第六十九話 攻める①
「こ、こっちから」
「攻めるぅ?」
俺とファフナちゃんが同時に素っ頓狂な声を上げた。視線はもちろん瞳告くんに釘付けだ。何かの冗談かと思った。だが彼の表情は笑顔ではあるものの、その目は真剣そのものだ。
「うん。悪くないと思うんだけどね」
雄鶏の写真を指先で弄びながら青い瞳がファフナちゃんの方を向いた。
「こっちには龍紋さんがいる。まさしく百人力だよね」
「う、でも…そんなファフナちゃんを利用するみたいな」
「馬鹿ジャミラ。利用じゃないわ、協力よ協力」
ファフナちゃんが即座に俺の言葉を否定に入った。彼女も案外乗り気なのかもしれない。チート主人公はこれだから困る。
「ふふ、それに微力ながらもボクだっている。更には御三家が一つ苦渋ヶ島もいるんだよ?ねぇ、悪くないでしょう」
「で、でも、ここは大人しく警察に相談した方が…」
「うん。だから、ボクが昨日すでにしておいたよ。苦渋ヶ島も雄鶏逮捕の為に動いてくれているよ」
驚いた。既に警察に相談してくれているという。実にスムーズでスピーディーだ。流石は家族に警察関係者のいる苦渋ヶ島家である。
いやはや、しかし驚かされることばかりだ。まさか瞳告くんの口からこんな大胆な案が出るなんて思ってもいなかった。
だって、彼は漫画『じゃむうま』世界では、言い方は悪いが色々な情報をお知らせしてくれるだけの情報源キャラクターだった。そんな彼がまさかのまさか、こちらから攻めてしまおうだなんて驚き桃の木山椒の木。実に頼もしい限りだ。………おや?待てよ?
「やるじゃない苦渋ヶ島くん!……あれ?ならそれこそジャミラは下手に動かない方がいいんじゃない?警察に後は任せちゃってさ」
ファフナちゃんが首を傾げて難しい顔をした。俺も丁度そう思っていたところだ。再び2人で彼へと向き直ると、瞳告くんは白い髪を揺らして頷いた。
「うん、それなんだけどね。今回の雄鶏逮捕の為の要となるのは、蛇腹くん。キミなんだ」
「俺?」
「うん。蛇腹くんには彼を釣る為のエサ…囮になってもらいたいんだよ」
「え?」
「囮?」
空気が一瞬停止した。




