね。これを活かして、こちら側に宝石をつけることになりそう」
ベルティナは、感嘆したような息を吐いた。
バルティ殿下も真剣な表情でタングを見つめていた。
「根本はタングを活かして宝石を嵌め込むわ。折れた刃先側は一度溶かして他の金属と共に錬成することになりそうね」
「「でも、魔剣さんは大丈夫なの?」」
ルティアとハルトは、不安そうな表情を浮かべている。
魔剣の宝石はピカリとも光らない。
おそらく、覚悟を決めたのだろう。
「おそらくとしか言いようがないわ。でも、まだ宝石とあなたたちが会話できているのは、タングと刀身の根本に書き込まれた魔法回路が無事だからだと思うの」
「……刃先の魔法回路は、魔力を流すためのものだったよね……」
「ええ、そうよ」
ハルトとルティアは、魔剣の宝石に手を当てた。
「魔剣さん、頑張ってね」
「魔剣さん、絶対に成功するからね」
魔剣の宝石がチカチカと赤く光った。
ルティアとハルトは笑みを浮かべた。
魔剣はおそらく、大丈夫だと自信を持って答えたのだ。
* * *
炉の炎が黄金から深紅に色を変える。
「竜の火の息吹からつけた火は、強い魔力を宿しているわ。扱えるのは、一部の職人だけ……バルティ殿下、お願いします」
「ええ、一世一代の最高傑作を作り上げて見せましょう」
タングがない側の剣のために、新しいものが打ち出された。
叩くたびに白銀の火花を撒き散らして、剣が形作られていく。
「行きます」
ベルティナが羽ペンのようなものを手にした。
魔法回路を書き込むための専用のペンは、インクの代わりに魔力を使う。
ベルティナが魔力を込めると、ペンの先が金色に輝いた。
「これは神代の技術への挑戦です……剣の乙女よ、どうか力を貸してください」
ベルティナがその言葉を口にした瞬間、旦那様の腰に下げられていた聖剣が、周囲の景色を消し去ってしまうほど強く輝いた。
魔石が嵌め込まれない側の剣は、以前と同じ意匠のまま姿を現した。
「成功したようですね。これだけでも、騎士団長たちの剣に匹敵するほどの価値があるでしょう。問題は、もう一つの剣ですね」
タングがついたままの剣の片割れは、ベルティナとバルティ殿下を拒み、触れさせなかったのだ。
不思議なことに、普段魔剣を手にして戦ってきた旦那様にすら触れることができなかった。




