魔導具研究 2
「またお会いできて嬉しいですわ。姉様」
「ええ、私も会えて嬉しいわ」
ベルティナは今日も騎士服を着ている。
「ハルトもいらっしゃい。私は力持ちだから、二人抱き上げるくらい余裕よ」
「わーい!!」
ベルティナは二人のことを軽々と抱き上げた。私とそれほど体格が違うようには見えないが……鍛えているうえに、魔力のあるなしが大きいのだろう。
「さて、さっそくですが折れてしまった刀身を見せていただけますか?」
「ええ、もちろんよ」
宝石だけはルティアの首に下がっているが、魔剣は私と旦那様の部屋に置かれている。
ベルティナを応接室に案内し、部屋に向かう。薄暗い部屋で抜け殻になったような魔剣に、心臓がドキリと音を立てた。
魔剣の鞘と刀身を手にする。
試してみたが、現在の魔剣の刀身は、アンナや執事長でも触れることができる。
しかし、宝石部分には触れることができない。
本体である宝石が無事であったことを喜ぶべきなのか……。
複雑な心境のまま、魔剣を持って応接室に向かう。
「お待たせ」
「……ええ」
それほど時間をかけていないはずだが、ベルティナは、すでに二人のボードゲームの相手をさせられていた。
「子どもだからと言うのはあまり好きではありませんが――わずかに四歳でここまで」
「「違うよー?」」
「え?」
「「ベルティナ叔母さまが戦っているのは、二人じゃなくて魔剣さんだよ」」
「なるほどね……」
ベルティナの目が真剣な色を帯びた。
しかし、魔剣の圧勝だった。
「……それにしてもお強いですね。さて、触れても構いませんか?」
ルティアの胸元で宝石がチカチカと光った。
「「良いって。お願いするって」」
「光栄ですわ」
ベルティナは白い手袋をはめると、注意深く刀身を手にした。
ハルトも一緒にのぞき込む。
ベルティナは割れた部分を自身の目線に掲げ片目を瞑った。
「何て繊細な魔法陣」
「すごいね〜。本でもこんな細かいの見たことない」
「ええ……。辺境騎士団長イースト卿の大剣と様式は似ていますが、遙かに細かい。どうやってここまでの……それに東の国エールディアの特徴があるようですが」
二人はああでもない、こうでもないとしばらくの間議論していた。
「なるほどね……一本に戻すことは、現在の技術ではできなそうです」
「……でも、鞘の部分と切っ先の部分は違う魔法陣だ。ねえ、できる?」
「ええ、やってみせますわ。とりあえず、魔導具研究会の会員が東の国から王都に来ているらしいですし……素材の相談に行きましょう」
「どういうこと?」
「お家の図書室で調べたら、過去に例があったんだ。双剣という形なら……残された魔法陣を生かせるかも」
ハルトとベルティナの会話は難しすぎてわからなかったが……。
「双剣?」
確かに、騎士たちの中には双剣を得意とする者もいる。
「さっそく連絡を取りましょう」
「私にお任せを、すぐにお連れいたします」
ガチャンガチャンというぴーちゃんの鳴らすアームの音とともにアンナが現れる。
ベルティナが首を傾げた。
「あら、でもそうそう会えないと思うわ」
「王城に滞在しているなら……方法はありますわ」
アンナは自身の胸をドンッと叩いた。




