第六十六話 流れる様に授業は進む
1限目 スキル学(座学)
担当:那由多万 兆垓先生
「人のスキルは千差万別億垓兆秭。
800年代のスキル学者アクロビ・フトラバウタ曰く「人間の数だけスキルがあり、スキルの数だけ人間がいる」との事だが、ふっ、今となっては百当たり前の事実であるな。くだらん問いではあるが、ここテストに出そうか。なにサービス問題というやつだ。
話を戻すがスキルというものはだ。百に千に万に億に、例え何兆人いようとも全く同じスキルを持つ存在は自分自身以外存在し得ない。全くもって零なのだ。否、零より遥かにあり得んな。己と同一たる他人などいる筈も無い。
分厘毛糸渺漠空虚、それより遥かにあり得ないのだよ。
さて、まずスキルの型について一から教えよう。スキルの型は大きく5つに分類され…」
…
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2限目 世界史
担当:ポパイくん先生
「良いかな。かつて、私たち人間が…失礼、私はチンパンジーであるが今はそれは置いておこう。
かつて私たちが住まう世界というものは、この島国よりも遥か彼方。水平線より遥か彼方。あの広大な海々の果てにまで繋がっていた。これは大陸全土が魔物の巣窟化した外つ地を指すのだが…。
まぁ簡潔に言ってしまえば、日本列島の外にも多くの国があったという事だ。
さあ、第1回の授業では君たちが興味を損なわない様に最大限気を遣いながら、最も近い外つ国、巨人住まう氷の北国『カムイユカラ』の歴史から始めようではないか」
…
……
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3限目 国語(古典文学)
担当:嶽 震右衛門先生
「…えぇ〜、あぁ…。んあ〜、このね、ここ、はぁうぁ…いま配ったプリントはだなァ。奈良時代…いや平安時代だったかァ?あぁ、その辺の時代に書かれた悪龍信仰…お、おしんこ…?アァ、飯ァ食ったよ儂は…。
…ん?おぉ、悪龍信仰だ悪龍信仰…。こいつァそれに関する説話集でな。えぇ〜…例えばなァ。ここの文を訳すとだァ。
はぅあ…『三大悪が一つ、悪龍こそ世の安寧を繋ぐ破壊の化身にして、魔と人との均衡を保つ者。そも悪とは何に対しての悪なのか。それは…』……………あァ?ツァッ!やっちアッたァ。こいつァ禁書だァ。
…へっへっへ。テメェァ、見なかっア事にしてくんなァ」
…
……
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4限目 家庭科(移動授業)
担当:ヒポリテ・デキルモン先生
「それでは授業の方を始めさせて頂きますということで。本日は1年生の皆さんの初めての家庭科授業ということで。
あたくし、家庭科担当のヒポリテ・デキルモンということで。
皆さん、授業の方は着いて行けてますかということで?ワームヴェルトの座学は胃もたれしそうになると有名であるということで。
あたくしの授業は皆さんにとってのオアシス、憩いの場にしてあげたいと思っている所存であるということで。
ですので、本日はカンタンな甘〜いお菓子など作りたいなということで。特別探索士や討伐屋にとっても甘味は大事な燃料ということで♡お昼時の前ではありますがお茶の時間にしましょうということで〜♪
…まぁ、居眠りする様な不届き者には容赦なく「「「「「オれ達nO、コぶ死Ga振リそ削グuuuu…!」」」」」ということで。覚悟望んでお眠り頂くと喜ばしい限りということで♡」
…
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お昼休み
落ち葉ちゃんに誘われて、渋々ファフナちゃん達とお弁当を囲む事になったのだが…
「なんか身も心も疲れ切ったよ…」
「あ、頭が胃もたれする…!」
「…ふん、他愛も無い内容だったな」
「ぜーんぶ!すげぇ楽しい授業だったな!
いや、それにしても悪いなジャミラ!お前のお母さん、弁当まで準備してくれてさ!」
『焼き菓子が美味かった』
上から順に俺、落ち葉ちゃん、ヴロちゃんさん、ファフナちゃん、シマヘビくんと授業への反応は三者三様だ。生徒の大半は机に突っ伏していたり、頭を抱えて白目を剥いていたりと、ヴロちゃんさんみたいに余裕そうな生徒やファフナちゃんみたいに目をキラキラさせている子はレア中のレアである。
授業だけでなんだかお腹がいっぱいだ。モリモリと弁当をかき込むファフナちゃんやシマヘビくんがちょっぴり羨ましい。
ま、まぁ、それはともかくようやく昼休みだ。さっさとご飯を食べちゃって瞳告くんに相談をしよう。彼ってば、今日はやけに静かにしてるし、ちょっぴり心配だからね。
「ふあ〜あ、眠いばかりが人生だぜ」
お、バズの奴、重役出勤だな。弁当を無理やりかき込んでいると、教室に入って来たのはまだまだ両腕コルセットのツンツン頭だ。
彼は寝ぼけ眼をシパシパさせながら、入り口すぐ横を陣取っていた俺たちに気が付いたらしい。ガチガチに固めた腕をヒョイと挙げて「よっ」と挨拶をくれて来た。
「おはバズ。スーパー重役出勤だね」
「あんま褒めんなって。そういうテメェも今日も今日とてハーレムしてんな、独葉巳と言う名の人生は。テメェ、今日こそは
「爆世!遅いよもう。まだ3日目なのにもう寝坊なんかして!留年しちゃうよ?」
急に俺とバズとの話を遮って間に誰か入って来た。白に近い銀髪が軽く揺れる。一瞬だけ見えた青い瞳は俺の方を一瞥もせず、目の前の幼馴染に向けられている。
誰かと思えばこれからお話させてもらおうと思っていた瞳告くんが、まるで水を得た魚くんみたいに元気を取り戻していたのだ。




