間話 ドッジボール 前編
「んじゃお前らコレ」
そう言って、体育担当の怠先生に手渡されたのは黄色いドッジボールだった。
5時間目の授業は体育館集合だ。科目はもちろん体育。祝い事専用の祝館とは別に用意されたここは、バスケットコート2個分が収まるくらいの広さがある。
「今からラジオ体操流してやっから準備運動はしっかりやれよー。後はグーパーで10:10で分かれろ。んじゃ任せた。おやすみ」
「「「えぇ…?」」」
言うだけ言うと、先生は私物であろう折りたたみ式のビーチチェアを広げて横になる。先生のスマホから軽快なラジオ体操の曲が流れ始めた。
目元を覆うアイマスクはおそらく話しかけてくれるなという意思表示なのだろう。
生徒一同で先生をジト目で眺めるも、怠先生は気持ちよさそうにイビキをかき始める始末。よく見れば先生ってば耳栓までしてる。随分と準備周到だなぁ。
「あの教師、本当にワームヴェルトの教師なのかぢょ」
「まぁまぁ、先生も疲れてるんだって」
ミニーくんが呆れた様子だったので、一応フォローを入れておく。いや、漫画でも基本だらけてた気がするな。
「うぉーっし!じっとしてても仕方ないッスから準備体操するッスよ!はい!おいっちにー!さんっしー!」
「体操なんかやらなくてよくね〜?うち、さっさとドッヂしたいんだけど」
「だめだめぇ!やっほーちゃんも一緒に運体操体操〜!」
「ぶわっ!やめろ、ぷぷぷ!乳に沈む!!」
「体操しない子は閉まっちゃうよぉ〜!」
「おぎゃー!」
「八豊もぷぷぷも楽しそうでいいッスね!さぁ、気合い入れていくッス!」
「おぐわぁ〜!助けろ、ばか玖瑠璃!」
「………リャカリャウ、ゴムやるから髪纏めろ」
「むぅ、面倒じゃのお。レイジ。ぽにて、とやらにしてくれ。テキトーでかまわんから」
「…………仕方ねぇ」
「かっかっか!口数少ないがデキる男じゃ!…ってなんで三つ編みにされてるんじゃ!?」
「…………悪い。妹たちにやってる癖でよ」
「おぉ、リャカリャウ似合ってんじゃん。女の子みたいでよ」
「やかましい!ぶちのめすぞウィリアム!」
「おぉ、こわ。レイジ、お団子ヘアにでもしてやれ!」
「……………仕方ねぇ」
「よくないよくない!やめんか!ものすごい速度でわしの髪型が!」
皆自由におしゃべりしながらも、しっかりと体操している。なんだかんだ優秀なワームヴェルトの生徒なだけある。癖はあるが真面目なのだ。…約1名を除いて。
「くぁ〜あ、まだまだ眠い人生だぜ」
「こらこらバズくんや。キミも運動しなさいな」
「この腕でか?」
おぉ、両腕コルセットだったわ。そういえば。あまりに自然体だからすっかり馴染んでた。最早、コルセットなしのバズをバズと認識できるかどうかわからないレベル。
「見学でいいだろ、オレと言う名の人生は」
「爆世が見学ならボクも見学しようかなぁ」
なんやかんやでグーパー後…。
………以下組み分け表………
Aチーム
アイスパイン・ツェズリゲータ
ヴロトレキ
蛇腹 独葉巳
東條 礼慈
ウィリアム・テルアライ
〆桐 グローバルエリア
根曲 玖瑠璃
ホメロス・マケルカ=マッセ
ミノタウロスくん
雪見辻 アオ
Bチーム
秋津木 余一
神乳山 ぷぷぷ
義毛座 八豊
苦渋ヶ島 瞳告
スズミ・スズミバード
洛陽 落ち葉
龍紋 ファフナ
リャカリャウ・フラウカウ
爆世・マーダー
美肉井 垂水
…………………………………
「圧倒的体育会系が集まった!これは勝てるぞ!」
「そうッス!私とウィリアムのスポーツマンが揃えば攻撃は最強ッス!」
ウィリアムくんとくるりんちゃんが元気いっぱいだ。流石はスポーツっ子。
「まぁ、任せてくれって。こう見えて俺はスポーツ万能さんなんですよ。元バスケ部エースの力、どうか見ててくれよってな!」
「ウィルくん…!」
「それにこっちにはミノタウロスも礼慈もいる。いくら相手が首席の龍紋でもなんとかなるって」
「確かに…?」
しかし、ファフナちゃんは万能チート主人公である。クラスメイトが相手で、しかも半ば遊び染みたドッジボールからワンチャン…?
「ボールこっちからでいいー?」
ファフナちゃんが片手で掴んだボールをぶんぶん振り回しながら何やら言っている。握力エグい。
どうしようかウィルくん。キミが今日は俺たちのリーダーだ。好きに決めておくれ。
「あっちは怪我人のマーダーもいるし、初めのボールくらい問題ないだろ。なっ」
結局、参加になったバズが向こうチームで暇そうにしている。攻撃できないならどうでもいい、と言った感じだ。瞳告くんと後方でおしゃべりに耽っているのでおそらく敵ではない。これはファフナちゃんさえどうにかすればどうにかなるか…?
「ファフナちゃーん!ボール、そっちからでいいって!」
「おっけー!それじゃ最初は軽くいくから!覚悟決めろー!」
何か怖い事言ってるね。俺は後ろに引いておこうかな。さぁさぁ泣いても笑っても試合開始!ウィルくんがボールを取る気満々でファフナちゃんの真ん前に立ち塞がる。
「さぁ来い龍紋!思いっきり来い!」
「え?いいの?」
「いや、ダメでしょ」、そう言う前にファフナちゃんの右肩がブレる様に大きく揺らいだ。




