魔導具研究 6
王城の一室で、あとから来たベルティナと合流する。
魔剣の刀身と宝石がテーブルの上に置かれた。私たちは机を取り囲むように並ぶ。
ルティアは少し離れたところから様子を見ている。
ハルトはつま先立ちになって、お腹と胸をテーブルにくっつけて身を乗り出している。
「ハルト、疲れてしまうわよ」
「――お母さま、魔導具研究における歴史的瞬間なんだよ。これを見なかったら一生後悔する」
「そんなにも……!」
だが、確かに東の国エデンタールは遠い。
魔剣は一千年以上前の魔導具……現存するものはほとんどない。
「さて、まずはどんな金属を使っているか調べさせていただきます。軽微な擦り傷程度はお許しいただけますか?」
「――必要であれば、仕方がないことでしょう」
魔剣は刃こぼれした部分から折れてしまったが、刀身は未だにピカピカと輝いている。
もちろん、優れた技術と特別な金属を使っているからなのだろう。
だが、それと同時にフィアーゼ家に生まれ、魔剣を手にした騎士たちが魔剣をいかに大切にしてきたかの証明でもあろう。
――旦那様も、非番の日には必ず魔剣と聖剣の手入れをしている。
おそらく、彼らにとって魔剣は愛剣を超えた相棒であり家族だったのだ。
私の考えは魔剣に聞こえてしまったのだろう。
テーブルの上で、チカチカと光っている。
「……?」
チカチカチカチカ……どうしてあんなに点滅しているのか。
「魔剣さん……大丈夫、私がついてるよ」
ルティアが宥めるような声を出した。
「僕たちも、お医者さんが来ると苦いお薬飲まされるかと緊張するけど……よくなるためだから我慢してね」
ハルトが言い聞かせるように声をかけた。
多分ではあるが、魔剣は削られたくない、とか何されるかわからないから嫌だと言っているのだろう。
「それでは始めましょう」
バルティ殿下は、魔剣を手にするとじっと眺め、それから小さな槌で叩いた。
キーン、思ったよりも高い音がする。
「白銀の色合いからいって魔銀が混ざっているのは間違いない。メインは霊鉄か……なんて贅沢な」
それから、やすりでほんの少しだけ削ると、あらかじめ用意されていた薄青い溶液に微粒子を落とし込んだ、
粉はシュワシュワと泡立って消え、溶液を緑色に変えた。
続いて粉が付着したやすりを火に近づける。
炎は真紅になり、星のような火花が散った。
「――冥鉄も入っているのか。これが魔石と剣を融合させていたのだろうな」
次にバルティ殿下は並々と水を湛えた器に魔剣を沈めた。
重さと溢れた水の量を調べているようだ。
「さて、予想ではあるが金属の比率はこのようなところか」
バルティ殿下がサラサラとペンを走らせた。
実験結果と一緒に書かれている不思議な記号と小さな文字。
「神代文字が書けるのですか」
「おや、よく勉強しているね。そうだ、エデンタールの王族は幼い頃に神代文字を習うんだ」
「……っ!」
ハルトは背負っていたリュックを開けて、布に包まれた四角いものを取り出した。
「お父さま、バルティ殿下に見ていただいてもいい?」
「……これは、わざわざ図書室から持ってきたのか」
「もしかしたら、役に立つかもしれないと思って」
「そうだな。見ていただこう」
ハルトがテーブルに置いたのは、分厚く古びた革の表紙の本だった。




