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俺は主人公の友人Aとして生きたいの!〜バトルファンタジー漫画の世界に転生した俺はTS転生した美少女主人公(中身おっさん)を狙っている訳ではない〜  作者: どかんどかん!ぱおんぱおん!
第一章 学園入学:龍紋 ファフナ編

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第四十六話 友だちじゃない

 生きた心地がしなかった。腰が抜けてしまった俺は地上へと釣り上げられた後、地面に仰向けに倒れたまま呆然と空を眺めていた。


『無事かー』

「…うん。大丈夫」


 シマヘビくんの言葉に生返事を返した。なんだかどっと疲れた気分だ。

 空は青く晴れ渡り、俺とあの謎の男との死に物狂いの戦闘なんてまるで嘘だったみたいに思えてしまう。

 だが、この全身を襲う確かな疲労と虚脱感。そして、右手のひらの大きな裂傷から未だ止めどなく流れていく命の奔流が、全ては本当にあった出来事なのだと強く主張してくるのだ。

 右手を空に向けて持ち上げると、傷口から太陽光が通り抜けてキラキラと光って見えた。奇妙だが綺麗だと思った。そんな事を考えていると、シマヘビくんがシュルリと右腕を掛け上り、グルグルと止血代わりに手首を締め上げていく。


「おい」


 怒涛の展開を乗り越えた後に残るのは、状況を飲み込む消化時間か、はたまた飲み込み切れないからの空白か。それは俺自身にもよく分からない。

 あの櫂毒は贋物で、ニセモノだと見破ると姿が乱れ始め、最後にはバズこと爆世・マーダーの姿を取った。そして、彼が言う『主様』とは…?まだまだ謎は残るばかりだ。


 …少し疲れた。このまま今日は残りの授業もサボってし


「おい!聞いてんのかジャミラ!」

「わっ!?あいたっ!?」

「あだっ!」


 ずい、と不意に視界を埋め尽くす美少女フェイス。紛うことなきファフナちゃんだ。

 驚きと共に身を起こすと、ごちんと額がぶつかった。実に硬いおでこである。これはドラゴンヘッドバット。


「あたた…てんめぇ…」

「ご、ごめんファフナちゃん」


 おでこを抑えながら顰め面をする彼女。興奮しているのか、女口調は何処へやらの状態である。

 …しかし気まずい。距離を取ろうと考えて、少しずつ会話を減らし始めていた矢先のこの出来事。正直、どんな顔してどんな会話をすればいいのやら。

 だがファフナちゃんがいなければ、俺は屋上から紐なしバンジー真っ逆さまだった。彼女がいてくれて本当に助かった。でも、どうしてファフナちゃんは今、屋上にいるんだろうか。

 疑問と共に視線を戻すと、彼女の眉間のヒビは更に深くなっていた。…あ、お礼がまだだったな。


「た、助けてくれてありがとうファフナちゃ…うぐ!?」

「お前なぁ!!飛び降りだなんて何考えてんだ!」


 急に胸ぐらを掴まれて困惑した。いやそれ以上に彼女の吐いた今のセリフが問題だった。俺は思ってもいなかった言葉に対して、全力で首を横に張った。


「え!?いやいやいやいや!!!」


 とんでもない誤解だ。まさか彼女は俺が世を儚んで、鳥人間コンテストを開いたとでも思っているのだろうか。俺は彼女に落ち着く様に促しつつ、慌てて否定する。


「違う違う!そうじゃそうじゃ無ぁ

「オレは今朝から様子がおかしいと思ってたんだ!そしたら、そしたらこんな…!」


 …え!?こ、困ったぞこれは…!

 どうやら彼女は、俺がファフナちゃんを避け出した理由についても誤解しているらしい。誤解が誤解を生む負のスパイラル…!スパイラルくんも頑張ってます。


「ご、ごめん。ちょっと弁解を…

「…昨日は頼り無いところ見せたかもしんないけどよ!なんか悩んでる事があるなら相談しろよ!オレたち…」


 一拍の溜めがあった。そして真剣そのものな彼女の口から出た言葉は、


「オレたち友だちだろ!」

「…!」


 思わず息を呑んだ。友だち?誰と誰が。俺とファフナちゃんが?

 許されていいのか?確かに、俺は彼女と友だちになりたいと考えていた。


 理由は実に下らない。龍紋 ファフナは『じゃむうま』の主人公で、チート能力持ちでこれから先ドンドン大活躍して人気者になっていく。そんな彼女の恩恵を受けたかったから。彼女の第一の友人になれれば、俺もモテモテで人気者になれるから。


 だが結果はどうだ。本来なら第1話で退場する俺が出しゃばり、あまつさえ本来の彼女のストーリーに無い行動をした結果はどうなった?本来なら出会うはずの無い悪役との遭遇。そして、原作知識がどうこう等とひけらかした結果は?ファフナちゃんが命に関わる致命傷を負っただけじゃないか。

 

 思い出す度に胸の奥がキリキリと痛む。もう2度とあんな彼女は見たくなかった。唇を軽く噛むと、意を決して言葉にした。


「…と、友だちじゃない」


 これは彼女の為なのだ。俺なんかいなくたってストーリーは問題なく進行する。いやむしろいない方が順風満帆に進むんじゃないだろうか。


「…!お前、何言って」

「俺は、俺はファフナちゃんの友だちなんかじゃない」


 ヴロちゃんさんは俺が優しい男だと言っていた。そんなハズが無い。俺は何も考えずにその場凌ぎな甘さを見せて場を乱す。

 きっと原作の蛇腹 独葉巳よりも厄介なゲスなのだ。


「俺さ。ウソ吐いてたんだよ。ファフナちゃんをずっと騙してたワケ」


 訓練所で咄嗟に吐いた嘘。御三家の一つ、宍喰井家の分家で、その使いという話。

 そうだ。俺は彼女に嘘を吐いて彼女に近づいた。悪気もなくウソを吐いたのだ。


「俺さ。ファフナちゃんがこれから大変な目に遭う事ずっと前から知ってたんだ」


 ファフナちゃんは漫画の主人公。例えチート級の能力を持っていようと、彼女が苦戦する程の相手はこれからも多く現れる。

 俺はそんな機会を利用してアドバイスや助言に走り、あわよくば仲を深めようとしたゲスなんだ。


「だからさファフナちゃん。こんなクズな俺になんか構わない方がいいよ?」

「…このっ!!」


 自嘲気味に笑みを浮かべると、怒りの表情のファフナちゃんが手を振り上げた。このまま顔を叩かれて絶縁される。…うん。この程度で済むなら優しい罰だ。甘んじて受け入れよう。


「こんの分からず屋のバカちんがぁーーっっ!!ドラゴンビンタ!!!!」

「おげろぶべろばぁっーーーーー!!!!?????」


 結果として、俺は今日イチのダメージと共に錐揉み回転しながら宙を舞う羽目になった。

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